2026.02.04

LIFESTYLE

メンテナンスフリーでずっと美しいまま 常識破りで新感覚の「再生BONSAI」とは

ザ・クラウン東京虎ノ門での展示風景。樹齢250年(推定)の真柏にカラーリングされた赤があしらわれ、ソリッドなRSの世界観に華を添える。

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繊細な美には緻密な手入れが不可欠。 そんな常識を超える盆栽アートが人気だ。 枯れ木を生き返らせるアップサイクルとは?

切り詰めた定型に豊かな世界観を見出すのは日本のお家芸だ。俳句や茶室といった伝統文化から小型家電、幕の内弁当まで、国内外が認める事象には事欠かない。盆栽もその代表例といっていいだろう。枝を伸ばすままにするのではなく、針金などを巻き付けて捻転させ、見えないフレームがあるかのような絶妙のバランスで構築。プラントアートとしての完成度は抜きんでている。

伊勢丹新宿店メンズ館での展示風景。宙に浮いた演出が目を惹く。

一方で日常的な手入れの手間や大きな庭がない住宅事情から、裾野が広がりにくかったのも事実。高齢化や後継者不足で盆栽園も少なくなりつつある。そうした逆風のなか、鈴木良夫さんが開発したRE BONSAITM(リ・ボンサイ)が注目を集めている。もともと住宅リフォームの会社を経営しており、盆栽は趣味だった。コロナ禍により自宅で過ごす時間が増えたこともあり、盆栽を手入れするうちにアップサイクルというアイデアを思いつく。

JALエンジニアリングとコラボしたアート。航空機の廃棄部品と組み合わせている。成田空港第2ターミナルで公開中(2025年12月31日まで)。

盆栽の主軸は松柏(しょうはく)。松と真柏(しんぱく)は常緑だが、水の過不足や虫食いで枯れてしまう難点がある。高価な商品であっても、一度枯れたら盆栽園では廃棄するしかない。鈴木さんはもらいうけた植木の土を洗い流し、煮沸して殺菌。無駄な枝や根を剪定し、腐敗と汚れを防ぐために光触媒でコーティングを施す。さらに顔料で色付けした枝を飾り、オブジェのようなビジュアルをつくりあげた。言わば盆栽版プリザーブド・フラワーで、水やりなどの手入れは不要。室内なら半永久的に持つという。

枯れてしまった盆栽の木々。乾燥後にさまざまなアレンジが施される。

インスタグラムで公開するとたちまち評判を呼んだ。鈴木さんはTOUFUTOKYOというブランドを立ち上げ、盆栽アーティストとしてリスタートを切る。メンテナンスの手軽さに加え、インテリアのようなデザイン・センスから、さまざまな店舗、企業から声がかかるようになった。トヨタやポルシェ、ミニなどのクルマのショールームや発表会での展示、銀行や航空会社とのコラボレーションも開催されている。空間や意図に合わせてオーダーできることも強みだ。

「新しい盆栽文化を創造していきたい」と語る鈴木さん。鉢単位でのネット販売のほか、ビギナーに向けてワークショップの開催を積極的に行っている。千年以上の伝統を持つ盆栽に加えられた「再生(reborn)」という価値観が、今後どのように枝を広げていくのか。その型破りな成長を注視していきたい。

TOUFUTOKYO https://toufu.tokyo/  インスタグラム @toufu.tokyo

文=酒向充英(KATANA) 写真=松崎浩之(INTO THE LIGHT)

(ENGINE2026年2・3月号)

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