2024.02.01

CARS

ランドローバー・ディフェンダー110は、愛すべきシーラカンスだ! 欠点は最小回転半径が9.5mと、昔のジャガーXJ並みにでかいこと(笑)【『エンジン』蔵出しシリーズ/ランドローバー篇】

ランドローバー・ディフェンダー110上陸!

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中古車バイヤーズガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回は、 2008年8月号に掲載されたランドローバー・ディフェンダーの記事をお届けする。しばらく輸入が途絶えていたディフェンダーの並行輸入。フォードのディーゼルが搭載される等の小改良を受けた英国のアイコンはどうだったのか。


プレミアム・カー・インポート

ある日、ロータスの輸入元のLCIに立ち寄ったら、地下駐車場の片隅に新車のディフェンダーが置いてあった。LCIがPCI(プレミアム・カー・インポート)なる新組織を立ち上げ、ロータス以外のまだ見ぬ世界のプレミアム・カーを輸入するという。その第1弾がランドローバー・ディフェンダーなのだそうだ。

モダン化された運転席まわり。シートは座面が小さい。


なんてオシャレな選びであることか。ディフェンダーはスポーツカーでこそないけれど、1948年の原型を残したまま、変わらぬスピリットで生産され続けている、英国のアイコンのひとつである。そのストイシズムは、モーガンにもミニにもロールズ・ロイスにもあい通じる気がする。そのディフェンダーの最新モデルがわが国が誇るきわめて厳しいディーゼルの排ガス規制であるところの「新長期規制」をパスしたというのだからめでたい。なお、筆者が試乗した1号車は、ものの試しに、と貨物の1ナンバーでとったけれど、フォードの最新2.4リッター直4コモンレール・ディーゼル・ターボは乗用登録でもパスできるという。

私の記憶の中のディフェンダーは、はねるような乗り心地とまっすぐ走らない直進性の持ち主で、もちろんエアコンがプアで、フロント・スクリーンの下に換気口がついている、ほぼオールド・カー。そのディフェンダー、輸入の途絶えている間に小改良を受けていた。

試乗車は貨物登録ゆえ5名乗車。乗用登録だと7名乗車。


ひとつは前述した2.4リッターの直4ディーゼル・ターボを搭載したこと。同時に、ゲトラグ製6段マニュアルを得たこと。インテリアでは、ディスカバリー3と同じダッシュボードが採用され、イッキにモダンになった。ステアリングはあいかわらずだが、より効率のよいヒーター、ベンチレーション・システム、それにエアコンがついた。私はこのディフェンダー110XS SWという最高級モデルに乗り、軽井沢を目指したのだった。


奇跡をどうもありがとう


4WDの中でもひときわ高いシート・ポジションには、よじ登るようにでないとたどり着けない。座るとたいへん見晴らしがいい。小型トラックと同じ高さがある。シートは小さくて、直立したサイド・ガラスがすぐ横に迫る。オリジナル・ミニの後期型がこうだった。422マイル、675kmしか走っていない新車であるにもかかわらず、シフトは存外軽い。クラッチは重いが見た目ほどには重くはない。モダンな重さなのである。発進は低速トルクに優れるディーゼルゆえ簡単。少々乱暴にクラッチを離しても、スッと前に出る。でも、そこからアクセルを踏んでも加速しない。車重が2040kgある。このディーゼル・ターボは1000rpm以上回っていないと、いうべきトルクを発揮しない。あせってアクセルを踏み込むとラグを感じて、ますます遅く感じる。2速に入ってからが勝負なのはトラックと同じ。

ロールは大きい。ブレーキはオーバー・サーボ気味の現代のクルマに慣れていると効かないも同然。価格860万円。ショート・ボディの90もある。798万円。問い合わせ=PCI(Tel.03-5754-0227 Fax.03-5754-2779)


乗り心地は、2名乗車だと積載量が軽すぎるのだろう、細かく上下に揺さぶられる。基本的に硬い。高速道路に上がって首都高、関越へ。直進性はけっこういいけれど、100km/h巡航は音がこもってうるさい。隣同士で会話していると、喉にエヘン虫がやってくる。6速トップは2000rpmぐらいでエンジン自体は粛々と回っている。そこからアクセルを踏み込むと力強く加速する。高速巡航での乗り心地はそんなに悪くない。リジッドだから、しなやかに、というわけにはいかないけれど、タイヤのドタドタ感とかとは皆無。

マダガスカル沖のシーラカンスは生きていた。まったくもって、オリジナル・ミニが生きていたような感激。欠点は最小回転半径が9.5mと、昔のジャガーXJ並みにでかいこと。英国車党にはうれしいことだらけ。軽井沢まで往復しての燃費は満タン法で7.7km/リッターだったこと。もっといいにこしたことはないけれど、それは望みすぎというものだ。奇跡をどうもありがとう。

文=今尾直樹(ENGINE編集部) 写真=小林俊樹

(ENGINE2008年8月号)

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