GMが、パサデナのアドバンスト・デザイン・スタジオの手掛けるデザイン・コンセプト、その名も「カリフォルニア・コルベット」を公開した。このコルベット・コンセプトは3台が製作される予定で、今回は、2025年春に英国スタジオが発表したモデルに続く第2弾となる。
コルベットらしさとは何か?
車体サイズは全長×全幅×全高が4669×2184×1051mmと、英国スタジオの作品とほぼ同寸。現行のC8型と同等の全長で、よりロー&ワイドに仕立て、ホイールベースはC8より40mmほど長い2767mmだ。

キャブフォワードなフォルムは、ミドシップ化されたC8に近いものを感じるが、弓なりに盛り上がった前後フェンダーと絞り込まれたキャビンは、かつてのC2やC3が見せたコークボトル・ラインを彷彿させる。シルバーと赤のデュオ・トーン・カラーはSoCalスタイル、すなわち南カリフォルニア的なカスタムのテイストを感じさせる。

前21インチ/後22インチの大径ホイールは、限りなく四隅に近く配置され、オーバーハングはきわめて短い。

そのフロント・エンドは、ボディ・ラインを損なわない薄型のヘッドライトと、空力デバイスとして機能するであろう全幅いっぱいの開口部を備え、ボンネット上にはエア・アウトレットが穿たれる。欧州のハイパー・カーもかくやという鋭い顔つきだが、尖ったノーズには伝統のクロスフラッグが輝き、コルベットの血統を主張する。

フロント・フェンダー内側の切り欠きや、サイド・ボディ下部からリア・サスペンション付近を経てテール・エンドへ至るトンネル構造は、エア・フローを追求した空力設計がうかがえる。

車体上半分が白だった英国スタジオの作品は、ボディ上面に空力付加物をほぼ備えなかったが、この南カリフォルニア産コンセプト・カーは、スポイラーとエア・ブレーキとして機能するアクティブ・エアロが搭載される。

リア・エンドは、アクティブ・スポイラーと巨大なディフューザーが大部分を占有し、テールライトはヘッドライトと同様に細長く、ボディに埋め込まれている。コルベットのアイデンティティとも言える、1961年型以来の4灯スタイルにこだわらないスタイリングだが、もはや中央の車名ロゴ以外に、コルベットであることを教える要素はない。
カーボン・タブに包まれた室内へは、前ヒンジのキャノピーを開いて乗り込むが、このキャノピーは脱着可能で、レーシング・カーのようなオープン・コックピットにも変身する。

絞り込まれたキャビンは、ボディ・サイズから想像するよりタイトな空間だが、これはクラシックなコルベットのDNAだというのがGMの見解。いっぽうで、ドライバーを包み込む内装トリムや、助手席と仕切るセンター・コンソールの形状は、C8の面影が色濃い。

インテリアは、スイッチなどを極限まで減らしたミニマルな設え。ドライバーの前には上下幅の薄いメーター・ディスプレイと、センターにインフォメーション画面を埋め込んだ未来的なステアリング・ホイールが据え付けられるのみだ。情報表示は、ARヘッドアップ・ディスプレイで補完される。
ここまで2作の未来型コルベットはBEV想定だが、前作ではとくに説明のなかったメカニズムについて、今回は角形バッテリーパックをT字型に配置すると述べられた。これにより、床下へ板状に敷きつめる場合よりシャシーまわりのエア・フローが適正化できるとともに、着座位置を低くすることも可能になる。ちなみに、英国発信の白い方のコルベット・コンセプトは、座面高を127mmへ落とし込んだ。

1万4000平米近い広大な敷地に、3つの建屋と約130人のスタッフを擁するLAのスタジオは、歴代モデルへのオマージュをふんだんに盛り込んだ英国スタジオとは異なるアプローチで、コルベットの未来像を描いてみせた。これが市販車に直結するものではないことは明言されており、デザインよりも、数多くの実験的な試作車やコンセプト・カーに車名を用いられてきたアメリカン・スポーツの精神を表現したものと言えるだろう。

これで、2025年内に披露されるというコルベット・コンセプトはあと1台となった。おそらくはデトロイトのスタジオが手掛けるその作品が、より次期コルベットに近いものとなるのか、はたまたさらに未来を見据えたものになるのか。興味は尽きない。
文=関 耕一郎
(ENGINE Webオリジナル)