見た目こそ違うものの、実はプラットフォームは共通だったというクルマはいくつもある。今回は、さまざまなメーカーが採用している共通プラットフォーム戦略の中でも、フラットライドかつゼロリフトを達成した「FMパッケージ」について振り返ってみよう。
相反する性能を両立させた「FMパッケージ」とは？
2001年6月に発売されたV35スカイラインは、車両レイアウトによる性能革新と部品単位の技術改良からなるV6エンジン専用フロントミッドシッププラットフォーム「FMパッケージ」を採用したモデルとして登場した。
この「FMパッケージ」は、相反すると考えられていた要素を高い次元で両立しているパッケージであることが特徴だ。
具体的には、「スポーティな走りと高級サルーンの乗り心地」「ロングホイールベースと優れた取り回し性能」「空力のよいスタイルと広い室内空間」といった相反する性能を両立している。
また、コーナリングや路面の変化による車体の挙動変化が少ない「フラットライド」、高速走行時にも空気抵抗による車両の揚力（リフト）をなくす「ゼロリフト」も達成した。
日産は、この「ゼロリフト」を実現するために、レーシングカーの空力解析に用いられるムービングベルト風洞を市販車の開発に初採用した。
さらに、燃料タンク、マフラーなどの床下構成部品を空力特性に配慮してレイアウトし、ホイールハウスの気流を吸い出す構造とすることで、車両下面の空気流を最適にコントロール。加えて、車両上面で乱流が発生しやすい部分の傾斜や形状を最適化することでCd値0.27（V35スカイライン）を達成している。
ゼロリフトと低いCd値は、優れた高速安定性を実現するための重要な要素だ。これらを高い次元で両立しているプラットフォームが「FMパッケージ」なのである。
「FMパッケージ」を採用したモデルは、V35スカイラインだけではない。その他にも、さまざまな車種に「FMパッケージ」が採用されている。
安定した走りが魅力の「FMパッケージ」を採用している主要車種
「FMパッケージ」は、V35スカイラインのほかに、スカイラインクーペ、Z33フェアレディZ、ステージア、北米で販売されていたスポーツクロスオーバーSUV FXにも採用されている。
Z33フェアレディZは、「FMパッケージ」にクラス最大径スポーツタイヤ（前後異径幅広）、最適前後重量配分（フロント53：リヤ47）、低重心、クラストップの空力性能（標準車Cd値0.30&フロントゼロリフト、フロント&リヤスポイラー装着車Cd値0.29&フロント・リヤゼロリフト）、スポーツドライビングポジション（前後タイヤ間センター付近への乗員配置、最適視界）など、スポーツカーの要素を加えることで成り立っている。
ステージアは、「FMパッケージ」の採用により、「抜群の高速安定性と快適性」、「広いキャビンとラゲッジルーム」、「世界最高水準の安全性能」を実現。また、VQ25DETエンジンやスノーシンクロモード付アテーサE-TSの採用により、高速走行から雪道や不整地路まで快適で安心感のある走りを可能としている。
スカイラインクーペは、機敏で楽しく、滑らかで安心なハンドリング性能を得るため、ホイールベースセンターへの乗員配置、ロングホイールベース、ワイドトレッド、大径タイヤなどを採用し、「FMパッケージ」の特質を活かした高性能な走りを実現している。
いずれもゼロリフトかつ低Cd値による安定したフラットライドとスポーティな走りを両立していることが特徴だ。
今なお「あのクルマは良かった」と話す人もいるFMパッケージ
FMパッケージを採用したV35スカイライン、スカイラインクーペ、Z33フェアレディZ、ステージアなどに乗っていて手放したオーナーの中には「あのクルマは、本当に走りが安定していた」と話す人もいる。
実際に乗っていた人の声からも、いかに「FMパッケージ」で実現していたゼロリフト&フラットライドがスポーティかつ安定した走りに寄与しているのかがわかるだろう。
また「FMパッケージ」のような優れたシャシー性能を持つクルマが登場する日は来るのだろうか。
文=齊藤優太（ENGINE編集部）
（ENGINE Webオリジナル）
