神奈川県横浜市の臨港パークにて開催された、35歳以下の若者たちによるカーイベント「YOKOHAMA Car Session」。ジャンルの垣根を越えた多種多様な車両が参加しているのが大きな特徴だ。今回は会場でおそらく最も古いクルマで参加した江川さんの、1935年式オースチン・セブンを紹介しよう。
「若者のクルマ離れ」に抗う若者たち
20代のクルマ好きが中心となって開催されるカーイベント「YOKOHAMA Car Session」。参加のレギュレーションは「オーナーが35歳以下であること」、たったそれだけ。

イベントの主催である20代の後藤さん、本田さん、甲野さんの一声によって始まったこのイベントも、今年で3回目。会場をこれまでの横浜赤レンガ倉庫から臨港パークへと移し、参加車両として約120台が集結した。
会場を眺めていて思うのは、参加車両が本当に多種多様ということだ。最新の国産スポーツカーから、ヤングタイマーな欧州車、果てはクラシカルなアメ車など、まさにボーダーレス。

それでいてオーナーたちは皆、穏やかに仲良く交流している。“クルマ好き”であれば車種もジャンルも関係ない、そんな多様性を受け入れる雰囲気こそが、幼少期からインターネットやSNSなどで幅広い人たちと交流している若者ならではのスタイルなのかもしれない。
その中で、他の参加車両とは明らかに雰囲気の違う1台を見つけた。1935年、なんと昭和10年に生産されたオースチン・セブンと、そのオーナーの江川さんだ。
歳の差なんと57歳! 全てがプリミティブ
オースチン・セブンは1923年から1939年にかけて、イギリスで生産された小型乗用車だ。
1900年代初頭にかけてイギリスで普及していた簡便なサイクルカーなどに代わって、経済的でありながら十分な性能を持つ大衆車として約12万台を販売したベストセラーだ。

1991年生まれの江川さんがオースチン・セブンを手に入れたのは2023年のこと。やはり気になるのはその出会いのきっかけだが、どのようにして戦前車との接点を持ったのだろうか?
「元々クルマは好きでしたが、高校生くらいに漫画の頭文字Dや湾岸ミッドナイトにハマり、だんだんと旧車が気になるようになってきました。そこから白洲次郎も好きだったこともあり、戦前のベントレーやロールス・ロイスといった、鼻の長いクラシックカーの存在を知り、興味を持ちましたね」
筆者含む平成生まれのクルマ好きにとって頭文字Dや湾岸ミッドナイトは、もやは“聖典”と言える存在だが、そこに別の“好き”が組み合わさることで、新たな化学変化を生んだようだ。
「旧い英国車ということで当初は1964年式のMGBマークIに乗っていましたが、そこから英国車乗りの知り合いができるようになり、そこでお会いした方がこのオースチン・セブンを所持してました。存在自体は愛読していた旧車雑誌などで知っていましたが、1年後に縁あって譲ってもらうことになりました」

巡り合わせとも言えるきっかけで約90年前の戦前車を手に入れることになった江川さん、気になるのは整備や維持についてだが、その辺りはどうなのだろうか?
「購入してからすぐカムシャフトから異音があり、エンジンをオーバーホールしました。同じくオースチン・セブンに乗っている友人と2人でエンジンを下ろし、ほとんどDIY(!)でやりました。戦前車は電子部品がほとんどなく、構造がシンプルなので意外とできちゃうんですよ。部品もイギリスに行けば丸ごと1台組めるくらい出るので、通販で購入しつつ作業しました。作業量を考えるともうやりたくはないですけどね笑」
そう笑顔で語る江川さんだが、そのために「ウィットワース規格」と呼ばれる専用の工具まで用意して作業したというのだから気合いの入りようは凄まじい。

「1950年代には改造されてレースカーにされたりしていたくらいなので、現代車に混じって公道を走るのも問題ありません。最高速度も85km/hくらいは出るので高速道路だって走れちゃいます」
まるで白黒映画の中から出てきたような江川さんとオースチン・セブンのコンビ。ぜひこの先も末長く戦前車とのカーライフを続けてもらいたい。

文・写真=浅石祐介(ENIGNE編集部)
(ENGINE Webオリジナル)