韓国映画としてはじめて、カンヌ国際映画祭の最高賞(パルムドール)に輝いた『パラサイト 半地下の家族』が、世界中の賞レースを席捲している。その勢いはヨーロッパやアジアだけにとどまらず、全米の有力映画祭でも軒並み外国語映画賞を獲得。さらに2月10日に授賞式が行わた米アカデミー賞でも、作品賞、ポン・ジュノの監督賞、脚本賞、国際長編映画賞(旧・外国語映画賞)の4部門を獲得してしまったのだ。これまでオスカーとの相性がいまひとつだった韓国映画にとってはまさに前代未聞のこと。一体、どんな作品なのか?
外光もまともに射しこまない、“半地下”のみすぼらしい住居。この家で内職をしながら、日々の暮らしをつないでいるのがキム一家だ。楽天的な性格だけが取り柄の父ギテクは万年失業状態で、妻のチュンスクは、甲斐性なしの夫にツラく当たっている。一方、長男のギウは浪人生活が長く、美大を目指す娘のギジョンには予備校に通う金さえない。そんなある日、ギウのもとに裕福な女子高校生の家庭教師の話が舞い込む。さっそく面接に訪ねたのは、IT企業の社長一家、ドンイク家が暮らすモダンな豪邸。偽造した学生証で家庭教師の職を得たギウは、次に妹のギジョンを美術教師としてドンイク家に送りこむことに成功する。巧みな嘘でドンイク一家の信頼を手に入れた2人は、さらなる計画を実行に移していく。
これ以上の筋書きはあえて明かさないが、その後の展開は、大方の観客の予想をことごとく裏切るものである。異なる世界に暮らす2つの家族が思いもよらぬ形で交わったとき、物語は驚くべき方向に転がり始めていく……。
『殺人の追憶』や『グエムル‐漢江の怪物-』などの作品で知られるポン・ジュノ監督の手腕は、これまで以上に冴えている。先の読めないエンターテインメント作品として観客の心を鷲掴みにしながら、2つの対照的な家族の姿を通して、誰もがうっすらと感じていながら、それでいて目を背けてしまいたくなる、現代の格差社会の暗い現実を浮き彫りにしているのだ。ブラック・コメディの体裁をとった作品ではあるが、笑いながら見ているうちに背筋が寒くなる。オスカーの作品賞受賞も頷ける、現代の怪談のごとき衝撃作である。
TOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ梅田ほか全国ロードショー中
132分 配給:ビターズ・エンド
文=永野正雄(ENGINE編集部)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
advertisement
2024.05.06
LIFESTYLE
レコードバーって知ってますか? アナログ・レコードを聴きながらお酒…
2024.05.03
CARS
【エンジン音付き!】新型フェラーリ発表! その名も「12チリンドリ…
PR | 2024.05.07
WATCHES
「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」2024年春の新作 …
2024.04.25
LIFESTYLE
McLaren Artura Spider × LANVIN CO…
2024.05.05
LIFESTYLE
著名な陶芸家がかつて住んだ朽ちかけた古民家をリノベーション 古道具…
2024.05.01
CARS
なんてお洒落な! 新車同然(いや新車以上!)の190SLと280S…
advertisement
2024.05.10
「なるほどアメリカで売れるワケだ」 ホンダのフラッグシップ・セダン、新型アコードにモータージャーナリストの国沢光宏が試乗!
2024.05.09
普通の人がファミリーカーとしてBMWを買うならこっち! BMW X1のディーゼル・モデルにモータージャーナリストの森口将之が試乗! 贅が尽くされている
2024.05.12
「走ることが大好きなクルマ通からすれば、正真正銘の天国」 モータージャーナリストの国沢光宏がポルシェ911GT3 RSほか5台の輸入車に試乗!
2024.05.12
釣りも潜りも焚き火もやる人にはこの時計がおすすめ! タグ・ホイヤー アクアレーサー 300m防水でGMTは最強旅時計!
2024.05.08
メルセデス・ベンツはこの顔じゃないと! EQSが伝統の横基調グリルを採用するマイナーチェンジを実施