2026.08.02

LIFESTYLE

名作照明「トロメオ」の秘密 デザイナー/建築家のミケーレ・デ・ルッキにインタビュー

誰もが目にしたことのあるイタリアの名作照明、トロメオはいかにして生まれたのか? デザイナーが誕生秘話を明かした。

長い髭をたくわえたデザイナー/建築家のミケーレ・デ・ルッキ(1951~)と写っているのは、20世紀を代表する名作照明、イタリア・アルテミデ社の「トロメオ」だ。名前を知らなくても、その姿を目にしたことのある人は多いだろう。実はハリウッド映画では定番の小道具で、“知的で仕事ができる人”の机の上には、約束事のように置かれてきた。『アメリカン・サイコ』ではエリート社員のデスクに、『インターステラー』ではNASAのオフィスにと、例を挙げればきりがない。重要なのは、この照明を見ただけで誰もが“洗練”と“知性”を感じることである。

トロメオは、デスク・ランプだけでもサイズは4種類。フロアー・ランプ、壁や天井に付けるタイプから、巨大なモデルまで。40年でバリエーションは増え続けている。今秋、カラーのバリエーションが追加される予定。問い合わせ先:アルテミデ・ジャパン TEL.03-6230-9912

そんなトロメオが生まれて、今年でちょうど40年。来日したミケーレ・デ・ルッキに、そのあまり知られていない誕生秘話を聞いた。

伝統漁法がヒントに

「そもそもは、建築家のための美しいデスクランプとして考えたものです。それまで彼らが普段使っていた照明は、武骨な鉄のフレームで、電源コードの処理も無粋なものでした。まずは、照明のすべてをアルミで作ることを試みました」

デ・ルッキがトロメオで用いたのは、南イタリアの伝統である、ワイヤーの張力を使った漁獲クレーンの仕組だ。この機構を利用すれば、人間の腕のようにアームを自在に動かせるうえ、アルミの細いフレームの中にワイヤーを隠すこともできる。アーム同士をつなぐ関節部分の滑車に高機能ナイロンを挟み、内部ワイヤーの動きを滑らかにしたことも大きな技術的ポイントだ。この小さな工夫のおかげで、軽い力で動かせ、必要な位置でぴたりと止められる。光源の熱を逃がす穴の開いたシェードの形は、「植木鉢から引用した」もの。「人は家庭にある見慣れたデザインに親近感を覚える」という彼の考えに基づいたものだ。

トロメオは、こうした極めて合理的な発想から生まれた。だからこそデ・ルッキは、「ハリウッド映画でよく使われているのは知っているが、どうしてそうなったのかは私にもよくわからない」と、愉快そうに笑った。

文=ジョー スズキ(デザイン・プロデューサー) 写真=田村浩章

問い合わせ先:アルテミデ・ジャパン TEL.03-6230-9912

(ENGINE2026年8月号)

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