先月号で「クルマは機嫌を損ねると急に調子が悪くなることがある」と書いたのが、そのまま現実になってしまった。サーキット走行もバリバリこなして、「衰えるどころか、ますます盛んになっている印象」と書いた79号車のエンジンが、思わぬトラブルに見舞われたのだ。
ポルシェ特集の取材で最新のGT3RSらとともに箱根に赴いた時のこと。山上の駐車場に停めておいた79号車のエンジンを再始動したところ、左側のエグゾースト・パイプから白煙をモウモウと吹き上げた。その後、帰路でも紫がかった白煙がずっと出ていたと後続車の編集部員に教えられた。これは一大事とポルシェ・センターに電話して相談。その結果、即刻入院することになった次第である。
紫がかった白煙が出ているのだから、オイルが燃えているのだろう。左側からだけだから、マフラーは交差しているので、右側のシリンダーのどこかでオイル下がりか、上がりが起きているということになる。万が一、エンジンを下ろしてオーバーホールすることになると200万円以上はかかると脅されて帰り、ドキドキしながら点検の結果を待った。
翌日受け取ったメールによれば、「コンピューターにはフォルトのメモリーはなし。冷間時のみ白煙が確認できるが、暖気後は改善し、排ガスの臭いも特に問題がなくなる。スパークリング・プラグを外してシリンダー内をスコープで点検した結果、壁面に多少の擦れはあるものの、走行距離を考えれば経年並で異常とはいえない。プラグは焼けがキレイではないから交換した方がいい」と、おおよそこのような判定結果だった。
すなわち、白煙の原因は不明というわけで、喜んでいいのか悲しんでいいのか難しいところだが、今回の点検では、別の不具合が見つかった。ドライブベルトのプーリーのひとつに破損が発見されたのだ。ベルトにも一部破損があり、このままでは走行テストは困難で、まずはプーリーとベルト、それに加えてベルト交換をすると負担がかかりやすく故障事例が多いウォーターポンプ(+サーモスタット)も換えることになった。もちろん、プラグも。その上で走行テストを実施することになったのだ。
結論から言うと、高速道路も使った100km以上の走行テストでも、白煙の根本的な原因は解明できなかった。冷間時のみ少し白煙が出る現象が続いていたため、オイルシーリング剤を注入し、その上で長時間アイドリングと走行テストを実施したところ、白煙は出なくなったという。原因として考えられるのは、ピストンリングやバルブシールの経年劣化しかないが、6500円の添加剤を3本入れただけでとりあえずは収まったのだから、良しとするしかない。
とはいえ、修理代金は決して安くはなかった。1本4300円×6本のプラグ交換にドライブベルトの交換(工賃約7万円、プーリーも含む部品代約9万円)、そしてウォーターポンプの交換(工賃3万8千円、周辺のパーツも含む部品代約9万円)と積み重なり、合計38万5千円也!
もしオーバーホールになっていたら、長期テストは即刻終了せざるを得なかったかも知れない。それを思えばまだ良かったのだろうか……。
■79号車/ポルシェ911カレラ4S(996型)
PORSCHE 911 CARRERA 4S
購入価格(新車時) 340万円(1244万2500円)
導入時期 2017年4月
走行距離(購入後) 9万8682km(1万6297km)
文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=佐藤正勝
(ENGINE 2019年8月号)
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