2025.02.26

CARS

ヨーロッパ屈指のヒストリックカーの祭典「レトロモビル」を大矢アキオがリポート 今年は日本車がいっぱい!

トヨタが展示した1965年スポーツ800。主に沖縄駐留米兵向けとして300台が製造された左ハンドル仕様である。ローマンズ・トヨタ・ワールド(オランダ)蔵。

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欧州屈指のヒストリックカーの祭典「レトロモビル」が2月5日から5日間、フランス・パリで催された。今年は日本ブランドの出展が目立っていたが、その狙いは?

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今年のレトロモビルにはトヨタに加え、2011年以来の参加となるマツダ、初出展となる三菱自動車、さらに二輪でホンダ、カワサキと、日本ブランドの参加が目立っていた。その背景について、あるイベント関係者はこう説明する。

マツダはドイツの博物館が所蔵する歴代MX-5を展示した。左奥は初代ファンの間で人気が高い1995年型の特別仕様イエロー・サンレーサー。右は2代目を基にした希少なクーペ。2003年型。

「メーカーの宣伝予算が限られている中、彼らは熱心なクルマ愛好家が集う催しに注目している。新型車を売り込む目的で、イベントの趣旨にあわせて古いクルマを展示するのです」

たとえばトヨタは今回、初代プリウスと初代RAV4のEVを紹介。企業として、環境負荷軽減に取り組む先進性をアピールした。また三菱自動車は新型アウトランダーPHEVのプロモーションのため、初代および2001年のダカール・ラリーで優勝したパジェロ、そして2世代のランサー・エボリューションを展示した。

一方、マツダはMX-5(ロードスター)の欧州導入35周年を祝い、5台の歴代特別仕様車やコンセプト・カーを紹介。「コンパクトで運転が楽しく、かつ信頼性が高いモデルとして、この国でMX-5は愛されてきました。中古市場での人気も、それを証明しています」とマツダ・フランスのジュリー・ラズエル氏は語る。

トヨタは先の2台の傍らで1965年のスポーツ800も紹介。超軽量設計と高い空力性能で小さなエンジンのパワーを最大限に活かす発想こそが「サステイナビリティの源流」とのスタッフの解説に、ビジターは熱心に耳を傾けていた。

三菱のブースにも幅広い年齢層が訪れていた。同社フランス法人のダヴィッド・デュモン氏は、「ラリーに憧れた世代にとってパジェロの記憶は鮮烈です。一方のランサーはゲームソフトで高い知名度を獲得しました」と説明する。

さらに会場で出会った年配のMX-5オーナーは「このクルマは英国製ライトウェイト・スポーツを正しく再解釈している」と、あたかも美術における新古典主義のごとく評価。ある若者は筆者に、自身の日本旅行談を興奮気味に語ったあと、「免許を取ったらMX-5を買うと決めているよ」と言って去って行った。

思えば筆者が欧州に住み始めた約30年前、自動車イベントでカメラを向けていると年配者から「今日は何をスパイしに来たのだ?」と再三からかわれたものだ。当時でもまだ、日本車≒欧州車のコピーと捉える人が少なくなかったのである。その時代から比べると何たる変容ぶり。日本車を前に熱く語る現地の人々に接し、感慨深い思いを抱いた。

文・写真=大矢アキオ ロレンツォ Akio Lorenzo OYA

(ENGINE2025年4月号)

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