2025.01.01

CARS

清水草一の自動車10大ニュース 4位は「これで高速道路の渋滞解消!」かもしれない、あの施策がランクイン

2024年に自動車業界で起こった出来事の中から、清水草一氏が心に残ったものを10つ選び、ランキング形式でお伝えします。4位に選んだのは交通関連のニュース。ドライブ好きにはちょっと気になる話題だ。

高速道路関係から選出

ただのクルマ好き&渋滞研究家がお送りする、2024年の自動車関連10大ニュース。第4位は、高速道路関係から選出した。



第4位 高速道路のダイナミックプライシング、全国導入が決定

2024年6月、政府は、高速道路の料金を時間帯や区間で変動させる「ダイナミックプライシング」について、2025年度から順次、全国で導入することを決めた。国の経済財政運営の基本となる「骨太の方針」原案に、「ETC専用化を踏まえ、混雑に応じた柔軟な料金体系へ転換していく」と明記された。

あまり注目されていないが、個人的にはこれは大ニュース。私は20年以上前から、「時間帯別料金は渋滞緩和の最後の一手」と主張していただけに、ついに、という思いでいる。



巨額の費用要らず

これまでNEXCO各社は、渋滞緩和のために付加車線設置や拡幅などに力を注ぎ、かなりの効果を上げてきたが、道路施設の改善には、巨額の費用がかかる。

たとえば東京湾アクアライン。千葉県は「6車線への拡幅を要望していく」と表明しているが、そのためにはもう1本トンネルを掘らねばならず、1兆円はかかるだろう。それでいて、アクアラインだけを拡幅してもダメで、川崎浮島JCTの改良や、首都高湾岸線の拡幅まで手を付けないと、抜本的な解決策にはならない。

一方、時間帯別料金の導入は、ETCのプログラミング変更だけで実施でき、時間もかからない。コスパの差は、天文学的なレベルになる。首都圏や大阪圏など、交通集中渋滞が頻発する地域では、やらない手はない。



差額は1200円

混雑する時間帯の料金を高くし、閑散時に安くするダイナミックプライシングは、USJやディズニーリゾートなどのテーマパークでも導入済みで、おおむね理解が得られている。高速道路では、2023年7月から東京湾アクアラインで社会実験が行われており、当初はかなりの効果が確認されたが、導入から日が経つにつれて薄れ、現在は元の木阿弥に近い。

アクアラインは、通常800円(普通車)の料金を、土日休日に限って、時間帯により600円から1200円に変動させている。最大で2倍の料金差だが、絶対額にすると600円しか違わず、差が小さすぎたようだ。たまのレジャーに出かけた利用者にすれば、帰宅の時間帯をずらす動機としてはやや弱かった。

そこで2025年4月からは、最安400円~最高1600円に変更されることが決まっている。絶対額で1200円の差があれば、かなりの効果が出るだろう。全国導入の際は、アクアラインの社会実験の経験を、フルに生かしてもらいたい。



最後の一手

高速道路のダイナミックプライシングの導入は、経済的にはまったく正しい。混雑する時間帯の料金は上がるが、その分渋滞が減れば、損得感覚はトントンに近くなる。空いている時間帯に走れば、料金が安いのでトクになる。いずれにせよ損はない。

例えば中央道のように、週末の渋滞が激しく、かつ道路施設側の改良が難しい路線では、一刻も早いダイナミックプライシングの導入が望まれる。

日本の人口は減少に転じたが、首都圏は別。渋滞も首都圏への一極集中が進んでいる。しかし、首都圏で新規に高速道路建設を計画しても、実現まで30年はかかる。

ダイナミックプライシングがどの程度の効果を発揮するかは、曜日や路線によって異なるが、最後の一手を積極的に使うしかないだろう。



文=清水草一 写真=茂呂幸正、清水草一

(ENGINE WEBオリジナル)

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