ポルシェにも通じる鼓動や日本車では味わえない手応え・足応えなどを感じるVWゴルフ・ヴァリアント。RとGTIを除いた普通のゴルフで最も高額なモデルTDI R-Line(ディーゼルモデルのRライン)の出来栄えをモータージャーナリスト森口将之がリポートする。
荷物をたくさん積めて走行性能にも優れる売れてるワゴン
フォルクスワーゲン(VW)ゴルフというとハッチバックのイメージが強いが、我が国ではワゴンのヴァリアントもゴルフの販売台数の3割を占めているという。国内外を問わずワゴン退潮の流れがあるなかで、手頃なサイズで荷物がたくさん積め、走行性能で有利な低いボディを求めるユーザーは、まだ少なからずいるということなのだろう。

ゴルフ8.5と呼ばれる新型は、ハッチバック同様1リッター直列3気筒ガソリン・ターボがなくなって、1.5リッター4気筒ターボに統一された。他に2リッターディーゼル・ターボ、「R」専用の2リッターガソリン・ターボがある。駆動方式はRが4WDとなる以外はすべて前輪駆動だ。試乗したのはディーゼルのスポーティ・グレードである、TDI Rラインだった。
ハッチバックより落ち着いている
エクステリアは以前ハッチバックの試乗記でも紹介した、VWエンブレムまで光るフロント・マスクに加えて、Rラインでは独自のバンパーのオープニングがさらに広がり、かなり精悍になった。リアはコンビライトの光り方が変わったことが目につく。

エンジンはゴルフ8からのキャリーオーバーで、150psの最高出力、360Nmの最大トルクは変わらないものの、19.0km/リッターだったWLTCモード燃費は20.1km/リッターにアップした。
ゴルフのディーゼルは、ディーゼルゲート事件で販売がしばらくストップしたあと、2019年に復活したが、そのときは騒々しいうえにトルクが細く、ガッカリした覚えがある。しかし、ゴルフ8でSCR触媒コンバーターを直列に2基配置したツインドージング・システムを採用し、NOxの排出量を抑制しつつトルクアップを図った。おかげで低回転から力強くなり、回転も滑らかになった。

ただ2000rpmあたりを多用するスポーツ・モードは音が気になるし、エコやコンフォート・モードでも力に不満はないので、試乗では気がつくとこの2つのモードを多用していた。
ゴルフらしいと思ったのは、おとなしく流しているようなシーンでも、ステアリングやペダルを通してエンジンの鼓動が伝わってくること。ポルシェなどにも通じる部分ではあるが、機械を動かしていることを実感する手応え足応えは、日本車ではなかなか味わえないものだ。
サスペンションは、Rラインということもあって硬めではあるが、細かい凹凸はうまく和らげてくれる。とはいえ大きめの段差や継ぎ目はそれなりにショックとして伝えるので、この面を重視する人は違うグレードを選んだほうが良いだろう。

ハンドリングは、同じRラインのガソリン車より100kg重いこともあって、身のこなしはフロントの重さを意識する。一方でホイールベースがハッチバックより長いので、コーナーに入ってからの挙動は落ち着いていた。
ドイツ車らしい走りが好みならオススメの1台
同じCセグメントのディーゼルのワゴンというと、プジョー308SWが思い浮かぶ。あちらは排気量が1.5リッターということもあり、価格は安く、燃費は良いうえに、個人的には乗り味も好みなので、あちらを選ぶと思うけれど、ドイツ車らしい走りが好みという人には、ゴルフ・ヴァリアントのRラインは最適なチョイスと言えるかもしれない。
文=森口将之 写真=篠原晃一
(ENGINE2025年6月号)