「何を血迷ってこんなモデルを?」と、当初はそんな声も聞かれたものの、そうした"旧来のポルシェファン"の戸惑いをよそに、誕生後たちまち世界でスーパーヒットを飛ばし、あまつさえ今やこのメーカーの"稼ぎ頭"にまで登りつめたのがカイエン。それが「真に『ポルシェ』の名に恥じない存在」であることを、フルチェンジしたばかりの最新Sグレードで改めて実感させられた。まず素晴らしいのは、その快適性。実は、同クラス中でも「圧倒的に快適性に優れる」のが、昨今のポルシェ車に共通する特徴。
最新のカイエンでも、イベント会場脇の"極悪継ぎ目"が連続する西湘バイパス上をタタン、タタンと軽快なスキップ音を刻みながら快走するそのフットワークに、そんな思いを新たにさせられた。最高440psを生み出す心臓が8段ステップATとの組み合わせの末に生み出す、滑らかでありながら強靭そのものの加速のポテンシャルも、もちろん独自の走りの魅力に磨きを掛ける。それは、上質にして強力な走りをSUVのパッケージングの中に具現させた、実は何とも"ポルシェらしい"仕上がりの持ち主なのである。
ポルシェといえば911だけれど、2002年にSUVのカイエンがデビューした時、試乗会に参加した。911をそのまま大きくして、顔もお尻もそのままのイメージ。大きいけれど、なんとなく可愛いケロヨンみたいで。しかし、走り出すとスゴかった。特に高速道路でのパフォーマンスが素晴らしく260km/hもの高速で何事もないかのようにコーナリングをこなす。カイエンはSUVでありながらスポーツカーだった。あれから年月が経ったけれども、最新のカイエンSに乗るとあの時のテイストはそのままに、メカニズムは大きく進化している。
911の進化に比例したデザインもしかり。エンジンの搭載位置、駆動方式は違えども、ご本尊の911がすべての根幹にあり、そこは外さない。ステアリングを切り込めば俊敏に反応する。オンロードでのハンドリングはスポーツカーそのもの。それでいてエアサスをハイ・レベルに設定すれば、最低地上高は245㎜にも達する。本格的なオフロード性能も兼ね備えるオール・ラウンダーだ。
〔読者コメント〕
●実用性のあるクルマながら、走り出すとさすがポルシェと感じさせる。(大屋 建さん)
●やはりポルシェ、と思わせるSUV。(一木太郎さん)
●ボディ・サイズの大きいクルマでありながら、加速も非常にスムーズで、ハンドリングも乱れが少ない。(羽立泰久さん)
●ほかのSUVよりも完成度の高さはピカイチ。(川上 肇さん)
●パイロン・スラロームでクルマの動きが良かった。(安藤研史さん)
●4WS装着とは知らずに回頭性の良さにビックリ! 理由を知ってポルシェにも4WSが! という事実に再度ビックリ。「ポルシェは911に限る」と思っていましたが、カイエンの魅力を知りました。内装にも「ドキッ」とさせられました。(池田達哉さん)
●完全無欠のスーパーマシン。(熊崎修平さん)
●初代カイエンに乗っていたが、GTカーに変身した感じ。十分な速さとSUVとは思えないコーナリングに驚いた。(西村明高さん)
言わずと知れた、スポーツカーとSUVをクロスオーバーした"サーキットも走れるSUV"の元祖的存在。Sはベース・グレードに次ぐスポーティなモデル。3ℓV6DOHC24バルブ・ターボは、最高出力=440ps/5700-6700rpm、最大トルク=56.1kgm/1800-5500rpmを発揮。8段ATを介して4輪を駆動する。レヴリミットは6800回転。0-100㎞/h加速は5.2秒で、最高速度は265㎞/hだ。全長×全幅×全高=4918×2194×1696㎜。ホイールベース=2895㎜。車両重量=2020㎏。車両価格=1288万円。
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写真=神村聖(メイン)/茂呂幸正(サブ)
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