ウエダ いやぁ皆さん2019年もお世話になりました。なんかいいこと、ありましたか?
ワタナベ 別に……ねぇ。
アライ お、ナベさん時事ネタで返してるんですか?
ワタナベ ん、あぁそうか、"別に"といえば沢尻さんってわけね。
ウエダ そういうネタは週刊新潮が担当しますんで……。
ワタナベ よくもそんなことを。
アライ ああー、それもよく目にしたフレーズです。
ワタナベ あのウェンディーズの看板みたいな子、なんていったっけ?
ウエダ えーと、トゥンベリさんですか。そういう無意味な発言でわざわざ波風立てないでくださいよ。
アライ うちらみたいな闇営業組に波風なんか関係ないし。
ワタナベ 叱られる時はワンチームなんだから。
ウエダ ……ああもう、無理繰りに2019年縛りっぽい話にしなくてもいいですから。ほら着きましたよ、お目当てのお店に。
ワタナベ おおーっ壮観だなぁ、この上級国民な品揃えは。
アライ ベントレー×ベントレー×ベントレー。2019年でイギリスといえば渋野日向子さんですか。
ワタナベ ほほう。じゃあここにあるのが全英オープンってわけね。
ウエダ 2人で謎の掛け合いしないでくださいよ。そこで繋いで欲しいのは、2019年はベントレーが100周年だったってことです。
ワタナベ あ、なるほど。
ウエダ こちらのお店、フェデルタさんはベントレーやアストン・マーティン、フェラーリなどの英国、イタリア銘柄を中心にマニア心をくすぐる品揃えのお店です。
アライ なにげにあるフェラーリがtdfっていうのもすごいし。
ワタナベ で、今回見に来たのがこの初代アズールってわけ。品川35の貴重なナンバーを背負ってらっしゃる。
アライ すなわち品川管轄にずっといた個体ということですか。整備関係はこってりコーンズで。
ワタナベ ジャーマントップの状態なんかをみると、ヘタすると雨に濡れたこともなさそうな感じだね。
ウエダ さもありなんでしょう。この手のモデルはしっかり冷暗所で保管されるのが当然でしょうし。
アライ ところでこのアズールって、何年から作っていたんですか?
ウエダ 手許の資料だと1995年からで、2003年までの総生産台数は1300台余、日本には正規で50台前後が入ってきたと思われます。
ワタナベ アズールはコンチネンタルRをベースとしたオープン・モデルなわけだけど、その幌屋根開発と架装を担当したのがピニンファリーナで、ボディをイギリスからイタリアまで運んで施工してたんだよね。
アライ あれ?この時期そんなクルマ、他にもありましたよね。
ワタナベ キャデラックのアランテかな?あれはアズールより生産想定数が多いから、空輸でのロジスティクスを確保してたんだよ。結局失敗作になっちゃったけど。
ウエダ で、ピニンファリーナから帰ってきたボディをもとにコノリー製のレザーを使ってマリナー・パークウォード部門が仕上げると。
アライ この、後席側の湾曲した側面にウッドパネルを沿わせるような仕上げって、当時はけっこう大変だっただろうね。
ワタナベ しかも20年以上経っても反り返りもひび割れもなくピタッと収まってる。保管状況もさておき、素材と仕上げの良さが伴ってないとこうはいかないかも。
ウエダ この、インテグラルタイプのシートもピニンファリーナで制作したんですかね?
ワタナベ 多分そうだと思うよ。しかしこのレザーの質感、やばいね。コノリーが本気出して納めた革って、張りとしなやかさのバランス具合がもう別格だわ。
アライ さっき幌の開閉の様子をみてたんですけど、基本動作は現在のオープンカーと変わらないですね。トノカバーが開いてリア・ウインドウ側が上がって屋根が収まりきったら左右の幌骨の部分がパタパタと閉じると。全行程、30秒掛かってないくらいだと思うんですけど。
ワタナベ 大したマイコンもない時代に、これほど大づくりな幌屋根を油圧で動かしつつ、動きをその速度で同調させてたっていうのも、考えてみればすごい技術かもしれない。
ウエダ これ、エンジンは例の6.75ℓのV8ですよね。
ワタナベ そう。アズールが出る頃までは、パワーやトルクの数値は公表してなかった。例の逸話ね。
ウエダ 「必要にして充分」ですか。
ワタナベ 実際は380㎰くらいだったかと思うけど、確かにこの荘厳な吹け上がり感を知れば、数字なんか知らんでもいいやって感じになる。その感覚は現代のミュルザンヌにも見事に繋がってるよね。
アライ うーん、それにしてもあるんですねぇ、こういう世界が。
ワタナベ ピニンファリーナ&マリナー製のコノリー風呂。間違いなく再現不能でしょう、こういうのは。
話す人=渡辺敏史(まとめも)+新井一樹+上田純一郎(ともにENGINE編集部) 写真=阿部昌也
(ENGINE2020年2月号)
※紹介した中古車の価格、在庫については、取材時のものです。
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