春の時計見本市や新製品発表も一段落。新作が続々と店頭に並び始めた。ダイバーシティー=多様性の時代。より柔軟・自由な”新基準=ニュースタンダード”によって、今の自分にふさわしい一本を選びたい。8名のENGINE時計委員の目利きを参考に、この夏、一生つきあえる腕時計をセレクト!
タグ・ホイヤー カレラ デイデイト
2023年のクロノグラフで新しいスタイリングと改良型自動巻きムーブメントによってリニューアルを図ったのに続き、今年の新作で注力したのが「デイデイト」。
従来のキャリバー5のパワーリザーブが約80時間にアップした自社製キャリバーTH31-02に置き換え、クロノグラフで取り入れたドーム型風防のグラスボックスデザインから着想した立体的な要素によってダイアル構造も一新。
さらに、ブレスレットは、新しいクイックチェンジリンクシステムによって工具不要でサイズ調整が簡単にできる。ダイアルとブレスレットにアクセントを添えるローズゴールドカラーも新鮮だ。
自動巻き。ステンレススティール、ケース直径41mm、100m防水。63万8000円。
名作のニュースタンダード 柴田 充タグ・ホイヤーのカレラといえば、思い起こすのはかつてホイヤーの一時代を築いたジャック・ホイヤー氏だ。数々の名作を手がけ、多くの逸話を残した。取材で会うたび、記憶力と聡明さ、さらに現代のスマートウォッチを予見するような先進的な創作意欲に驚かされた。
その代表作であるカレラの新作は、デイデイトを備えた3針仕様。なぜクロノグラフではないのかと訝るかもしれない。だが風格漂うスタイルに、AMTとの共同開発による自社キャリバーは約80時間の駆動時間を秘める。
レースの本質を限界への飽くなき挑戦とするならば、これも名作のニュースタンダードだ。もし本人がいま陣頭指揮を取ったらどんな時計が生まれるか。考えるだけで楽しくなる。
このブレスレット、画期的! 篠田哲生今年はF1の公式計時にタグ・ホイヤーが復帰したことが、大きな話題となった。アラフィフの僕にとっては“F1=アイルトン・セナ=タグ・ホイヤー”の図式があるだけに、この復帰は嬉しいこと。
ウォッチズ アンド ワンダーズ ジュネーブの会場には、マクラーレン・ホンダとレッドブル・ホンダのチャンピオンマシンも飾られ、日本人としてなんとも誇らしかった。
時計はムーブメントをロングパワーリザーブ化する正常進化なのだが、強い印象を残したのはブレスレット。道具なしでリンクを取り外しできるシステムはまさに目からウロコの大発見。
老眼でもOKな簡単操作という点で新たな基準になるのでは。時計そのもの以外のニュースでは今年一番の衝撃だった。
問い合わせ=LVMHウォッチ・ジュエリ121 ー ジャパン タグ・ホイヤー Tel.03-5635-7030
写真=岡村昌宏
(ENGINE2025年8月号)