スズキ これまでENGINEに登場してきた建築家で、ラテンのクルマに乗っている方々に集まっていただき、その魅力を語ってもらうことにしました。僕は連載の「マイカー&マイハウス」の企画・執筆の担当ということで、進行役を務めます。これまで40軒以上のお宅を紹介してきましたが、取材対象はスタイルのある家と、それに相応しいクルマに乗っている方々で、ライフスタイルを中心に記事にしています。掲載した家は、「今、業界で一番個性的」という専門家の声も聞かれるほどで、連載の注目度も高いようです。そうした家を手掛けている建築家の皆さんは、クルマにも相当な拘りがあると思うんですが。
駒田 他の3人はそうだろうけれど、僕は違う気がするな。
スズキ いえいえ、気付いていないのは本人だけです(笑)。さて、今日イタリア車を持ってきたのは、鹿嶌さんと中佐さん。フランス車は、駒田さんと廣部さん。廣部さんは、アルファ・ロメオ・スパイダーも持っていて、「アルファで来たい」とアピールしていましたが、この暑さです。クーラーのあるシトロエンC3で良かったですね。
廣部 本当にそうですね(笑)。
スズキ この暑さだと心配というので、中佐さんは昨晩から、会場のパーキングにクルマを停めています。
廣部 えっ、クーラー無いの?
中佐 いや、クーラーはあるので人間は涼しいんですが、オーバーヒートで止まってしまいそうで……。
スズキ ラテンのクルマらしい話ですね。では皆さんの車歴と、現在のクルマについて伺いましょう。まずは鹿嶌さん。イタリア車の2台持ちなので、どちらで登場するか悩んでましたね。「マイカー&マイハウス」(2019年10月号)にマセラティ・クアトロポルテが載るので、結局フィアット・パンダでの登場となりました。
鹿嶌 最初のクルマはピアッツァ・ネロです。ジウジアーロのデザインで、これで奥さんとデートしたものです。
塩澤 そう、当時クルマは、デートには欠かせないものだった。
鹿嶌 その次はアウディ80。美しいし、よくできているけれど、運転していて刺激が無くて。マセラティが好きでディーラーに行ったところ、欲しかった中古のシャマルではなく、最後の1台だったクアトロポルテの新車を薦められ、そちらにしました。仕事で使うので距離が延びて、走行距離は15万㎞になります。その後、普段の脚となる小さなクルマが欲しくて。2台目もイタリア車がいいなと思ったところ、パンダの良い出物があり、奥さんからもすぐにOKが出て、即決しました。
スズキ 一波乱起きるのを期待したのに、何も起きないのは、流石仲のいい鹿嶌家ですね。
2009年にやってきた、パンダ最終型の2003年製。走行距離は、11万キロを超える。足グルマとして手に入れたが、最近はテントなどの道具を積んでキャンプに行くことも。仕事、レジャーに大活躍。中央道走行中に右ドアミラーが折れ、奥様にミラーを手で持ってもらって走ったことも。そうした小さな欠陥を、ひとつひとつ直していくのは、ペットを育てる感じに似ているとか。もちろん上手く作動すると、クルマを褒めてあげることも。
そもそも叔父様がいすゞ勤務という事で、親戚宅には、ヒルマン、ベレル、ベレットGT、117クーペ、ジェミニなど、いすゞ車がずらり。セピア色になったピアッツァ・ネロの写真を撮影したのは、ドラマ「あぶない刑事」が放送される前の、横浜赤レンガ倉庫。
クアトロポルテ V6 エボルツィオーネは、フェラーリ傘下の最初のモデルで、マセラティ時代のクルマに、400か所も手が入っている。すこぶる調子は良いとか。もっともフェラーリ傘下になりあの有名な時計は付かなくなったが、日本のディーラーがサービスで付けてくれた。因みに愛犬の名前は、シャマルとカリフ。お行儀よくクルマにも乗れる。新車で特に欲しいクルマはないが、旧車ではルノー5ターボⅡに興味がある。
上の写真は、40人の子供たちが自然の環境で暮らす家の、筑波愛児園。こうした児童施設や病院、老人介護施設などの大規模な建物の他に、個人住宅も数多く手掛ける。
こちらはつい先ごろ竣工した、前橋市の「ロードサイドの家」。奥様で建築家の佐藤文さんと事務所を共同経営する。二人のイニシャルを取った事務所名は、K+Sアーキテクツに。
K+S アーキテクツ http://www5c.biglobe.ne.jp/~ksa/
スズキ 中佐さんは、アルファ・ロメオ75を2台乗り継いでますね。
中佐 75は、フィアットに買収される前の最後の量産車です。最初は直4エンジン・モデルの"ツインスパーク"で機嫌よく走っていました。ところがだんだんV6の評判が気になってきて。特にアルファSZ。その馬力を少し落としたエンジンを載せたのが75QVなんですが、中古車の情報サイトで、九州の久留米に1台あるのが分かり、翌日、家族にも事務所スタッフにも何も告げず新幹線に乗りました。
一同 えーーーー!
中佐 殆ど出てこないモデルなので。走り屋仕様に改造された真っ黒な1台でしたが、即決しました。計画では乗っていた75の直4エンジンだけをV6に載せ換えるつもりだったんですが、結局外側を換えたほうが早いというので、買ったV6の外装部品をツインスパークのモノに付け替えて白く全塗装したんです。
塩澤 なんとまぁ、それは相当マニアックですよ。
スズキ 次は、イタリア車とフランス車の両方を持っている廣部さん。
廣部 1974年型のスパイダーに24年乗っています。子供の頃から、ああした流線型のスポーツカーに興味があって。それがいざ買うとなると怖くて、パンダにしようかと1年くらい中古車屋巡りを繰り返しました。ところが気付くと、スパイダーばかり見ていて。そこで一級建築士に受かったらスパイダーと決め、勉強しました。その頃、母のクルマのシトロエンZXに乗っていましたが、便利でいいクルマでした。2台目のクルマとして、スパイダーと2台持ちでプリウスを考えたこともありましたが、どうしても愛せなくて(笑)、アルファ147にしました。殆ど壊れませんでしたよ。もっとも2台持ちが厳しい時、スパイダーを残し、4人乗れてクーラーのある147の方を手放しましたが。C3はデザインが気に入り、去年新車で買いました。
スズキ 駒田さんは、買ったクルマの多くがプジョーなんですね。
駒田 まず、最初に選んだ1台は中学生の時のプジョー604です。父親の仕事で、イギリスに家族で住んでいて。カンパニーカー制度があり、クルマが支給されるんですが、カタログから選んで父にお願いしたのが、ピニンファリーナがデザインした平たい形の高級車、604です。自分でクルマを買えるようになって、最初は雑誌を見て気になっていたプジョー205のカブリオレを買いました。ところが調子が悪くて。たぶん騙されたのでしょう。でも、クルマとして好きだったので、次は新車で同じクルマを買いました。1台目はMTですが、2台目はAT。どちらも赤なので、見た目は変わりません。
塩澤 エンスー度、全然低くないじゃないですか(笑)。
駒田 次は、プジョーの307でした。大好きな訳じゃないけど、形が綺麗で可愛くて。気張っていないし、ローカリティーを感じる。しかも出たばかりで街では見かけない。7、8年は乗りました。
スズキ 本当は大好きなのに好きじゃない風を装う駒田さんは、フランス的ですね。
駒田 その次のクルマを考えている時、僕の運転する307を追い抜いて行ったクルマが美しかったのを思い出し、調べてみたらプジョー3008でした。メルセデスBクラスも試乗しましたが、値段はほぼ同じで3008は運転して断然面白い。しかも特別な感じがなく日常的でありながら、お洒落な感じが良かった。
スズキ どんな風に使っていますか。
駒田 仕事が8、9割です。
スズキ 鹿嶌さんは病院や愛護施設など、大きくて堅そうなクライアントが多いですが、クアトロポルテで行っても、特に支障はないのでしょうか。
鹿嶌 ほとんどの場合、普通のセダンとしか思われていないようです。マセラティ・シャマルの仲間とのツーリングでも、最後尾を走っていると、一般車と思われて間に割り込まれたりしますから。パンダの方が建築現場では目立ちますよ(笑)。
中佐 仕事に使っているとは驚きです。アルファの前に2台のドイツ車に乗りましたが、途中で動かなくなったり、客先から戻れない経験をしました。ですから仕事では、事務所の近くに増えているカーシェアを利用しています。アルファ75はファミリー用なので、何かあった時は家族には諦めてもらってますが(笑)。
廣部 それはスパイダーより大変だ。スパイダーは、ホント、仕事に使えますよ。24年で、全く動かなくなったのは、たったの1度だけですから。
中佐 正直それはショックだなぁ。(廣部さん+仲佐さん編に続く)
プジョー307で銀座を運転している際、追い抜いて行ったクルマが美しかったのを思い出し、調べてみたらプジョー3008だった。メルセデスBクラスも試乗してみたが、値段はほぼ同じで、3008の方が運転して断然面白く、2011年に購入。プジョーは4台目。とりたてて熱心なプジョー党でもなければ、外車に固執している訳ではないが、日本車でさりげなくてお洒落なクルマが無いのが残念。走行距離は11万㎞。
実はオープンカー好きで、これまでオープンカーを3台所有。ポルシェ911を所有していた時期は、プジョー307との2台持ち。今のプジョー3008の次に欲しいクルマは、……考えたことがない。
賃貸用の物件で、駒田さんの事務所が設計だけでなく、管理運営もする「西葛西アパートメンツ」。右の棟は20年前に竣工し、左の棟は昨年オープン。1階には地元で評判のパン屋が入居し、2階は駒田さん達の事務所とコワーキングオフィスになっている。間のオープンスペースでマルシェが行われるなど、新しいコミュニティのあり方として注目されている。
個人住宅の「HAT」。道路から敷地が1m盛り上がっているが、ガレージを中央に作り、さらに下駄を履かせている。住人はクルマの屋根を見ないで済む上、道行く人から家の中が覗かれず、住人は高くなった視線で向いの公園がよく見える。上の写真の「西葛西アパートメンツ」も、ガレージをカッコよく見せるために天井高を190㎝に抑え、その分1階の地面を60㎝堀ってある。奥様で建築家の駒田由香さんと共同で事務所を運営。
駒田建築設計事務所 http://www.komada-archi.info/
話す人=鹿嶌信哉+駒田剛司+廣部剛司+中佐昭夫+ジョー スズキ(まとめも)+塩澤則浩(ENGINE編集部) 写真=柏田芳敬
(ENGINE 2019年10月号)
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