2025.11.11

CARS

その名は“ムロマチ(室町)”!?【長短2台のみで6400万円!】75年の歴史が紡ぐ究極のディフェンダー

ディフェンダーの名がなぜ「ムロマチ」なのか!?

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ジャガー・ランドローバー・ジャパンは日本限定の特別仕様車「クラシック・ディフェンダー・ワークスV8ムロマチ・エディション」を発表。価格は「90」「110」ともになんと6400万円。各1台、合計わずか2台のみという希少性が、このモデルの特別さを物語る。

日本橋室町から始まった物語


この特別仕様車に冠された「ムロマチ」という名は、1950年、日本で最初にランドローバー車が輸入された地、東京・日本橋室町2丁目2番地に由来する。当時「日本エンジニアリング株式会社」によって「ランドローバー・シリーズI」が日本に初めて上陸したこの地から、ランドローバーの日本における75年の歴史が始まったのだ。



エクステリアには、このモデルのために特別に開発された「ムロマチ・ヘリテージ・ニュートラル・グレイ」が採用された。落ち着いた色調のこのビスポーク・カラーは、時代を超越した品格を湛える。

車体を彩るのは、バーミンガム最古の宝飾店が「ムロマチ・エディション」専用に作り上げた真鍮製のバッジ類だ。“LAND ROVER”バッジ、“MUROMACHI”ロゴ、“WORKS V8”バッジ。これらは、「シリーズI」に装備されていた輸入車用シャシー・プレートから着想を得たもので、オリジナル・モデルへの敬意が込められている。



ボディと同色のヘリテージ・メッシュ・グリルを備え、ナルヴィック・ブラックのスティール・ホイール、ブラック・アルマイト仕上げのエクステリア・ドア・ハンドル、ブラックの金具類がアクセントとなって全体を引き締める。16インチのヘビー・デューティー・スチール・ホイールに装着されるのは、マッド・テレイン・タイヤ。本格的なオフロード走行を想定した、妥協のない選択だ。

ドアを開けると目に飛び込んでくるのは、ブリッジ・オブ・ウィアー社製のチョコレート・ブラウンのセミアニリン・レザーである。リッチで深みのあるこのレザーが、車内全体をラグジュアリーな雰囲気で包み込む。

シルバー・アルマイトのドア・ハンドルとサテン・ブラックのファブリック・ルーフ・フレームが、時代を超越した日本の伝統芸術とデザインを表現する。クラシックな素材とモダンな仕上げの融合が、独特の世界観を生み出している。

「90」はソフト・トップ仕様で、その折りたたみ式ルーフのデザインは、2016年に生産が終了した最後の先代「ディフェンダー」に装着されていたファブリック・ルーフをモチーフにしたものだ。



本格的なタイ・ダウンとウェビングが付き、サイドとリア部分はジッパーを開いて巻き上げることで、オープン・エア・ドライビングを楽しめる。



特筆すべきは、ランドローバー初となるブラウンのモヘア仕上げファブリック・ルーフの採用だ。優れた耐久性と上質さを兼ね備えたこの素材は、高速走行時にもルーフをしっかりと固定するタイ・ダウン・ポイントと相まって、実用性とエレガンスを両立する。



なお、「110」はブラック・ルーフとなる。

心臓部には、ランドローバー純正の5リットルV型8気筒ガソリン・エンジンが搭載される。最高出力405ps、最大トルク515Nmを発揮するこのエンジンは、8段ZF製オートマチック・トランスミッションと組み合わされ、力強くも滑らかなパフォーマンスと優れたレスポンスを実現する。

0-60mph加速は、「90」で推定5.6秒、「110」で6.1秒。最高速度は106mph。ヘビー・デューティーな外観からは想像もつかない俊敏さも、このV8パワートレインの真価である。

全輪駆動システムには、2段副変速機、ヘビー・デューティー用フロント/リア・ディファレンシャル、トルク・バイアス・センター・ディファレンシャルを装備。オンロードでもオフロードでも、圧倒的なトラクションを発揮する。



英ランドローバー・クラシックは、2012年から2016年の間に生産されたドナー車両を厳選し、入念にレストア、リデザイン、アップグレードを施す。「ムロマチ・エディション」も程度の良い中古車を手に入れ、車両を分解した後、新しい部品を使用して新車と同じように組み立てられる。

サスペンション・システムは総合的にアップグレードされ、アイバッハ製カスタム・スプリングとビルシュタイン製ダンパー、改良型アンチ・ロール・バー、改良型アルコン製ブレーキを装備。フロント・ブレーキには335mmディスクと4ピストン・キャリパー、リア・ブレーキには300mmディスクと4ピストン・キャリパーが奢られる。再設計されたリサーキュレーティング・ボール・ステアリング・システムも装着する。

1台あたり何百時間にもおよぶ入念な作業を経て、耐久性、強度、ラグジュアリー、機能性を備えた究極のモデルが誕生する。これまでに導入された「ワークスV8トロフィー」などはいずれも高い評価と支持を得ており、「ムロマチ・エディション」もその系譜に連なる逸品である。

先代ディフェンダーに搭載されるV8パワートレインの歴史は、1979年の「シリーズIII ステージ1 V8」から始まる。キャブレター付き3.5リットルV8エンジンは、90bhpを発揮した。

1983年の「ランドローバー110」と1984年の「90」は、同じ3.5リットルV8エンジンを搭載し、最高出力は113bhpへ。さらに1987年からは135bhpにアップグレードされた。北米仕様の「ディフェンダー90」および「110」には、1992年から182bhpを発生する燃料噴射式3.9リットルV8エンジンと4段オートマチック・トランスミッションの組み合わせがラインナップされた。

1998年、限定モデル「50THアニバーサリー・ディフェンダー90」に、第2世代「レンジローバー」の190bhpを発生する燃料噴射式4リットルV8と4段オートマチック・トランスミッションが採用された。

そして2018年、5リットル自然吸気エンジンを搭載した「ディフェンダー・ワークスV8」が登場。1998年以来、初めてV8エンジンを搭載したディフェンダーとして、世界中の愛好家を熱狂させた。

英ランドローバー・クラシックは、世界中の旧いランドローバー愛好家向けに、専門家によるサービス、純正部品、そして忘れられない体験を提供している。英国コベントリーにある熟練したエンジニア・チームが、ランドローバーおよびレンジローバーのレストア、「クラシック・ディフェンダー・ワークスV8」の製作を専門的に行っている。



今回の「クラシック・ディフェンダー・ワークスV8ムロマチ・エディション」は、75年前、日本橋室町の地に降り立った「シリーズI」へのオマージュであり、同時に、クラシック・ランドローバーの未来を指し示す存在である。わずか2台という希少性、6400万円という価格は、真の愛好家にのみ許された特権だ。それは単なる移動手段ではなく、歴史と伝統、そして職人技の結晶なのである。

文=ENGINE編集部

(ENGINE Webオリジナル)

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