ポルシェが2024年の業績と今後の展開を公表した。
中国市場の低迷と電動化の遅れが影響2024年は、中国市場の低迷に加え、世界的な電動化の遅れが影響し、販売台数と売上高、営業利益は軒並み前年比マイナス。EV戦略も、見直しを余儀なくされそうだ。
営業利益率は2025年度もさらに減少販売台数は3.0%、売上高は1.1%。営業利益の22.6%ダウンした。もっとも、30%以上も下がっているところが多い欧州の他メーカーと比べると減少幅は小さい。とはいえ、今後もマイナス要因は続くことが予想され、2024年度に18.0%から14.1%へ落ち込んだ営業利益率は2025年度ではさらに10〜12%へと減少する見込みだ。
それでも財務担当取締役のヨッヘン・ブレックナーは、中期的に15〜17%、長期的には20%以上を目標にすると述べている。この目標を達成するためにも必要なのが、製品戦略の見通しだ。
2020年代末に新規内燃機関モデルを導入「カイエン」と並んで商売の柱である「マカン」は2024年に完全電動化を図った新型に刷新されたが、最近のEV販売の停滞を受け、内燃機関モデルの再登場のウワサが囁かれていた。今回の業績発表のなかで、マカンは電気自動車=バッテリーEV(BEV)モデルのみであることが明言された。
その一方で、内燃エンジンとハイブリッドパワートレインを搭載した独立したモデルラインのSUVを検討していることが明らかになった。発売時期は2020年代末の予定。ボディ・サイズやセグメントについては記されていないものの、現在のラインアップを考えると、マカンの内燃機関モデルに代わるモデルと考えるのが妥当だ。
カイエンの次期モデルはBEV同じく、BEVモデルの計画が進行しているのがカイエンだ。現行型は、内燃機関とプラグイン・ハイブリッド(PHEV)をラインナップし、2023年に大規模アップグレードを実施されている。2024年には過去最高の10万2889台を販売した。
次期型は全面新開発のBEVになり、2025年内の発表が予想されている。ただし、2030年代までは内燃機関仕様も併売の予定。そのモデルはおそらく、現行型に改良を重ねたものとなりそうだ。
ボクスター、ケイマンも続いてBEVにもうひとつ、以前から完全電動化を表明している「718ボクスター」と「ケイマン」は、カイエンのBEVに続いて登場するとのこと。こちらも2025年内の披露が予想されているが、EV普及の世界的な遅れを受けて内燃機関モデルの併売など、方向性の修正が検討される場合は、時期が遅れる可能性もある。
911の追加モデルは「ターボ」か?マイナーチェンジで992.2型と呼ばれる最新型になったポルシェの象徴たる「911」は、通常バリエーションの拡充と限定車の設定が図られる。注目は「ターボ」系で、新型の「カレラGTS」のようにハイブリッド化する説が有力だ。GTSに採用されているT-ハイブリッドと呼ばれるシステムは、PHEVの「e-ハイブリッド」に対し、パフォーマンス志向のシステムと位置付けられ、排出ガス駆動のジェネレーターにもなる電動ターボと、ギアボックスに組み込まれたアシスト・モーターを使用する。
GTSはシングル・ターボだが、新型ターボ系はツインターボの採用が確実視される。既存の992型では「ターボ」の出力が580ps、「ターボS」が650psだが、992.2ではターボでも600ps以上、ターボSは700ps級となることが期待される。
911には限定車も登場予定限定車は、4部構成となるヘリテージ・リミテッド・エディションの第3弾となるモデル。「356」や「901タルガ」をモチーフにした第1弾と、オリジナルの911やナナサン・カレラと呼ばれるカレラRS2.7をモチーフにした第2弾に続き、今回は1970年代のスタイルになるという。
また、K1という開発コードで呼ばれる3列7シーターの大型SUVが開発中と言われているが、それについては言及されなかった。ただし、BEV専用モデルとなる見通しだけに、EV市場の低迷により、2027年とみられていたデビューのタイミングが再考された可能性もある。
ともあれ、今後数年間で品揃えを拡大するとしているポルシェ。EVシフトの鈍化を逆手にとって、エンスー好みの内燃機関モデルが登場することに期待したいところだ。

文=関 耕一郎
(ENGINE WEBオリジナル)