最新版の320iエクスクルーシブと420iクーペMスポーツに菰田さんが試乗!
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「駆けぬける歓び」という有名なスローガンを掲げるBMW。その走りの良さは、どんなクルマづくりによって実現されているのだろうか。2台のBMW、320iと420iに乗って、自動車評論家の菰田潔がなぜBMWがドライバーズカーと言われるのかを紐解いた。
フツーの乗用車以上、スポーツカー未満BMWの代名詞ともいえる4ドアセダンの3シリーズ320i、同じプラットフォームにクーペボディを纏う4シリーズの420iを取り上げ、「フツーの乗用車以上、スポーツカー未満のドライバーズ・カー」という定義の中で、この2台がどの位置にいるのかを探ってみよう。

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そもそも「駆けぬける歓び」を標榜するBMWだから、その時点で普通の乗用車以上の走りが期待できる。その源泉はクルマ創りにある。BMWは基本、フロント・エンジンで後輪を駆動する。走る、曲がる、止まる中の走る(加速)パートでは、前輪駆動に比べて後輪駆動が有利だ。加速では後輪に荷重が移る。鋭い加速ほど荷重移動は大きい。タイヤは荷重が大きくなるとある程度まではグリップが増えるから加速に有利になるというわけだ。2輪駆動ではこと足りないくらいのハイパワー車では4輪駆動にしているが、並のエンジンの範囲ではFRを踏襲している。
もう一つ、タイヤに掛かる荷重に関係するのは前後の重量バランスだ。前軸を前方に置くレイアウトで前後の重量バランスを均等にしようとしている。320i、420iでも前800kg+後770kgで、前後バランスは51対49になっている。実はBMWは前後だけでなく、左右も均等になるように作っている。そのためにも縦置きエンジンが重要になる。タイヤに掛かる荷重が均等になるということは重心がホイールベースの真ん中になるということで、コーナリングするときに遠心力が前後のタイヤに均等に掛かる。タイヤに掛かる荷重が増えればグリップも増すと説明したが、実はグリップ効率は悪くなるので4輪均等が理想なのだ。ブレーキング時には4輪がうまく働くことが重要。ブレーキでも後ろに荷重が残っていることが有利になる。ブレーキングによって前輪に荷重が移り後輪荷重が軽くなると、イメージとしては前輪だけの制動になり効率が悪い。リヤ・エンジンのポルシェ911はブレーキが効くといわれるが、ブレーキの性能が良いとかいう話よりも、前40:後60という荷重配分が有利なのだ。前に荷重が移っても後輪の接地力は高いまま維持できる。スーパー・スポーツカーにRRやミドシップが多いのは、駆動と制動のポテンシャルが高いからだ。その意味では今回の2台はスポーツカー未満という位置付けになる。
こうして「駆けぬける歓び」を追求するために重量配分を気にしているBMWだが、初期はそうではなかった。第2世代の3シリーズ(E30)時代にBMWドライビング・エクスペリエンスのインストラクターになったが、当時は雪道を走るときにはトランクに30kgほどの荷物を積むことを推奨するように指示された。荷物を載せて重量配分を合わせたわけだ。しかし第3世代の3シリーズ(E36)ではホイールベースを伸ばして前後の荷重配分を50:50に近づけ、それ以降は3シリーズ以上のモデルも含めて継続している。BMWの50:50は1990年代から始まったのだ。
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