革新的な操舵技術「ステア・バイ・ワイヤ」を搭載したレクサスRZ550e Fスポーツが登場。走りの質も一新された。モータージャーナリストの渡辺敏史が試乗した。
変わったのは中身
レクサスとしては初めてのBEV専用銘柄となったRZ。発売から2年が経過した今年、初めてのビッグマイナーチェンジを迎えることになった。といっても、外観的なところでの変更点は無に等しく、手数のほぼ全ては中身に費やされた。

まず、駆動バッテリーはセルの改良に伴う車台の幅方向のリデザインにより搭載容量を76.96kWhに増大。駆動用モーターを擁するeアクスルユニットも同じブルーネクサス製ながらインバータの効率向上に伴う高出力・省電力化を果たした最新世代へとスイッチし、並行して制御ソフトウェアの最適化を施すことで、仕向地ごとの差異はあれど、航続可能距離は概ね20%の向上をみたという。

加えて150kWに対応する受電能力の向上や充電タイミングに合わせてバッテリー温度を最適化するプレコンディショニング機能の採用などで、総合的な運用効率は大きく向上した。この性能向上に伴い、グレード名は従来の前輪駆動版が300eから350eに、Direct 4=四駆版が450eから500eへと「格上げ」されている。
ステアリングの出来栄えは?
そこに加わったのが今回の改変の目玉ともいえる550e Fスポーツだ。7年越しの開発期間を経て採用されたステア・バイ・ワイヤ=SBWはコラムからラックへの中間軸を廃した物理的な接続のない完全な信号制御で、標準系統とは別に3つの系統を備えて失陥を徹底的に封じている。象徴的なヨーク型のステアリングは左右各200度、ロックtoロックで約1.1回転と、通常の1/3ほどのトラベルで前輪左右が最大舵角に達する。これでも熟考に熟考を重ねて、開発時よりは若干大きく動かす方向へと移行したという。

試乗はこの550e Fスポーツを中心に行ったが、さすが調律に長きの時間を費やしたこともあってか想像以上に馴染みは早く、また標準的なステアリングで操ることとの位相差もすぐにアジャストできるほど違和感なく仕上がっていた。大きな課題となるステアリングインフォメーションの取捨選択もうまく作り込めていて、路面から伝わるノイズは適切に遮断しながら必要とされるインフォメーションはモーターの反力などを微細に合わせながらきちんと掌に伝えてくる。トヨタとて、ハンドルを回す回数が少ないというだけでここまでの投資をするはずがない。先々はキャビン内でステアリングを格納して目的地まで走り続ける自動運転の未来も示唆しているわけだ。
結果的に550e Fスポーツは全てのレクサス車両の中で、彼らのスローガンである「すっきりと奥深い走り」を最も濃く実現していると思えた。とりも直さずそれは、BEVの深化と連動して奏効しているわけだ。カタチ以外の全てが新しい、そのRZは今年度、つまり来春までには日本でも展開される予定となっている。
文=渡辺敏史 写真=レクサスインターナショナル
(ENGINE2025年9・10月号)