2026.06.07

LIFESTYLE

巨大な100個の頭蓋骨が初公開 ロン・ミュエク日本で18年ぶりの大規模個展を開催中

唯一無二の彫刻作品で世界的な注目を集める現代美術家のロン・ミュエク。総作品数49点のうち11点を集めた贅沢な個展が、東京・六本木の森美術館で開催されている。

現代美術好きには必見

ロン・ミュエクをご存知だろうか? 1958年、オーストラリアに生まれ、現在はイギリスで活動する現代美術作家だ。日本国内では、青森の十和田市現代美術館にある、高さ4メートルもある中年女性像《スタンディング・ウーマン》で知られている。

とにかく大きく、そして細部がどこまでもリアルで、いまにも動き出しそうに見える作品だ。十和田までこの作品を見に行くのは難しいけれど、現在、森美術館で開催中の「ロン・ミュエク」展なら東京で彼の作品を複数見ることができる。しかも、現代美術に興味のある人なら誰もが楽しめる内容となっている。

ロン・ミュエク《ゴースト》1998/2014年 所蔵:ヤゲオ財団コレクション(台湾) 展示風景:「ロン・ミュエク」韓国国立現代美術館ソウ ル館、2025年 撮影:ナム・キヨン 画像提供:カルティエ現代美術財団、韓国国立現代美術館

直感的に鑑賞できる作品

その理由は2つ。第一は直感的に楽しめること。「大きい!」「小さい!」という大きさへの純粋な驚きは、スマホばかり見ている現代の私たちにとって、実はめったにない体験だ。中年と思しき巨大な女性が横たわる《イン・ベッド》や、寝ているおじさんの《マスクII》など、血管が透ける肌、微妙に伸びたヒゲ、二の腕がたるんだ脂肪など、生々しさと存在感が私たちの感覚を強く揺さぶってくる。

第二に出品点数が11点だけであること。ちょっと少ないように感じられるけれど、ミュエクは寡作な作家で、現在までに発表した作品はわずか49点。全作品の約2割をいっぺんに見られると考えたら非常に贅沢だ。

たいていの展覧会は、作品が大量に展示されていて、私たちは知らず知らずのうちに作品を流れ作業のように見てしまっている。けれど、これだけの作品数なら、ミュエクの作品に覚えた違和感や奇妙さを起点として「なぜ自分はこう感じるのだろうか?」と、作品を目の前に時間をかけて、じっくり掘り下げて考えることもできるはずだ。

ちなみに本展で注目されているのが、日本初公開の作品《マス》。100個の巨大な頭蓋骨の彫刻の間を鑑賞者はゆっくりと歩む。西洋でも東洋でも、さまざまな意味を持つ頭蓋骨を目にし、作者はなにも提示していないにもかかわらず、私たちはその空間を勝手に解釈し、いろいろ考え込んでしまう。その体験もまたおもしろい。

パリでの開催を起点に、ミラノ、ソウルを経て、日本へようやくやってきた、待望の国際巡回展、ぜひ楽しんでほしい。

■「ロン・ミュエク」展

9月23日(水・祝)まで森美術館(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階)で開催中 詳細は森美術館公式サイトまで

※「ロン・ミュエク」展は、カルティエ現代美術財団と森美術館の共催です

文=浦島茂世(美術ライター)

(ENGINE2026年7月号)

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