2026.04.11

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18歳はどうやって伝説のコンサートを実現したのか?|ケルン1975、キース・ジャレット即興の真実

ケルン1975を実現させた若き女性プロモーターを演じるのはマラ・エムデ。

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今でも音楽ファンの間で語り草となっているキース・ジャレットの1975年のコンサート。そのありえない舞台裏を描いた、痛快な作品が登場した。

18歳がどうやってコンサートを成功させたのか?


アメリカを代表するジャズ・ピアノ界の巨匠、キース・ジャレット。1975年1月、ドイツ・ケルンの歌劇場で行われた即興演奏の録音は、のちに『ザ・ケルン・コンサート』として発売され、世界的な大ベストセラーとなる。だが今でもファンの間で語り草となっているこのコンサートは、実は公演のギリギリまで開催が危ぶまれていた。それを実現させたのが当時、まだ18歳の女性だったことをご存じだろうか……。



裕福な歯科医の家庭に育った高校生のヴェラ。親友とともにジャズクラブに通っていた彼女は、ある晩、イギリスのサックス奏者、ロニー・スコットと意気投合し、彼のドイツでのライヴ・ツアーのブッキングを頼まれる。持ち前の度胸と実行力でツアーを実現させた彼女は、この仕事にのめりこみ、稼いだお金で両親に内緒で部屋まで借りるようになる。
そんなヴェラが出会ったのが、ジャズ・フェスティバルで聴いたキース・ジャレットの音楽。その演奏に衝撃を受けた彼女は、1300人を収容する歌劇場で、彼のコンサートを企画するという無謀な賭けに出る。



一体、お金も人脈も足らない十代の女性が、どうやってこのコンサートを成功させたのか? この映画で描かれているのは実在の音楽プロモーター、ヴェラ・ブランデスの体験に基づく実話である。ともすれば音楽ファンに向けた、ドキュメンタリー色の強い作品にもなりかねない内容だが、その印象はまったく異なる。若くして大人の世界に飛び込んだヒロインが、大胆な発想と恐れを知らぬ行動力で、降りかかる難局を次々に乗り切っていくという、痛快な物語に仕上がっているのだ。

一方、キース・ジャレットの描き方も興味深い。心身ともに疲弊しながら、マネージャーが運転する車で欧州をツアーでまわるその姿に、スター然とした華やかさはない。だが自らの音楽においては一切の妥協を許さない彼もまた、ヴェラを相手に大きな決断を迫られるのである。



次に何が起きるのか分からない展開に加え、時に映画の登場人物が観客に向かって語り始めるなど、その構成も型破り。まさにジャレットの即興演奏のごとく、自由で刺激的な作品だ。


■1975年のケルン・コンサート
本作品で描かれる『ザ・ケルン・コンサート』のライブ録音アルバムは、名門ジャズ・レーベルのECMから発売され400万枚以上を売り上げた、史上最も売れたジャズ・ソロ・アルバムである。このライブを実現させた若き女性プロモーターを演じるのはマラ・エムデ。監督・脚本は、ニューヨークを拠点に活動するイスラエル出身のイド・フルーク。

116分。4月10日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISUGARDEN CINEMA、アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー。配給:ザジフィルムズ

(C) Wolfgang Ennenbach / One Two Films

文=永野正雄(ENGINE編集部)

(ENGINE2026年5月号)

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