2026年3月14日(土)に東京・銀座の旧首都高速道路の上で開催された空冷ポルシェの祭典、「LUFT TOKYO」(ルフト東京)。会場となった2025年の春に廃線となった東京高速道路KK線には、空冷の911を中心に220台以上の歴代ポルシェが集まり、それを目当てにした来場者は約1万1600人に及んだ。
派生車種やレーシングモデル
1日限りとなるポルシェ・ミュージアムとなったルフト東京。そこに集結した220台以上のポルシェを画像で紹介するのがこの企画である。第5回目となる今回は、空冷911から派生したスペシャルモデルやカスタマイズカー、さらにレーシングモデルを取り上げていく。
グループBのホモロゲーションモデル
博物館に常設展示されていても不思議ではないスペシャルモデルやレーシングカーがルフト東京には集まったが、その中に292台のみが限定生産されたポルシェ959も交ざっていた。このようなレジェンドカーが普通にポツンと置かれていたことからもルフト東京の壮大さと深遠さを窺い知れた。
959の前身となるクルマが登場したのは1983年9月に開催されたフランクフルト・ショーで、このときのモデル名は959ではなくグルッペBだった。このネーミングが与えられたのは、FIA(国際自動車連盟)、FISA(国際自動車スポーツ連盟)の車両規定内に1982年に設定されたグループBカテゴリーのホモロゲーション取得用マシンとして開発されたからだ。
グループBは連続する12ヶ月に200台製造された車両が公認の対象となったが、959の市販がスタートしたのがグループBの申請受付停止後であったため、結局959がグループBのホモロゲーションを取得することは叶わなかった。そのため、959は新しいハイテクを試すための実験車であり、ポルシェの高い技術力を効果的にアピールするための走る広告塔としてデリバリーされることになった。
新技術が目白押し
959の量産市販バージョンが公開されたのは1985年のフランクフルト・ショー。盛り込まれた新技術はヘッドまわりを水冷化した水平対向6気筒エンジン、シーケンシャルターボ、フルタイム4WD、6段マニュアルトランスミッション、ダブルウイッシュボーンサスペンション、自動減衰力および車高調整式可変ダンパー、デンロックシステム(脱落防止機構)を採用したタイヤ/ホイール、複合素材ボディパネル、エアロダイナミクスに優れた空力ボディなどなど、というものだった。
959は外見こそ911シリーズに似せていたが、搭載していたメカニズムは別モノで、959で培われた数々の技術がその後に登場したポルシェに受け継がれたことは有名なエピソードである。分かりやすい例を挙げると、フルタイム4WDのテクノロジーが964型911に引き継がれ、水冷ヘッドのノウハウは996型911用エンジンで活かされた。
輝かしいレガシー
グルッペBとほぼ同時期にフェラーリが送り出したグループBカテゴリー・ホモロゲーション取得用マシンの288GTOが後年にF40として結実したというエピソードと比較すると一代限りとなったポルシェ959の話題性や存在感は稀薄だといえる。しかし、その技術が次世代のポルシェにしっかり継承された点にスポットライトを当てれば、959で試された技術が輝かしいレガシーとなっているといえるだろう。
筆者は久しぶりに本物を見ることができた959の雄姿に感動していたが、その周囲には空冷ポルシェ911のレストアで世界的に知られるSinger Vehicle Design(シンガー・ヴィークル・デザイン)が再構築した「ポルシェ911リイマジンド・バイ・シンガー」や993型911カブリオレのレストモッドである「993スピードスター・リマスタード」などが展示されていたので本当に見どころが多かった。
チャンピオンマシンが多数登場
そのほか、ル・マン24時間耐久レースに参戦したエンジンが載るスペシャルマシンの911RSR、ポルシェ930ターボの日本輸入第1号車、RUFがBTRを開発する際にプロトタイプとして製作したRUF BTR NATO、964型911RS N/GT Macau、ヨーロッパ最大のカスタムカーショーとして知られるULTRACEで2025年のチャンピオンに輝いた日本発のカスタム・ポルシェ「MADLANE 935ML」なども披露された。
レーシングカーでは、1964年の第2回日本GPで優勝した904ことカレラGTS、1968年の第5回日本GPで2位になった910、1984年の全日本耐久選手権で活躍したTRUST ISEKIポルシェ956、高橋国光選手が1985~87年および89年に全日本チャンピオンに輝いた2台のアドバン・アルファ962C、1998年の全日本GT選手権に出場し、近年レストアされたナインテン・ポルシェ993RSRといった日本のレースシーンを彩った珠玉のモデルがズラリと並んだ。

文=高桑秀典 写真・編集=新井一樹
(ENGINE WEBオリジナル)