バスケットボールの日本代表がワールドカップ(W杯)出場を決めた。2006年の日本大会以来で、自力の予選突破は21年ぶりだ。予選はホーム&アウェイ方式による15ヵ月の長丁場。フリオ・ラマスヘッドコーチが就任して日の浅かった1次予選は、いきなり4連敗と大苦戦を強いられた。転機は昨年6月29日のオーストラリア戦だ。日本はニック・ファジーと八村塁の新戦力が起爆剤となり、世界ランク10位の格上(日本は48位)を79—78で退けた。ファジーカスはアメリカ出身で、7年前から川崎でプレーしている。驚異的なシュート技術を持つ210㎝のNBA経験者が、直前に日本国籍を取得していた。
もう一人の八村はベナン出身の父を持ち、204㎝、110㎏と体格に恵まれている。走れて飛べて当たれるアスリートで、今年6月のNBAドラフトで指名が確実視される世界的な逸材だ。そして3枚目の切り札が渡邊雄太だ。彼はNBA挑戦を優先していたが、昨年7月にメンフィス・グリズリーズと契約。史上2人目の日本人NBAプレイヤーとなっていた。彼はファジーカスが負傷欠場した9月の2次予選2試合で日本を引っ張った。
その後4試合は八村、渡邊が参加できなかったものの、チーム全体の守りはより堅固に。2次予選では日本が6試合中5試合で相手を70点以下に抑え、8連勝で予選を締めた。2016年のBリーグ発足は間違いなくチーム強化の後押しになったが、そこに加えて国際化の好影響も見逃せない。日本の司令塔・富樫勇樹はアメリカで高校生活を送り、英語が堪能だ。NBA経験が長い佐藤晃一コーチも選手の身体作りを支えている。八村以外にもシェーファーアヴィ幸樹(A東京)、田中力(IMGアカデミー)など外国出身の父を持つ有望株は複数いる。
またテニスの大坂なおみのような「アメリカ育ちの日本人」も、協会が発掘を進めている。日本政府は1985年まで「母が日本人/父は外国人」というケースの国籍取得を認めていなかった。「父系血統主義」の原則があったからだ。今は日本人の母から出生した子なら自動的に日本国籍を持てる。実はそのような法改正も代表強化の遠因だ。本大会は8月31日に中国で開幕する。グループリーグでは断トツの優勝候補・アメリカとの対戦も決まった。勝利は容易でないが、ドリームチームと真剣勝負ができる幸運を喜びたい。
文=大島和人(球技ライター)
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