2018年のパリ・モーターショーで発表されたEQCがついに日本にやってきた。EQCはメルセデスが3年前に立ち上げた電動モデル専用のサブ・ブランド、EQ初の電動専用モデルで、これからメルセデスが電動化を推し進める上で旗印となる大事なクルマだ。
〝C〟はEQシリ ーズの中でCクラス・サイズのモデルということを意味している。ちなみに、GLCと比べるとEQCの方が全長が10cmほど長いものの、それ以外はほぼ同サイズとなっている。
すでにモーターショーの会場など屋内では何度も見ていたが、太陽の下で眺めるのは今回が初めて。フォルムはメルセデスのSUVモデルに似ているが、ヘッドライトをUの字でつないだガーニッシュが細い横桟のグリルを囲むように配されるEQ独自のフロント・マスクにより、ひと目見ただけで、ほかのメルセデスとは違うものであることが認識できる。
街中を走っているときにけっこう「あれ、もしかしてEQC?」という目線を何度か感じたのだが、EQCだと気付かせたのはこのフロントのデザインに因るところが大きいだろう。そういった意味では、メルセデスらしさを残しつつも独自性と差別化が上手に図られていると言っていい。
ドアを開けると2つの大きな液晶画面が目を惹くいつものメルセデスのインパネが見える。ただし、良く観察すると、インパネの上部が斜めにカットされていたり、エアコン吹き出し口のフラップがこれまで見たことのない凝った形状になっていたりなど、EQC独自の意匠があちらこちらにけっこう見られる。
総じて普通のメルセデスと比べると色使いなども含めて開放感のある明るい雰囲気だ。ヒップ・ポイントは同じサイズのGLCに近いが、床下に電池を収めているからなのか床面が少しだけ高く、GLCより若干脚を投げだしたようなポジションとなる。
インパネに備わるスターター・ボタンを押す。いつもならエンジンがブルンと掛かるところだが、EQCはかすかに電子音が聞こえるだけ。
ふとメーター・パネルの中央を見ると走行可能距離318kmという表示が出ている。電池の残量は97%。EQCは床下に敷き詰めた、総重量652kgのリチウムイオン電池により最大航続距離は400kmとアナウンスされているが、どうやら現在クルマが記録している走行パターンだとその8割程度しか走ることができないらしい。
しかも、この数字のとおりにマイレッジを刻めるとは限らないから、その辺りを考えながら走る必要があるかもしれない。
アクセレレーターに足を載せてスタート。微速でも過敏な感じやゴムひものように間延びした印象もなく、 とても扱いやすい。そのまま街の中を流す。
エンジン音がないうえに、 ガソリン車よりも強固な遮音が施されているのか、フロントから聞こえ てくるヒューンという電子音以外は ほぼ無音。こんな状況はガソリン車では味わえない。EQCが一番映える瞬間と言っていいだろう。
首都高速道路に入り、郊外を目指す。入口でアクセレレーターをちょっと強めに踏んでみる。約2.5tの車重はけっして軽くないが、一瞬にして周りを置き去りにする鋭い加速をみせる。
60km/hくらいになるとロードノイズが徐々に聞こえてくるようになり、街中で味わった無音感は残念ながらなくなってしまう。もちろん、それでもガソリン車と比べれば静かなことに変わりはない。 乗り心地も良好。道路の継ぎ目段差も衝撃を室内まで伝えないようにう まく処理している。
ガソリン車のプラットフォームを電動モデル用に改良したEQCは空車時でもリア・ヘヴィな重量配分を持つためか、リアのみに空気バネを使用しているものの、とくに違和感は覚えない。
そのまま高速道路に入り、前後が空いたのを見計らってアクセレレーターを床まで踏みつけてみる。それと同時に鋭い加速Gが体を襲う。
前後2つのモーターを合わせた総合出力は408ps/78kgm。このパワーを4輪を介して路面に伝える。ちなみに最大トルクはAMG・GT・Rをも凌ぐ数値だ。0-100km/h加 速は5.1秒というが、それ以上の速さを感じる。体感的には3秒台のスーパースポーツに近い。
もちろん、静かに巡航しているときの振る舞いは高級サルーンのようにジェントル。 静かで、クルマもフラットなまま、路面を滑るように前に進んでいく。
高速を降りて山道へ。唯一EQC に弱点があるとすればこのステージだ。652kgの電池が床下にあるため低重心とはいうものの、2.5tの重さには勝てず、身のこなしがとても重く、すぐにクルマが外へ外へと逃げてしまう。
このクルマで山道を楽しもうと思う人はいないかもしれないが、いつものペースで走っているとヒヤッとするかもしれない。
再び同じコースを辿り、編集部に戻った時の走行距離は203km。でもって、メーターに表示されている可能走行距離は100km。スタート時は318kmだったからその差は5%程度。
けっして流れに乗るだけの走行ではなかったことを考えると、メ走行可能距離の数値はかなり信頼 度が高いと言えるだろう。
山道がちょっと苦手だが、そのほかのステージではガソリン車何するものぞという走りを見せてくれた。むしろEQCがガソリン車を凌ぐ場面も多々あり、とくに50km/hくらいまでの無音感はそれだけでEQCを買ってしまいそうなほど魅力的だった。
価格は1000万円を超えるが、以前ラインナップされていたGLCのプラグイン・ハイブリッドが900万円以上だったことを考えると、一概に高額だとは言えないだろう。
EQCを皮切りに電動化戦略を推し進めるメルセデス。まずは最高のスタートを切ったのは間違いない。
EQC400 4マチック(欧州参考値)
文=新井一樹(ENGINE編集部) 写真=郡 大二郎
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
advertisement
PR | 2024.11.21
LIFESTYLE
冬のオープンエアのお供にするなら、小ぶりショルダー! エティアムか…
2024.11.21
CARS
日本市場のためだけに4台が特別に製作されたマセラティMC20チェロ…
PR | 2024.11.06
WATCHES
移ろいゆく時の美しさがここにある! ザ・シチズン の新作は、土佐和…
2024.10.25
LIFESTYLE
LANCIA DELTA HF INTEGRALE × ONITS…
2024.11.19
WATCHES
エンジン時計委員、菅原茂のイチオシ 世界限定1200本! グランド…
2024.11.01
CARS
これは間違いなく史上最速のウルスだ! プラグイン・ハイブリッドのウ…
advertisement
advertisement
2024.11.16
こんなの、もう出てこない トヨタ・ランドクルーザー70とマツダ2 自動車評論家の渡辺敏史が推すのは日本市場ならではの、ディーゼル搭載実用車だ!
2024.11.15
自動車評論家の国沢光宏が買ったアガリのクルマ! 内燃エンジンのスポーツカーと泥んこOKの軽自動車、これは最高の組み合わせです!
2024.11.15
GR86の2倍以上の高出力 BMW M2が一部改良 3.0リッター直6ツインターボの出力をさらにアップ
2024.11.16
ニスモはメーカーによる抽選販売 日産フェアレディZが受注を再開するとともに2025年モデルを発表
2024.11.16
【詳細解説】320iセダンと420iクーペがドライバーズカーである理由を、自動車評論家の菰田潔が語る なぜBMWは運転が楽しいクルマの大定番なのか?
advertisement
2024.11.21
LIFESTYLE
冬のオープンエアのお供にするなら、小ぶりショルダー! エティアムか…
2024.11.21
CARS
日本市場のためだけに4台が特別に製作されたマセラティMC20チェロ…
2024.11.06
WATCHES
移ろいゆく時の美しさがここにある! ザ・シチズン の新作は、土佐和…
2024.10.25
LIFESTYLE
LANCIA DELTA HF INTEGRALE × ONITS…
2024.11.19
WATCHES
エンジン時計委員、菅原茂のイチオシ 世界限定1200本! グランド…
2024.11.01
CARS
これは間違いなく史上最速のウルスだ! プラグイン・ハイブリッドのウ…
advertisement