2025.12.07

CARS

【日独ホットハッチ対決】日本代表シビック・タイプR vs.ドイツ代表ゴルフGTI FF最速最良選手権の勝者はどっちだ

【前後篇の後篇/前篇からの続き】

ホットハッチはやっぱり面白い。シビック・タイプR&GRカローラ、フォルクスワーゲン・ゴルフRとGTIを公道で乗り比べた日独ホットハッチ対決。今回はその後編。モータージャーナリストの大谷達也さんとエンジン編集部の村上、佐藤、新井、村山が玄人受けのゴルフGTIと思わず仰天のデキのシビック・タイプRに乗ってその魅力を徹底検証した!

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前篇【ホットハッチはやっぱり面白い 日本代表GRカローラ vs.ドイツ代表ゴルフR 4WD最強決定戦】では、ゴルフRとGRカローラを激論!!

ゴルフGTIは運転がうまい人向け?

大谷 続いて前輪駆動系。ゴルフGTIはいかがでしたか?

ゴルフGTI

佐藤 ちょっとソウバナ的な話になっちゃいますが、いまのクルマってどれも値段が高いじゃないですか。でもゴルフGTIは、安いとは言わないけれど、まずまず手が届く範囲だし、それでいてホットハッチらしい軽快な走りが楽しめる。しかも、GRカローラやシビック・タイプRと違って、買おうと思ったらディーラーでちゃんとオーダーを受け付けてくれる。これって、本当は当たり前の話なんですが、それがちゃんとできているところがゴルフGTIは素晴らしいと思いました。

ゴルフGTI

村上 同じゴルフなのに、ゴルフRと違って、GTIは運転がうまい人が乗らないとキレイに走れない。もちろん、GTIだってRと同じか、それ以上に速く走れますよ。でも、腕がない人が乗ると、隣に乗っている人は身体が揺さぶられて大変な思いをする。GTIを乗りこなすにはある程度のスキルが必要でしょうね。

ゴルフGTI

新井 GTIは軽快感が魅力ですが、それ以外はゴルフRのほうがいいかな。だって、コーナーでアクセル踏むとトラクション不足で外側のタイヤがスリップするじゃないですか。

大谷 えー、あれでトラクション不足ですか。ちゃんとフロント荷重にしてあげれば、トラクションに不満はないと思いますよ。

新井 そうかなあ。あとは、どのモードを選んでもサスペンションがぴたっとはまる感じがしませんでした。

村上 それはなかったなあ。

大谷 私は、あれがゴルフ8.0以降の方向性だと思っています。昔のゴルフみたいなドターッとしたフラット感じゃなく、軽くボディーを上下させるなかで軽快感と快適性を両立させるのが、いまVWが目指している足回りという気がしています。

新井 なるほどねえ。

ゴルフGTI

村山 僕は以前、ゴルフ5に乗っていたのですが、そのときはクルマを曲げるのが本当に難しかった。でも、このGTIは最新のゴルフRと同じで、コーナー出口で積極的にアクセルを踏んでいっても、ちゃんと行きたい方向にクルマが進んでくれる。これだったら、もうちょっとクルマと仲良くなれるような気がします。

大谷 たしかに、運転の仕方次第でゴルフGTIは大きく反応が変わりますよね。これに比べるとゴルフRはフールプルーフで、誰が乗っても乗りこなせちゃう感じです。

村上 そんなGTIを楽しいと思うか、ダメと思うかは、人によって分かれるでしょうね。僕は好きです。

大谷 GTIをダメと思う人にはゴルフRがお薦めです。それでは、最後にシビック・タイプRの話をしましょう。

こんないいクルマがあるんだ!

佐藤 僕は取材に先立ってタイプRと2日間過ごしましたが、日常遣いでこんなに扱い易いクルマなのかと驚きました。ズボラ運転をしても、扱いやすいマニュアルギアボックスだから楽チンでした。

シビック・タイプR

新井 設定が、意外とハードコアじゃないですよね。

村山 ゴルフRよりも足回りがシットリしているという印象でした。

新井 そうそう。たとえ+Rモードを選んでも、スプリングではなくダンパーがボディを支えているという感じで、いままでより乗り心地がよくなっている気がしました。

大谷 私も同感で、2022年にデビューした当時はスポーツ・モードでもピッチングを繰り返すことがあったのに、今回の試乗車はサスペンションの動き方がとてもスムーズで、+Rモードでもピッチングを起こさなかったばかりか、とても快適な乗り心地だと感じました。それでホンダ広報部に改めて「足回りの設定を変えたのですか?」と訊ねたのだけれど、答えは「ノー」でした。

シビック・タイプR

村上 今回の試乗車は今年1月に発売された「レーシング・ブラック・パッケージ」というモデル。これは、もともと赤主体だったインテリアをブラック基調に改めたもので、プレスリリースを見てもハードウェアの変更に関する記述はありません。

大谷 そうなんですよ。でも、乗った印象は明らかに違いますよね。

新井 僕もデビューしたときは「ハードコアなスポーツモデルにしては普通に乗れる」と感じましたが、今回の試乗車はとても快適で、「おーい、何やったんだ!」とビックリしました。

シビック・タイプR

村上 本当に、こんなにいいクルマが世の中にあるのかと正直驚いた。

大谷 なにがよかったんですか?

村上 さっき、ゴルフGTIが軽快という話が出ましたが、その車重は1430kg。タイプRも同じ1430kgだけど、安定感や重厚感が素晴らしくいい。しかも走りはスポーティでステアリングは正確。ボディの剛性感だって文句なしに優れている。ゴルフRもいいクルマだけれど、オトナが乗るべきクルマが日本にあったということが本当に驚きでした。まるで輸入車に乗っているような気分が味わえる。輸入車っぽいですよ。

シビック・タイプR

佐藤 ダッシュボードはアルカンターラに似たウルトラスエードで覆われていて、フロントウィンドウへの映り込みがなくなった。まあ、それだけで従来型の100万円高という値付けはどうかと思いますが……。

村上 デビュー当時は499万円という価格をみんな「高い!」と言っていたけれど、いまになって考えてみたら、超お買い得だったのかもね。

新井 でも、ステアリングの味は落ちたような気がします。タイプRのフロントサスペンションってデュアルアクシス・ストラットサスペンションですよね。そのせいか、ステアリング中立が甘く感じました。

大谷 たしかにステアリングの反力感というかフィールがときどき失われることはありますね。

新井 そうなんですよ。中立だけじゃなくて、切っている状態でもときどきフィールが薄くなって、それが気になりました。先代はそんなことなかったのに、新型は乗り心地をよくしたせいで、そういう現象が起きているんじゃないかと思いました。

シビック・タイプR

村上 でも、エンジンはいいですよ。自然吸気だった頃のタイプRは高回転だけヒュンヒュン回る印象でしたが、いまはターボエンジンだから低回転域からトルクがある
し、回せば回した分だけ気持ちよさを味わえる。

大谷 それに加速感がなんとも素晴らしい。加速感だけで乗り手の気持ちをここまで昂らせるクルマを作れるホンダって、本当にすごいなあと思います。あとはシフトフィール。シフトレバーの動きがこんなにスムーズで、しかもギアに吸い込まれていくような感触が味わえるマニュアルトランスミッションって、世界中探しても、ほかにないんじゃないでしょうか。

お好みの1台は?

佐藤 最後に、個人的にどれがいちばん気に入ったか教えてください。

村上 今日はシビック・タイプRに衝撃を受けました。これを外すわけにはいきません。

村山 タイプRですね。メーターの表示、モード切り替え、エアコンの操作と、すべてが直感的でわかりやすく、扱い易い。おかげで、ちゃんと運転に集中できるところも素晴らしいと思いました。



新井 タイプRはたしかによかったけれど、自分で買うならGRカローラかな。ウチの息子がいま高2で来年免許が取れるんですが、彼にはマニュアルのGRカローラに乗って欲しいなあ。

佐藤 山道で乗ったときはタイプRがイチバンで、でも帰りの高速道路はゴルフRがよかったけれど、いまみんなで話していたら、やっぱりタイプRという気持ちになりました。

大谷 私もゴルフRとタイプRの間で心は揺れるけれど、本当に自分で買うとしたらタイプRかな。

村上 でも、今回の4台にはそれぞれの味があって、単純にどれがいいとは言い切れない部分もある。コンパクト・スポーツの世界は本当に奥深い。また、やりましょう。

前篇【ホットハッチはやっぱり面白い 日本代表GRカローラ vs.ドイツ代表ゴルフR 4WD最強決定戦】では、ゴルフRとGRカローラを激論!!
 

語る人=大谷達也(まとめも)+村上 政(ENGINE編集部)+新井一樹(ENGINE編集部)+佐藤 玄(ENGINE編集部)+村山雄哉(ENGINE編集部) 写真=神村 聖

■ホンダ・シビック・タイプR(レーシング・ブラック・パッケージ)

2リッター直4ターボ(330ps/420Nm)+6速MTのFWDモデル。デュアルアクシス・ストラットとマルチリンク式リアサスを採用し、剛性と快適性を両立。265/30ZR19のワイドタイヤを装着し、優れたトラクションを発揮。車重は1430kgとゴルフGTIと同値で、乗り心地は洗練されており、加速感、ボディ剛性、シフトフィールのすべてが高次元で調和し、輸入車にも匹敵する完成度を誇る。

駆動方式 フロント横置きエンジン+前輪駆動
全長×全幅×全高 4595×1890×1405mm
ホイールベース 2735mm
車検証記載重量(前:後)kg 1430kg(890:540)
エンジン形式 直列4気筒DOHC16V+ターボ
総排気量 1995cc
ボア×ストローク 86.0×85.9mm
最高出力 330ps/6500rpm
最大トルク 420Nm/2600-4000rpm
変速機 6速MT
サスペンション(前) マクファーソン/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前/後) ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤ(前後) 265/30ZR19
車両本体価格(税込) 599万8300円

■フォルクスワーゲン・ゴルフGTI

2リッター直4ターボ(265ps/370Nm)+7速DSG搭載のFWDホットハッチ。専用スポーツサスペンションと電子制御式ディファレンシャルロックで軽快な旋回性能を実現。車重は1430kgで、WLTCモード燃費は約14.8km /リッター。運転支援やコネクティビティ装備も充実し、日常性能とスポーツ性を高次元で両立するが、本気の走りにおいてはある程度の運転スキルが必要で、ドライバーの腕によって走りの質が大きく変わる。

駆動方式 フロント横置きエンジン+前輪駆動
全長×全幅×全高 4295×1790×1465mm
ホイールベース 2620mm
トレッド(前/後) 1430kg(910:520)
車両重量(前軸重量:後軸重量) 直列4気筒DOHC16V+ターボ
最高出力 1984cc
最大トルク 82.5×92.8mm
バッテリー形式 265ps/5250-6500rpm
バッテリー容量 370Nm/1600-4500rpm
航続距離(WLTCモード) 7速DSG
サスペンション(前) マクファーソンストラット/コイル
サスペンション(後) 4リンク/コイル
ブレーキ(前/後) ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
タイヤ(前後) 225/40R18
車両本体価格(税込) 549万8000円

(ENGINE2025年9・10月号)

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