細くしなやかで喉越しがよく、そば自体の甘みがほのかに広がる── そんなそばで食通を魅了してきた石井仁氏のそば 店「仁べえ荘」が、今春、陶芸の里・笠間にオープンした。古い旅館を改装した和洋折衷の店内は、わずか14席。ゆったりと配置された席に着けば、のんびりした空気と窓越しの緑に旅情を覚える。
石臼自家製粉の十割そばは、かつて石井氏がミシュランの1ツ星を獲得した東銀座「古拙」や人形町「仁行」のそばを彷彿とさせるもの。コシのある食感を楽しめるように加水率を5〜6割まで高めて打つことから「水腰そば」と呼ばれる石井氏独特のそばは、今も健在だ。東京時代との違いは、そばの量が1人前120g から150gに増えたことと、つゆの配合。つゆは東京では枯節だけ使用していたが、現在は枯節にソーダ節、サバ節もブレンドし、さりげなくまろやかになっている。
夜のメニューは懐石仕立ての「おまかせそば膳」(要予約)のみだが、昼は単品もあり、地元の新鮮な卵を使った「出し巻玉子」は、一口で頰が緩むやさしい味わい。カリッとしたそばの実の食感が小気味良い「そば味噌」は昔から人気の一品だ。

●仁べえ荘 / 茨城県笠間市下市毛271-1
TEL.0296-71-7660
休木曜ほか不定休あり
週末になると都内からの予約客で賑わう「惠土」は、東京・立川の名店「無庵」で修業した惠土靖氏が、海と山に囲まれ た葉山の風土に惹かれ、2006年に古民家を改装して開いた店だ。
メニューは昼夜共に月替わりのそば懐石1種類で、先付、冷やかけそば、八寸、そばがき、天ぷら、そば、デザートの7品構成。地元の旬の食材を用いて彩り豊かに仕立てた先付や八寸は、甘・辛・酸の味覚の変化に富み、野趣と洗練が絶妙なバランスだ。
そば粉と葛粉を練った「そば豆腐」など、そばを使った創作料理に出合えるのも、この店の楽しみ。八寸の中に含まれる「そば棒寿司」のそばは、 酢飯のように甘酢で味付けされている。手打ちの九割そばは、有機栽培のそばの実を殻ごと石臼で丁寧に挽き、細めに切ったもの。
エッジの立ったそばを濃いめのつゆにつけて味わえば、芳しいそばの香りが鼻腔に抜けて、そばを手繰る手が止まらなくなる。昭和初期に建てられた古民家で庭の景色を愛でつつ、心と体にやさしい美食を楽しみたい。
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