毎年恒例「エンジン・ガイシャ大試乗会」、2026年もやります! 大磯プリンスホテルの大駐車場に総勢33台の輸入車を一挙に集め、33人のモータージャーナリストがまる一日かけてイッキ乗り! 2026年上半期イチオシの各ニューモデルにそれぞれ5人のジャーナリストが試乗した、計165本のインプレッションを順次公開。
これぞ新しいアメリカン・ラグジュアリー、キャデラック・リリック・スポーツには、竹岡圭さん、佐野弘宗さん、金子浩久さんが試乗した。
>>>小沢コージさん、斎藤慎輔さんのリポートはこちら<<<
「執事の王」竹岡圭
登場した時、キャデラックもEVになる時代が来たんだなぁ……と、なんだかシミジミさせられたのを覚えていますが、キャデラックのショーファードリブンと考えたら、こんなにいい組み合わせはないですよね。
しかもスタイリッシュでギラギラしすぎることもなく、未来感を押し付けることもなく、堂々たる風格は蓄えたままなのもステキなところです。
今回の試乗では「実はEVに乗るのは生まれて初めてなんですけど、本当に静かなんですねぇ~。乗り心地もドシッとしているし」と、同乗していただいたEPCの方に言われて、改めてマッチングの良さに気づきました。

本気で右足に力を込めれば相当にマッスルな一面も持ってはいるけれど、音と振動がないおかげで、こんなにも完璧な羊の皮をかぶった狼然としていられる。
車線をうっかりはみ出しそうになった時も、運転席のシートを振動させることでドライバーだけに伝え、同乗者の気持ちを1mmたりとも乱すことはない……。う~む、まるで完璧な執事の王じゃないですか。
「これぞアメリカの高級車」佐野弘宗
リリックはGMの新世代EV第1号である。トランプ政権下のアメリカでは、EVの近未来は不透明というほかないけれど、GMが社運を賭けた超大作であることだけは確かだ。
ちょっと前までのキャデラックは、メルセデス、BMW、アウディ(いわゆるジャーマンスリー)を強く意識した、シャープでクイックなスポーティ路線を売りとしていたことを考えると、リリックはそこからさらに一歩踏み込んだ……というか、ある意味で原点回帰的なキャデラックでもある。

その走りは正確だけれど、乗り心地はフンワリとおおらかだ。おお、これぞアメリカの高級車。ドイツ車みたいなキャデラックは、少なくともわれわれ日本人はそれほど魅力には感じないわけで、リリックの味わいには、なんだかご褒美をもらった気分になる。
いかにもアメリカな巨大SUVのエスカレードがトップを張るようになってからは、キャデラックのクルマづくりも、あらためていい方向に吹っ切れたのでは……と、このGM肝いりの最新EVに乗って思った次第。
「驚くべき静粛性」金子浩久
奇遇にも同乗のYさんは2回目。昨年、マイバッハのEV「EQS680」に一緒に乗った。西湘バイパスで、「今の舗装のつなぎ目からのショックの収まりが良くないですね。サスペンションのダンピング能力が足りないのかもしれませんね?」と鋭く的確なインプレッションを発せられたのを良く憶えている。
EVに乗るのはあの時以来の生涯2回目。リリックは斬新なエクステリア、特にリアデザインが気になっていたとのことで興味津々。僕は3回目。

特筆すべきは、数あるEVの中でも特別な走行中の静粛性の高さ。キャデラックがエンジン車時代から開発し続けてきたノイズキャンセリング技術の成果が結実している。走行中に車内が静かなことの価値を最大限に享受できるのが音楽鑑賞。リリックが搭載しているAKGブランドのカーオーディオの高音質に驚かれていた。
ステアリング左側裏のパドルで操作するバリアブル回生ブレーキ・コントロールも他にない独自装備。昨年のマイバッハとはまた違ったEVの一端を体験いただいた。

■キャデラック・リリック・スポーツ全長×全幅×全高=4995×1985×1640mm。ホイールベース=3085mm。車両重量=2650kg。キャデラック初の量産EVは前衛的な外観を持つSUVとして登場した。前後にモーターを備えた4WDでシステム全体では522ps、610Nmを発生する。一充電走行距離510km(WLTPモード)。車両価格=1100万円~。
写真=小林俊樹/茂呂幸正/望月浩彦/神村聖
(ENGINE2026年4月号)