絶好のワインディング・ロードまでわずか数分。ゆっくりと時間が流れる箱根の街かどにあるガレージハウス「HCヴィレッジ」に、休日を過ごす愛犬家の家族の姿があった。
エンジン音が好き
ガレージの前に並ぶ錚々たるクルマたちを前に、まず目に留まったのはZ32フェアレディ以外、すべてナンバープレートが“10”で統一されていたことだった。

「子供のころ、初めて地元広島の市民球場に行った時にホームラン打ったのが、元カープの金本選手で背番号が10番だったんです。当時僕もサッカーで10番を付けていて、バスケをやった時も10番だった。ラッキーナンバーみたいな感じですね」
と話すのは、このガレージの主であるK.Iさんだ。
「本当にクルマが好きだと思ったのは中2の時に友達の家でやったグランツーリスモでしたね。エンジン音が好きで、ヘッドホンでエンジン音を聞きながら寝たくらい(笑)」
当時好きだったのはR34型スカイラインGT-R。そのうちにフェラーリを筆頭とする大排気量のスーパーカーが好きになっていったK.Iさん。しかしながら、海外留学したこともあり、自分のクルマを手に入れたのは26歳になってからだという。
「見栄で良いクルマ乗りたい……って思いから買ったのがアストンマーティンDB11ヴォランテでした。エンジン音という意味では物足りないけど、すでに結婚もしていたし、子供も視野に入っていたので後部座席は欲しいと思って」

当初はDB11の1台体制だったというが、程なくして今もガレージに収まるマクラーレンLT600を皮切りに、フェラーリF430スクーデリア、512TRと愛車を増やしていった。
「念願のフェラーリに行って、512TRでネオクラシックに目覚めました。今も一番好きなのは90年代から00年代のクルマですね」
そう話すK.Iさんが、ますますクルマ趣味にのめり込んでいくきっかけの1つになったのが、「HCヴィレッジ」との出会いだった。
「僕が入居第1号なんです。ガレージが欲しいと周りに話してたら、年齢が近いクルマ好きとして紹介されたのが代表の佐野順平さん。佐野さんと知り合えて世界が広がりました。サーキットも走るようになり、ガレージも持つなど、本当にブーストが掛かった感じです」
それとともにK.Iさんが興味を持ったのが国産車の世界。いきなりトヨタ・ガズー・レーシングのコンプリートカーであるGRMN86を手に入れると、遂には地元広島のコレクターが持っていたJUNオートの通称ボンネビルZを2台まとめて譲り受けたのだ。

「ボンネビルZってソルトレイクで速度記録を出した赤いのと、2by2ベースの黒の2台があるんです。最初は黒という話だったのですが、2台揃ってじゃなきゃ嫌だって言って譲ってもらいました。というのも僕自身にコレクター癖があるからなんです。なんでも集めちゃうし、箱も捨てられない(笑)」
Z32だけナンバープレートが“10”じゃないのは、新車時からの2桁ナンバーを残しておきたいというK.Iさんの拘りだ。ちなみに赤いボンネビルZはオリジナルの姿に戻すべくJUNオートに入庫しており、赤、黒2台を並べる日を心待ちにしているという。