フォルクスワーゲンが、欧州市場で現行「トゥアレグ」の最終仕様となるファイナル・エディションの受注を開始した。「トゥアレグ」は2002年に登場し、同年に発表された高級サルーンの「フェートン」とともに、プレミアム市場の開拓を目指したフォルクスワーゲンの先鋒を担った。以来、3世代で120万台以上を販売した大型SUVの、歩みを振り返る。
V10やW12なんていう強心臓搭載モデルも!
初代はプレミアム商品としてのみならず、最大渡河深度は580mm、最大登坂性能は45度を誇る、本格オフローダーとしてもフォルクスワーゲン初となったクルマだった。電動機械式ロール制御や、6レベルのセッティングが選べるCDCエア・サスペンションなどの新機軸を採用したほか、5リットルV型10気筒ディーゼルや6リットルW型12気筒といった強力なマルチシリンダー・ユニットも設定。2009年までに、47万1000台以上を販売した。


2010年には2代目へバトンタッチし、全長も全幅も拡大。エクステリアは、空力を重視したバンパーや、新デザインのグリルを備えた。


フォルクスワーゲン初のハイブリッド車となった3.0 V6 TSIハイブリッドは、V型6気筒スーパーチャージャーとモーターで最高出力/最大トルクは380ps/580Nmを発生し、回生ブレーキも採用。2018年までの販売台数は、48万3000台を超えた。

2018年に登場した現行モデルは3代目にあたる。ボディ・パネルはスチールに加えアルミも使用し、重量削減が図られた。ホイールベースは2904mmと長いが、全高は7mm低くなっている。

室内のデジタル化をはじめ、1秒間に最大400回のロール検知を行うアクティブ・スタビライザーなど、先進アイテムが注ぎ込まれた。2020年には、最上級仕様のRハイブリッドを追加。最高出力/最大トルクが462ps/700Nmを発生するプラグイン・ハイブリッドで、最高速度は250km/hに届く。現在までの販売台数は、26万5000台以上だという。

フォルクスワーゲンのフラッグシップと言える「トゥアレグ」だが、3代目の導入が見送られたことから、日本での存在感は薄い。しかし、初代登場時に兄弟車として同時開発した「カイエン」が、ほぼ棺桶に片足を突っ込んでいたポルシェを救ったことは、忘れ難い事実だ。
次期型はないとの報道も一部にあるが、フォルクスワーゲンの“内燃機関を積むトゥアレグは、2026年内に生産を終了する”という表現は、23年の歴史の続きがあることを匂わせているようにも読める。
はたして「ティグアン」との間に加わった「タイロン」へその座を譲るのか、それとも兄弟分の「カイエン」のように、電気自動車となった後継モデルが登場するのだろうか。

今のところこのファイナル・エディションの価格は7万5025ユーロ(約1329万円)で、受注期間は2026年3月末までだ。
文=関 耕一郎
(ENGINE Webオリジナル)