ディフェンダーにも、ついにPHEV仕様が追加された。技術は大きく変わっても、本質は変わらない。ブランドの矜持に満ちた一台だ。
その普遍性に改めて驚かされる
2000年代の前半、大学生だった私は夏休みの2カ月間、英国で過ごしたことがあった。そのときロンドンの書店で買ったのが、新刊として平積みされていた『LAND ROVER -Series One to Freelander』というハードカバーで、グラハム・ロブソンという著名な自動車研究家が書いたランドローバーの解説書だった。留学や語学学校に通うわけでもなかった私は、19.95ポンドで買ったこの本をパラパラとめくり、遊学風情を満喫していた。

今回のディフェンダー初のPHEVモデルの試乗を終えてまずしたことは、この本を本棚から引っ張り出すことだった。ブランドのDNAを再確認しなくてはならないと直感的に思ったからだ。モノコック、電子制御4WD、豪華なインテリアをまとった最新世代のディフェンダーに初めて乗ったときも、その普遍性には驚かされたが、PHEVになってもこれほど変わらないとなると、シリーズ1からの歴史を確認しないわけにはいかないと思ったのだ。

クルマに乗り込みインパネなどを一目する。基本的に他のグレードと共通だが、中央のタッチスクリーン下には「EV」ボタンが追加され「HYBRID」「EV」「SAVE」から電動走行モードを選ぶことができる。
デフォルトの「HYBRID」で走り出すと、言わずもがな静かにスルスルと動き出していく。十分な電気を蓄えているなら、50km/h前後で都内を走っている限り、加速時でも電気のみで走ってくれる。試しにアクセルを深く踏み込んでみると、エンジンが作動して力強い加速をみせるが、デジタル回転計横のパワーゲージを見てそうだとわかる程度で、体感では同調や切り替えのタイミングにはほとんど気づかないほど洗練されている。

東名高速道路を3区間走ってみたが、長距離移動では快適なクルーザーになるだろうと思う一方、ラグジュアリーSUVからは一歩退く乗り味で、PHEVといえどもオフロード性能を優先した足回り設定だと感じた。また、積極的に右足を踏み込んで走ると充電の減りは思いのほか早く、あっという間に残量ゼロになってしまう。
一方で、電気の使用を抑える「SAVE」にしてパーシャル・スロットルで走れば、電気は比較的早く充電されていくので、電気は街中で使い、長距離では充電を優先する使い方がよさそうだ。
変わっても、変わらないディフェンダー
何はともあれ、ディフェンダーPHEVに乗ると旧ディフェンダーとはまったく異なる乗り物に思える。しかし視界の高さやスクエアなボディがもたらす安心感、そしてどんな道でも躊躇なく進んでいけそうな落ち着きは、旧型と確かにつながっていると感じられる。技術は大きく変わっても、どこへでも行けるクルマという思想は、シリーズ1の時代から連綿と受け継がれてきているのだろう。

『LAND ROVER -Series One to Freelander』には技術の進化や設計思想が細かく記されているが、ディフェンダーの項の最後には、こんな一文が記されている。「より良いランドローバーが作られるとき、そのランドローバーを作るのはローバー社である」。最新のディフェンダーに乗った後で読み返していると、その言葉は決して昔の宣伝文句ではなく、いまのディフェンダーにも生きている約束のように思えてきた。
■ディフェンダー110 X-DYNAMIC SE P300e
駆動方式 フロント縦置きエンジン+4輪駆動
全長×全幅×全高 4945×1995×1970mm
ホイールベース 3020mm
トレッド (前/後) 1700/1685mm
車両重量 2640kg
エンジン形式 直列4気筒DOHC16V+ターボ+モーター
総排気量 1995cc
最高出力(モーター) 224ps/4500-6000rpm(142ps/3650rpm)
最大トルク(モーター) 350Nm/1750-4500rpm(278Nm/1000-3700rpm)
トランスミッション 8段AT
サスペンション (前) ダブルウィッシュボーン/エア
サスペンション (後) インテグラルリンク/エア
ブレーキ(前後) ベンチレーテッドディスク
タイヤ(前後) 255/60 R20
車両本体価格(税込) 1091万円
文=佐藤 玄(ENGINE編集部) 写真=佐藤亮太
(ENGINE2026年5月号)