BMWに商標を譲渡したアルピナ創業家のボーフェンジーペンが、ふたたび高級GTの生産に乗り出した。
あのザガートと手を組んだ!
イタリアのリゾート地であるコモ湖畔で開催されるヴィラ・デステ・コンクール・デレガンスで披露されたのは、第一弾である。その名は「ボーフェンジーペン・ザガート」。独ブッフローエのエンジニアリングと、ミラノのデザインが、夢の共演とあいなった。

ベース車はBMWのM4カブリオレで、ボンネット先端には新たなエンブレムが輝く。

車体サイズは全長×全幅×全高が4943×1913×1394mmで、M4(4805×1885×1400mm)より長くてワイドだ。しかし、ボディ・ワークにカーボン素材を用い、ルーフが固定式とされたため、車両重量は1875kgと、ベース車より軽く仕上がった。

ザガートとしてはだいぶスマートなフェイスは、キドニー・グリルの面影を残したCNC加工のステンレス・グリルと、低めに配置されたヘッドライトの組み合わせとなる。M4のライトを流用しているようだが、周辺の造形に切り取られた外観は、BMWよりマイルドな印象だ。
その下には、ハイ・パフォーマンスを予感させる両サイドの大開口エア・インテーク、そしてアルピナを彷彿させる立体的なブランド・ロゴが据えられる。

ルーフは、ザガートの特徴的造形であるダブル・バブルで、その隆起がリア・ウインドウにまで続く。いっぽう、ピラーレスのサイド・ウインドウは、ホフマイスターキンクを誇張したようなデザインで、クリーンな形状のCピラーへと続く。
前後とも大きく膨らんだフェンダーも、ボディ・ラインとシームレスに連続したもの。前輪後方のアウトレットには、ザガートのロゴが光るウイングレット風のパーツが取り付けられる。ホイールは20インチで、マルチ・スポークの1本1本に、軽量化のためのくぼみが設けられている。

テールライトは、立体的な発光部を見るにM4のそれを流用しているようだが、周辺のデザインは大幅に改修。後方へ大きく突き出したトランク・リッドのダック・テール形状はフェンダー後端と連なり、そのエッジがテールライトの外郭からバンパーの横まで縦フィンのように続く。ナンバー・プレートが低い位置に設置され、左右ライトの間はボーフェンジーペンのロゴが陣取った。
U字型スリットが刻まれたボンネットの下には、最高出力/最大トルクが611ps/700Nmを誇る3リットル直6を搭載。駆動方式には言及されていないが、車両重量からは4WDであることが推測できる。0-100km/h加速は3.3秒、最高速度300km/h以上というパフォーマンスは、M4クーペをも凌ぐ。

インテリアは、レザーで覆われたダッシュボードや、アルミ削り出しのシフト・パドル、手縫いのスティッチが入るラヴァリナ・レザー巻きステアリング・ホイールなど、そのクオリティは健在。センター・パッドやルーム・ミラー、ヘッドレストなど各部に記されたエンブレムを除けば、まさしくアルピナの世界観を再現している。
ラヴァリナ・レザーの標準設定色は16色だが、自由に色を指定できるビスポークプログラムも用意。45色のアルカンターラを組み合わせることも可能だ。


スパルタンなスポーツカーではなく、ラグジュアリーな高性能GTである点もアルピナ譲り。実用に耐える2座の後席や、十分な広さの荷室も確保している。ヘッドライナーや荷室内張りは贅沢にアルカンターラを用い、荷室フロアにはエンブレムが大胆にあしらわれている。

ブッフローエの新時代の幕開けとなるボーフェンジーペン・ザガートは、2026年第2四半期末に、最初のデリバリーを予定。生産台数と価格については、今年第4四半期に発表されるという。
文=関 耕一郎
(ENGINE Webオリジナル)