先日めでたく30万kmを達成したENGINEの長期リポート車、1992年型メルセデス・ベンツ300TEを約11年前に購入したお店に、ものすごい出物があると聞きつけた探検隊一行。多摩川のほど近くに移転したそのお店に並んでいたのは、まるでリポート車と生き別れの双子の兄弟のような見た目も中身もそっくりのワゴンと、ほとんど新車のようなクーペだった。
ウエダ 今月の弊誌巻頭特集は最新ドイツ車事情をお届けするわけですが、我々は中古車ネタでやっている手前、最新も何もありませんねぇ。
ワタナベ 最新のドイツ車といえば 電動化車両ばっかりになっちゃうんじゃないの?こないだのフランクフルト・ショーもEVだらけだったよ。
アライ それにしてもフランクフルトの斜陽感は凄かったですね。ホール3つくらい閉めちゃってたし。
ワタナベ 東京もデトロイトもそうだけど、もはやクルマと姉ちゃん並べるだけのモーターショーって、先進国では成り立たなくなってきてる。
アライ そういえばコンパニオン的な方って、全然見なかったですね。
ワタナベ 今年の東京モーターショーは、とにかくモビリティにまつわるコンテンツをひっかき集めてるみたいだから、今までとは違う雰囲気が出るんじゃないかな。
ウエダ グランツーリスモを使ったeスポーツとか、ドローン・レースとかも開催されると聞きました。
アライ 斜陽先進国なりに一周回った解答が現れるといいですね。
ウエダ まぁ、そんなこんなで最新のドイツ車を紹介するわけにはいかない我々としては、何かいいネタはないかと思いまして、新同のドイツ車を探してきました。
ワタナベ なにそれ、トンチ効かせてるつもりなの?
アライ お、これ? C124じゃないの。
ワタナベ 隣に見たことがあるようなS124もいるんだけど。
ウエダ 目ざといですねぇ。ここa rjさんは遡ること約11年前、編集部の長期リポート車を購入したお店なんです。オースチン・ローバー云々ってボケはいりませんからね。
ワタナベ うぐぐ......。
アライ 導入時のテーマは「124 は永久自動車か?」ということで維持検証し続けてきたんですが、先日遂に走行30万kmを突破しまして、ツェッチェの直筆サイン入りの認定書がAGから届いたんですよ。
ワタナベ へぇー。で、サイン付きで買い取ってもらったんだ。
アライ 購入者にはワイルドな方のアライの生歌付きで納車するとか。
ウエダ 違いますよ。たまたま全く同じ色で同じ仕様の個体がお店に入荷したんですってば。
ワタナベ なーんだ、そうなのね。でもこの仕様って、ザ・S124って感じだよね。ミッドナイト・ブルーのサッコ布シート8穴。当時は日本市場のワゴンもスバルとボルボとビュイックくらいだったし、このクルマはなんか別格感あったよね。
ウエダ 中古車市場ではエアバッグ付のステアリングはいまいち人気ないんですってね。なんでもイナーシャや握り感的には前の方がいいとい人もいるとか。
アライ この湯戻しした麩みたいにぶにゅぶにゅした握りがいいんだ。わかんないもんだねぇ。
ワタナベ もはや124はほぼほぼ求道的な対象になってるから、原点こそ頂点という人もいるだろうね。MB-TEX最強みたいな感じの。
アライ でも、街中で走ってる個体をみると、もう他に行くとこないんだろうなぁというおじさんおばさんも見掛けますよ。
ワタナベ そうそう、そういう人が多い。やっぱ124が体に染み込んじゃうと、サイズ感や取り回しやすさに始まって、開閉部の精度感とか、触れ伝わるものの具詰まり感とか、スピード上げるとクルマがきゅーっと小さくなっていくかのようなフォーカス感とか、もう他じゃどうにも叶えようがないものが多いから、離られないんだろうと思うよ。
ウエダ で、ちなみに今日のお題はS124ではなくてC124の方です。
ワタナベ 124後期といえばブルブラ。呆れるほど売れたよね。
ウエダ ブルー・ブラックですか。
アライ でもこの色、それこそ一周回った感がありますね。今見ると新鮮だしデザインにもよく似合ってる。
ワタナベ でもこのクルマ、妙に綺麗だよね。モール類とかバンパー回りの樹脂ものがパリッとしてる。
ウエダ それもそのはず、メーターをご覧ください。
アライ オレンジのニードルも全然色飛びしてないし。
ワタナベ ん、お、え、ええーっ!アライくん距離計距離計。
アライ え、なになに......げげーっ、9950km。まさかの4桁物件ですか。
ウエダ だから言ったでしょ、新同のドイツ車って。しかも泣く子も黙る124系で希少なクーペですよ。
ワタナベ ......今年、これを超えるウエダくんのドヤ顔は多分ないね。
アライ しかしどうしたのこれ。バーン・ファウンドじゃないけど、どっかで寝てたヤツかな。
ウエダ お店の人に聞いてみたんですが、ワンオーナーではないものの、とあるコレクターさんのお宅に長く収まっていたそうです。
ワタナベ でも、不動状態ではなかったみたい......というのは、車検もあるしドラレコもついてるんだよね。動かすまでが大変っていう物件ではないから、ここから細かなリフレッシュを加えることになるんだろうけど、エンジン、トランスミッションは温存されてるし、お約束のハーネスも取り替えてあるし、気になったら足まわりやゴムものをどうするかみたいな話になるんだろうね。
アライ 編集部のクルマも30万kmメンテし続けてきたんで、ちょっと分かるところがあるんですが、やっぱり永久自動車といえど所有する人の愛情に100%依存するんですよ。
ウエダ たとえ戻るとはいえ、たとえば20万kmのクルマに50万円を投じてリフレッシュするのって、冷静に考えると相当覚悟がいりますよ。普通は自己嫌悪の堂々巡りです。
ワタナベ だよねえ。それはすごくよく分かる。でも元ネタが4桁物件だと掛け甲斐もあるよね。戻す意欲もメラメラ湧いてくるというか。
アライ あと30年生きるとしても全然保つし、もう一生もんですよね。
ワタナベ 皆もすなる124といふものを、我もしてみむとてするなり ......という人には最適な個体。だけど生半可な気持ちでは手を出せないバリモンオーラもあるから、添い遂げる覚悟のある人にいって欲しいね。
アライ でも、最初はそう思ってても、ひょんなことからあっさり別れちゃったりするんですよね......。
ワタナベ え、それ、どこの江戸っ子の話なの?
■arj 東京都世 田谷区玉堤1-20-7 arj世田谷1F
TEL : 03-3704-7177
HP : http://www.arjapan.co.jp
話す人=渡辺敏史+新井一樹(ENGINE編集部)+上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=阿部昌也
(ENGINE2019年11月号掲載)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
advertisement
PR | 2024.11.21
LIFESTYLE
冬のオープンエアのお供にするなら、小ぶりショルダー! エティアムか…
2024.11.21
CARS
日本市場のためだけに4台が特別に製作されたマセラティMC20チェロ…
PR | 2024.11.06
WATCHES
移ろいゆく時の美しさがここにある! ザ・シチズン の新作は、土佐和…
2024.10.25
LIFESTYLE
LANCIA DELTA HF INTEGRALE × ONITS…
2024.11.19
WATCHES
エンジン時計委員、菅原茂のイチオシ 世界限定1200本! グランド…
2024.11.01
CARS
これは間違いなく史上最速のウルスだ! プラグイン・ハイブリッドのウ…
advertisement
2024.11.16
こんなの、もう出てこない トヨタ・ランドクルーザー70とマツダ2 自動車評論家の渡辺敏史が推すのは日本市場ならではの、ディーゼル搭載実用車だ!
2024.11.15
自動車評論家の国沢光宏が買ったアガリのクルマ! 内燃エンジンのスポーツカーと泥んこOKの軽自動車、これは最高の組み合わせです!
2024.11.15
GR86の2倍以上の高出力 BMW M2が一部改良 3.0リッター直6ツインターボの出力をさらにアップ
2024.11.16
ニスモはメーカーによる抽選販売 日産フェアレディZが受注を再開するとともに2025年モデルを発表
2024.11.16
【詳細解説】320iセダンと420iクーペがドライバーズカーである理由を、自動車評論家の菰田潔が語る なぜBMWは運転が楽しいクルマの大定番なのか?