2026.03.17

CARS

「これぞいい意味でのバカ!」と自動車評論家の清水草一が痛快レポート|「アバルト500e」は内燃エンジンも真っ青の常識外れに楽しいEV

清水草一さん、小川フミオさん、竹花寿実さんが試乗した「アバルト500eツーリズモ・ハッチバック」。

全ての画像を見る
毎年恒例「エンジン・ガイシャ大試乗会」、2026年もやります! 大磯プリンスホテルの大駐車場に総勢33台の輸入車を一挙に集め、33人のモータージャーナリストがまる一日かけてイッキ乗り! 2026年上半期イチオシの各ニューモデルにそれぞれ5人のジャーナリストが試乗した、計165本のインプレッションを順次公開。

advertisement


EVになっても毒を吐きまくる電気サソリ「アバルト500eツーリズモ・ハッチバック」には、清水草一さん、小川フミオさん、竹花寿実さんが試乗。内燃エンジンも真っ青の痛快リポートをお届けする。


「刺激と安寧」清水草一

欧州は自動車発祥の地。電動化を進めているが、内燃エンジンへの郷愁は捨てがたいはずだ。

アバルト500eは、癇癪玉のような加速のBEVでありながら、内燃エンジンそのものとも言うべきエグゾースト・サウンド(名称は“レコードモンツァ”)を発する。しかもそれは、車内のスピーカーからではなく、わざわざ車外後方床下に設置された、かなり巨大なスピーカーから発せられる。これぞいい意味でのバカ!

レコードモンツァONで走り出すと、かなり強烈なサウンドゆえ、次第に静寂が恋しくなった。OFFにしようと試みたが、操作が複雑でおいそれとは行かない。スマホで検索し悪戦苦闘の末、ようやく訪れた静寂は、それはそれは心安らかなものだった。

この安寧は、レコードモンツァの強烈な刺激あってこそ。たまにONにすることで、BEVの静粛性のありがたみが倍加するという仕掛けだ。それにしてもこの操作、もうちょっと簡単にしてもらえないかと語り合いつつ、車内はほのぼのと笑いに包まれた。

「日本車にはない遊び心」小川フミオ

日本車で得られないものを、しっかりそなえているクルマである。それはひと言でいうと、遊び心。ハンドリングでも、内外のデザインでも、好きなひとだけが振り向いてくれればよい、という思いきりのよさが最大の魅力になっている。

いたるところ凝りまくったエクステリア・デザインは一例だ。ヘッドランプの形状、小さなウインカー、サソリのエンブレムなど凝ったディテールとともに、凝縮感があって、力強く、キュートだけれどアグレッシブな全体のデザインがすばらしくよい。ベースの500eの登場は2020年だけれど、アバルト500eもまったく古びて見えない。内装はレーシーなシートが“やる気だね”と笑顔を誘う。



航続距離はメーカー発表値で303kmなので、まずいかなと思っていたら、やっぱり、ふたりのジャーナリストが試乗したあと乗ったら、バッテリー残量はけっこう危険な領域。まあ、とばすと乗り心地はけっこう硬めなので、適度な速度で流し、ただしカーブではクイックなステアリングによるスポーティな操縦性をじゅうぶん楽しめた。それでよい。

「日本の交通環境にピッタリ」竹花寿実

アバルト初のBEVである“チンクエチェント・イー”は、見ての通りフィアット500eのアバルト版。リチウムイオン・バッテリーが42kWhと小さ目で、フロントに155psと235Nmを発揮する駆動用モーターを搭載しているので、走りは十分に元気いっぱい。20~60km/hの中間加速が速い加速特性は、日本の交通環境で走りを楽しむのにピッタリと言える。

ICEモデルより明らかに低重心で前後重量配分に優れ、ワイドトレッド化されていることから、ハンドリングの素直さと正確性も抜群。今回は叶わなかったが、ミニサーキットに持ち込みたい衝動に駆られた。絶対に楽しいはずだ。

アルカンターラを多用したブラック基調のインテリアやヘッドレスト一体型スポーツシート、ブルーのセンターマーク入りステアリング・ホイールといった仕立てもスポーティネスを際立たせている。

ただ、ちょっと元気に走ると200km程度にまで短くなってしまう航続距離は難点。BEVのコンパクト・スポーツハッチが現実的に成立するには、もう少しBEV技術の進化が必要なのかもしれない。



■アバルト500eツーリズモ・ハッチバック
フィアット500の全面変更にともない、アバルトもBEVに進化。フロント1モーターの前輪駆動で、出力はベースとなったフィアット500eより37ps/15Nm大きい155ps/235Nmを発生する。全長×全幅×全高=3675×1685×1520mm。ホイールベース=2320mm。車両重量=1360kg。航続距離=303km。車両価格=615万円。

文=ENGINE編集部 写真=神村 聖/望月浩彦

(ENGINE2026年4月号)

advertisement



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement