ゴードン・マーレー・スペシャル・ビークルズ(GMSV)は新型スーパーカー「S1」を披露した。2025年の「S1 LM」をベースとするモデルだ。
サーキット向けの「S1 LM」を公道向けに再チューニング
2026年のGMSVの新作「S1」は「S1 LM」の血統を受け継ぎながら、キャラクターと狙いはまったく異なる。「S1 LM」が1995年のル・マン24時間レースを制した「マクラーレンF1 GTR」への、公道を走れる限界まで攻めたオマージュだったのに対し、「S1」はより優雅で扱いやすく、長距離ドライブでも一体感をたっぷり味わえるよう再構築されている。つまりこれこそオリジナルの「F1」のオマージュだ。

外装パネルはすべて新設計。「S1 LM」が備えていた固定式の大型リア・ウイング、深いフロント・スプリッター、サイド・スカートは姿を消し、代わりに車速や制動状況に応じて可変するアクティブ・リア・エアロを新採用した。

過度なダウンフォースよりもグリップと乗り味のバランスを優先させた結果、クラシックなプロポーションを感じさせるクリーンなシルエットに落ち着いている。

心臓部は専用開発の4.2リットル自然吸気V12。英コスワース製で、最高出力は690ps/12100rpm! シリコンカーバイド・コーティングの軽量ピストン、チタン製バルブ、チタン製コンロッド、ドライサンプ潤滑など、レース由来の技術を惜しみなく投入しながらも、2500rpmから最大トルクの8割を発揮し、7000rpm付近では約500Nmを確保するなど、扱いやすさを重視したセッティングだ。

組み合わされるのは6段マニュアルで、標準でクルージング向けの6速(ツーリング・ギア)を備える。ギア・ケーブルの取り回しを見直したことで、ライフルのボルト・アクションのような小気味よいフィールを実現したという。

サスペンションは「S1 LM」譲りの軽量アーキテクチャーとワイドなタイヤをそのまま継承しつつ、車高を10mm引き上げ、ダンパーの設定を乗り心地を重視した背ティングへと変更。ステアリングの精度や俊敏さ、フィードバックはそのままに、快適性を底上げしている。
軽量化への執着もあいかわらずで、超軽量カーボン・ファイバー製ボディ・パネルや軽量サスペンション・パーツを投入。より豪華な内装や強化されたサウンド・システム、追加の遮音対策を施しながらも、目標重量は「T.50」を下回るという。

3シーターのキャビンはプレミアム・レザーやビスポーク・ファブリックを用いて、より上質に仕上げられ、パワー・ステアリングのアシスト量も走行シーンに応じて選択可能。

ヘッドライトまわりの意匠や、1992年5月のモナコGPで披露された「F1」のショー・カーを思わせるロー・ビームの配置、跳ね上げ式の新型ドアなど、細部にもこだわりが光る。エンジン・ベイには、研磨仕上げのインコネル製エグゾーストと24金メッキのヒート・シールドも装備。

生産はわずか64台。1台ごとにオーナーが仕様を作り込むフル・ビスポーク方式で、価格は非公表。ゴードン・マーレー氏は「S1 LM」の過激な空力パーツを取り払うことで、このデザインが持つ美しさと純粋さを改めて示したかった、と説明。ロサンゼルスからモントレーまで海岸線を心地よく流しつつ、峠道ではエンジンとギア・シフトの快感をしっかり味わえる、より上質で使い勝手のいい1台に仕上げた、と語った。
GMSVは「マクラーレンF1」や「T.50」を生み出したゴードン・マーレー・グループの特別車両部門で、2025年の「S1 LM」と「ル・マンGTR」でスタートし、「S1」はその第3弾となる。自然吸気V12エンジンとマニュアル・ギアボックスにこだわり続ける彼らの哲学を、よりツーリング志向となる1台へ落とし込んだ「S1」は、間違いなく「マクラーレンF1」後継車といえるのではないだろうか。

気になる価格だが、公式には非公表。先代の「S1 LM」(全世界5台)も価格は明らかにされず、2025年11月にラスベガスで行われたオークションでは1号車が2063万ドル(約32億円)という新車オークション史上最高額で落札された。ただしこれはチャリティー色の強い特別枠での取引であり、通常の価格とは性質が異なるが……。とはいえ、すでに64台すべてが完売とも報じられている。
文=上田純一郎 写真=ゴードン・マーレー・スペシャル・ビークルズ
(ENGINE Webオリジナル)