2025.01.19

CARS

究極のビスポーク体験! ロールス・ロイスが韓国・ソウルに、アジア太平洋地域の拠点となるプライベート・オフィスをオープン

PEACOCKという名前のファントムの室内。

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ロールス・ロイスが韓国・ソウルに、アジア太平洋地域の拠点となるプライベート・オフィスをオープンした。ここを訪れるクライアントは、世界に一台しかないクルマをどのようにつくっていくのだろうか?

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2023年に6000台超という過去最高の世界販売台数を記録したロールス・ロイス。ほぼすべてのクルマがクライアントの要望に応じてつくられるオーダーメイド、いわゆるビスポークであることを考えれば、これは驚くべき数字である。ロールス・ロイス・モーター・カーズの最高経営責任者、クリス・ブラウンリッジさんはこう語る。

2023年11月にロールス・ロイス・モーター・カーズの最高経営責任者に就任したクリス・ブラウンリッジさん。


「我が社の好調の背景には世界的なビスポーク需要の高まりがあります。とりわけ富裕層のみなさんには、よりプライベートな、自分だけのラグジュアリーを手に入れたいという思いがある。そういったみなさんのご要望にしっかりとお応えするため、我々は英国の本拠地・グッドウッドの工場を拡張するなど体制を整えてきました。ここ韓国にオープンしたプライベート・オフィス・ソウルは、アジア太平洋地域のお客様と、さらなる緊密な関係を築いていくための重要な拠点となります」

アットホームな雰囲気のプライベート・オフィス・ソウル。テーブルの向こうに、カラー・サンプルの一部が見える。


自分のため、もしくは家族や大切な人のための、世界に一台しかないクルマをつくりたい。そんなクライアントのために用意された空間は、オリンピック公園やロッテワールドなどの観光名所が点在する、ソウル南東部・松坡区のオフィスビル内に設けられた。グッドウッド以外で、こういったプライベート・オフィスがオープンするのは、ドバイ、上海、ニューヨークに続いて4番目となる。 



オフィスの壁にはグッドウッドにあるロールス・ロイス本社が象られたレリーフが飾られていた。

大きな窓の向こう側に、美しい自然の風景が広がるオフィスは、けっして豪奢なものではなく、むしろ落ち着いたアットホームな印象を与えるものだった。室内の装飾は、モダンであると同時に、韓国の手漉き紙・韓紙(ハンジ)を使用したシェードや、伝統的な韓国の家・ハノクを連想させる白樺の格子などがセンスよく取り入れられている。一方、壁面にはグッドウッドにあるロールス・ロイス本社が象られたレリーフが飾られており、その上には“FROM GOODWOOD TO SEOUL”の文字が。隣接した部屋には長テーブルが置かれ、一方の壁には韓国人アーティストによるアート作品が、その反対側には、歴代のスピリット・オブ・エクスタシー(ロールス・ロイスのボンネット上に輝く有名なアイコン)が展示されている。韓国の文化と、ロールス・ロイスの伝統が実に自然に融合しているのが印象的だった。

3つのスケッチ 

ではプライベート・オフィス・ソウルを訪れたクライアントは、どのようにして自分だけの一台をつくりあげていくのだろうか? 

「ご依頼いただく内容にもよりますが、クルマが完成するまで20~30回くらいの打ち合わせを行うこともあります。製作期間はまちまちですが、組み立て済みのシャシーに特注のボディを組み合わせたコーチビルド・モデルともなると4年かかった例もありますね」 

ビスポーク・クライアント・エクスペリエンス・マネージャーのジェフリー・チョイさんが説明する。 

ビスポーク・クライアント・エクスペリエンス・マネージャーのジェフリー・チョイさん(右)とリージョナル・ビスポーク・デザイナーのジェームス・ロバート・ベイズンさん。




ロールス・ロイスのカタログには4万4000色もの車体用カラーがあり、その組み合わせは自由自在。プライベート・オフィスには、クルマのインテリアに使用するウッドやレザーの見本も豊富に用意されている。ジェフリーさんが続ける。

「ここは完全予約制ですが、打ち合わせは直接こちらに来ていただくのでも、オンラインでも可。こちらからご希望の場所にお伺いすることもあります。私自身、仕事で何度も日本を訪れたことがありますよ」 

長テーブルが置かれた打ち合わせ用スペース。左側の壁に飾られているのが韓国人アーティストによるアート作品。

クルマの制作はグッドウッドのスタッフとも密に連絡を取りながら進められていくが、依頼の内容によっては他国のオフィスに協力を仰ぐこともあるという。

「こちらのスケッチは実際に依頼を受けて作ったものではありませんが、私が考えたいくつかのビスポークのアイデアです」 

こう話すのはソウルに常駐するリージョナル・ビスポーク・デザイナー、ジェームス・ロバート・ベイズンさん。本社にも勤務していた英国人だ。彼が描いたスケッチは3例あるが(上のスケッチを参照)、最初に紹介してくれたのはHAVEN(安息の地)と名付けられたファントム。自然に囲まれた韓国の静謐な風景をモチーフにしたもので、韓紙を模した桑の木のベニヤ板が室内の装飾に用いられていた。 

今年、韓国に赴任したばかりの、ジェームス・ロバート・ベイズンさんによるスケッチのうちのひとつ。


HAVEN(安息の地)と名付けられたファントムで、当日のプレゼンテーション時には、ハノクと呼ばれる伝統的な韓国の家のイメージも添えられていた。

次なるスケッチは、沈みゆくソウルの夕陽からインスパイアされて描いたカリナン。PASTEL SUNSETという名の通り、柔らかなパステルカラーを採用しながら、ジェームスさんがオフィスの窓越しに眺めていたソウルの日没を表現した。 

そして最後がPEACOCKという名前のファントム。グラデーションをつけながら、ホワイト系からブルー系へと変わるボディの美しさは、まさに孔雀の羽のごときだ。 

ロンドンを拠点に活躍するアーティスト、ヘレン・エイミー・マレーさんが描いた孔雀の作品からインスピレーションを受けて描かれたファントム。ホワイト系からブルー系へと変化していくボディ・カラーが、大きな羽を広げた孔雀の姿を連想させる。


今回は韓国をイメージしたスケッチがふたつ含まれていたが、これはあくまで参考例としてジェームスさんが用意したもの。ほかのプライベート・オフィスと同様、特定の国や文化のイメージに偏ることなく、クライアントからの要望には最大限、応えていくという。

「私たちがつくっているのはクルマではありません。マスターピースなのです」というのは、先のクリスさん。まさに世界に一台しかない“傑作”を共につくりあげていく過程こそが、クライアントにとっての最大のラグジュアリーなのかもしれない。

文=永野正雄(ENGINE編集部) 写真=ロールス・ロイス・モーター・カーズ

(ENGINE2025年2・3月号)

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