2025.02.20

CARS

なぜ従来型のオーナーは悩み、悔しがるのか? マイナーチェンジで新しくなった三菱アウトランダーを公道で試乗した

2024年10月にマイナーチェンジが行われた三菱のDセグメントSUV、アウトランダーPHEV。先日クローズド・コースで行われた試乗会に続き、公道で乗る機会がやってきた。見た目の変化は少ないが、PHEVのキモであるバッテリーをはじめ、中身が大きく進化を遂げた新型に、モータージャーナリストの高平高輝氏が試乗した。

不満をことごとく改善

現行型アウトランダーPHEVのオーナーである仕事仲間のF君によれば、この改良新型アウトランダーは、彼のようなユーザーが抱いていた不満がことごとく、まさに痒い所に手が届くように改善されているのだという。したがって彼は大変悔しがりつつも悩んでいる。しかもフルチェンジから3年というタイミングは、まるで車検で買い替えろといわんばかりではないか、とのことである。



空力性能も向上

外観はほとんど変わっていない。フロント・グリルの上半分がフラット・パネルに置き換えられたことと、迫力ある新デザインのホイールを除けば、新旧の違いは一見しただけでは分からない。だが実はバンパーやフェンダーなどは作り直され、パネル間のチリ合わせもより緻密になっているという。

そう言われると何だかキリッと引き締まって見える。さらにフロント開口部の奥には自動開閉グリル・シャッターが備わり、またフロア下のアンダー・カバーやリア・バンパー形状なども手直しされて空力性能を向上させているという。



ヤマハと共同開発したオーディオを初搭載

ご存知のように、アウトランダーは従来型から日本向けにはガソリン車は用意されずPHEVモデルのみ、前後2基のモーターによる電動走行優先の4WDである。試乗車の「Pエグゼクティブ・パッケージ」は新たに追加された最上級グレードで、ヤマハと共同開発したオーディオ・システム「ダイナミック・サウンド・ヤマハ・アルティメット」や専用のセミアニリン・レザーシートなどを標準装備する。

7人乗り仕様は668万5800円と、従来の最上級グレードPの7人乗りの532万700円に比べて一気に高くなった。三菱のフラッグシップとはいえ(また補助金が当てにできるとはいえ)かなりのアップだが、件のF君はすぐにでもディーラーに駆け込みそうな気配である。



駆動用バッテリーの容量が拡大

何となればまずPHEVシステムの要である駆動用バッテリーの容量が拡大(20.0kWhから22.7kWhへ約10%増し)され、EV走行距離(WLTCモード)は83kmから102kmに伸びて、ハイブリッド燃費も16.2km/ℓから17.2km/ℓへ向上している。

また従来型よりも滑らかで自然な動き出しが印象的だった。リチウムイオン電池は内部抵抗を減らし、冷却性能を向上させたことでトータルのシステム出力が約20%アップ、おかげでエンジン始動頻度が下がり、0-100km/h加速も従来型より2秒短縮できたという(タイムは非公表)。



エンジンとモーターのスペックは変更なし

同時にスロットルのセッティングをピーキーに感じないように見直したという(新型のノーマル・モードは従来型のエコ・モードに相当するらしい)。もちろんセンターコンソールのダイヤルで7種ものドライブ・モードを選べるから、パワー・モードにすれば驚くほどの鋭いレスポンスを見せる。

ちなみに2.4ℓ4気筒エンジン(98kW/195Nm)も、フロント85kW/255Nm、リア100kW/195Nmのモーターのスペックにも変更はない。システム出力が向上しているのは最高出力をより長く維持できるようになったということらしい。



乗り心地が洗練

F君の一番の羨望ポイントは乗り心地が洗練されたことだ。可変ダンパーやエア・スプリングを持たないコンベンショナルなサスペンションのSUVとしては従来型も悪くはなかったが、それでもピッチングがやや気になったことを覚えている。

背が高く重いSUVタイプのPHEV(試乗車は2140kg)の弱点とも言えるが、新型ではほぼ気にならなかった。むしろ重量のあるSUVを一般的な脚まわりでこれだけフラットに、まろやかな当たりで走らせるのは他にほとんど例がない。ダンパーなどの改良だけでなく、今回は専用開発のブリヂストン・アレンザ(従来型はエコピアM+Sだった)を採用したことも滑らかで角が取れた乗り心地に貢献しているはずだという。



フラッグシップらしい豪華盛り

ただし、山道のコーナリングとなると路面によってはやや煽られる場面もあった。オフロード走行も考慮に入れた全高の高いSUVに(最低地上高は200mmある)、そこまで求めるのは欲張りすぎとは思いながらも、せっかくのS-AWCを生かすためにも電制可変ダンパーがあればなあ、と感じたことも事実である。

9インチから12.3インチに大きくなったセンター・ディスプレイ(ナビはスマホ連携)が目につくインテリアは以前に増して豪勢な雰囲気だ。キルティング加工のレザーシートは前後席のヒーターに加えて前席にはベンチレーションも備わり(Pグレード以上)、フレームレスのデジタル・ルームミラー(G以上)やアルミ・ペダル(P以上)など、まさにフラッグシップらしい“豪華盛り”である。あいつ、きっともう申し込んだのではないだろうか。



文=高平高輝 写真=茂呂幸正

(ENGINE WEBオリジナル)

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