2026.05.02

CARS

トライアンフより官能的、ベスパよりスポーティー モッズカルチャーの若者たちが憧れたイタリアン・スクーター、「ランブレッタ」が復活

1960年代にイギリスで生まれたモッズカルチャーは、音楽とファッション、そしてモーターサイクルが一体となったムーブメントだった。その世界観を描いたのが「さらば青春の光」(1979年)。タイドアップした細身のスーツにミリタリーコート、そして過剰なミラーとライトでデコレーションされたランブレッタ。同じくイタリア製のベスパは「ローマの休日」でグレゴリー・ペックとオードリー・ヘプバーンが乗っていたが、それ以上に鮮烈な印象を与えた。

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モッズの背景にあったのはイタリアへの憧れ。1950年代末期から1960年代、イギリスでは労働者階級を中心に鬱屈が溜まっていた。サビルロウの構築的なフォルムよりも軽やかな着心地のスーツ、無骨なエンジンがむき出しのバイクよりも流線形のモノコックボディに開放感を覚えたのだろう。実際にランブレッタはイタリアよりもイギリスで売れたらしく、円形のエンブレムもイギリス空軍をモチーフにした青とオレンジの配色だった。

40年ぶりにイタリアに回帰

ランブレッタを製造していたのはイノチェンティ。一貫して自社製造・販売してきたピアジオのベスパとは異なり、労働争議で80年代には生産を中止。その後はインドの会社に売却され、オリジナルの金型を元につくられてきた。だが金型は使うほどに劣化するため、クオリティダウンに危機感を覚えたイノチェンティは権利を買い戻し、2016年にオーストリアのバイクメーカーと共同出資で再スタート。さらに22年からは数十年ぶりに単独でブランドを展開する。といっても単なるクラシックの再現ではない。「当時のランブレッタが進化したら…」というコンセプトのもと、現代の交通事情にアダプトするように絶妙なアレンジが施されている。





コアなファンから注目を集めるなか、かつてコンパクトなサイズで人気を集めたJ(ジュニア)シリーズがリブートされ、この4月にお目見えした。流麗な横長のエンジンルーム、六角形のライトといった特徴を温故知新、最新テクノロジーでアップデートさせた。

クルマ以上に風をダイレクトに体感できるのがバイクの醍醐味。よみがえったイタリアン・スクーターで、モッズに熱狂した銀幕の若者たちのように、日々おぼえる閉塞感を忘れてみるのも悪くない。

文=酒向充英(KATANA)

(ENGINE2026年5月号)

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