第4世代をベースにしたケースに、文字盤はブラックオニキスを用い、インダイアルには月の隕石を採用する。ムーブメントは精度とパワーリザーブを向上し、高耐磁性も得た。手巻き。プラチナゴールド、ケース直径42㎜。税別638万円。12月発売予定。
22世紀ともなれば宇宙がいまより身近になっているに違いない。それは時間という概念にも大きな変化をもたらすと思う。つまり現在の時間はあくまでも地球上だけのものであり、それが宇宙という尺度に変わった時、初めて人類は万能の時間を手にすることができる。そんな時代、月面に立った人類が手にするのはやはりこの時計かもしれない。
1957年に誕生したスピードマスターの初代から第4世代の1968年まで搭載したキャリバー321を2年以上かけて再現した。この復活には、オリジナルの資料や情報を収集したが、ベースとなったレマニアの図面からの変更点も多く、現存する時計も経年変化で個体差が著しい。そこで採用されたのがすでに2017年のトリロジーで採用されたトモグラフィーの技術だ。
しかもデジタルスキャンの対象として選ばれたのは、1972年に人類最後の月面着陸をはたした宇宙飛行士ユージン・サーナンがつけた第3世代。かくして歴史は受け継がれたのだ。こうしたリバースエンジニアリングを用いれば、あらゆる過去の再現も夢ではない。しかしオメガの開発担当者はいう。「真実はどこにあるか。そのルールを作ること」そしてあの月に行ったという事実が未来に受け継がれる。

しばた・みつる
1962年東京生まれ。コピーライター、編集者を経てライターに。時計、クルマ、ファッションといった男性の趣味のジャンルを専門にする。愛用する空冷ポルシェやホンダCB400Fもすでにリバースエンジニアリングの対象になりつつある。
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