カーボン・モノコックを用いるがゆえにルーフを取り去ってもボディ剛性が低下せず、ボディ補強が不要で重量増が最小限に抑えられるために事実上ハンドリングが悪化しないマクラーレンのコンバーティブル。その最新作"720Sスパイダー"にアリゾナの一般道で試乗した。まずはルーフを閉じて走り出す。
快適な乗り心地や正確なハンドリングはクーペ版の720Sそのまま。ジェット機のような高周波を響かせながらターボ・エンジンとは思えない鋭いレスポンスを発揮する点もクーペと変わらない。30分ほど走ったところでルーフを開けると、世界が一変した。
これまであまり意識してこなかったが、720Sは最高の技術をふんだんに用いたスーパー・スポーツカー。オープンカーとしてのんびり流すと、そのぜいたくさが全身に染み渡るようにして感じられるのだ。コックピットに優しく流れ込むアリゾナのきりりっと引き締まった朝の空気も、720Sと過ごすひとときをより尊いものに変えてくれるような気がした。
ルーフを開かずとも、キャビン後方のリア・ウインドウを下げるだけでもクーペと違う世界観を味わえる。軽く澄んだ音色のエグゾースト・ノートがストレートに耳に届き、緻密に組まれたであろうエンジンの精度感を存分に味わえるのだ。
サンルーフをチルト・アップしたときのような、ほどよい換気性が得られるのも魅力の1つ。オープンとクローズだけでない、3つめの楽しみが用意されているのもマクラーレン・スパイダーの魅力といえるだろう。
文=大谷 達也(ENGINE編集部)
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