新型コロナウイルスの影響でスイスのジュネーブとバーゼルにおける恒例の新作時計見本市が相次いで中止に。しかし、それに先立って中東ドバイや東京で催された展示会からは2020年の新たな傾向も垣間見られた。アニバーサリーイヤーの復刻モデルなど、興味深い新作をピックアップしてお届けする。
新たに時計担当としてENGINE編集部に加わった前田。実はかねてから本誌の時計ご意見番である菅原とは親交があっただけに、すぐさま意気投合し、新生「ENGINE時計部」を結成! 時計部がお届けするその 第1弾として、1月にドバイで開催されたLVMHグループの新作発表 会と2月開催のJWC(ジャパン・ウォッチ・コレクション)から見えてきた今年のトレンドを分析してみた。
前田 昨年にセイコー、そしてカシオがバーゼルへの出展中止を発表したのには本当に驚かされました。
菅原 そんな中、独自開催の口火を切ったのが発表の場をジュネーブからドバイに移したLVMH。ブルガリ、ウブロ、ゼニスそれぞれのブランドの個性、持ち味が明確に打ち出された新作ばかりだったね。中でも印象的だったのがブランドの象徴ともいえるエル・プリメロをアップデートし続けているゼニス。
前田 復刻モデルが話題を集めていましたね。ブレスレットまでこだわっているのには感動しました。
菅原 まさに現代の技術だからこそ可能な精密な表現だね。オリジナルをスキャンしてるのかな。
前田 そういった意味では、セイコーのダイバーズもその印象が強いですよね。復刻モデルは毎年、完売必至なのもうなずけます。
菅原 あと、注目したいのは薄型化。グランドセイコーの新しいムーブメントもスペックはアップデートしつつ、やはり薄くなっている。ブルガリにおいては、毎年取り組んでいる多様な機能を複雑化しながら薄型化できるのは、やはり培った技術力の高さによるものだから。
前田 そんな薄型化もスポーティでありながら薄いというのが、ラグジュアリーの新しい傾向ですね。
菅原 そう! ラグジュアリーでスポーティという意味では、ウブロのようにケースと一体感のあるブレスレットを作るのは、トレンドだね。アップルウォッチがスイス時計全体の生産量を上回っている中、タグ・ホイヤーが時計メーカーとしてコネクテッドウォッチの先進性を打ち出しているあたりも面白い。これもひとつのラグスポの表現だと思うよ。
前田 そんな中、日本メーカーの新作は、各社ともにアニバーサリーモデルが多い印象でした。
菅原 以前だとどこも未来志向が強かったけれど、こうした復刻モデルが発表できるのは、過去と現代それ ぞれの遺産があるから。過去の良いものを未来に繋げている。今年は日 本メーカーにとって飛躍の年になるよ! 独自開催が増えることで、より各社の個性が強く発信されるはず。
前田 世界的には不透明なことも多いですけれど、今年も時計市場はアツいですね!
菅原 我々、新タッグも時計同様、 ホットに行くぞ~!!
左/菅原 茂(すがわら・しげる)
1954年生まれ。時計ジャーナリスト。1980年代にファッションやジュエリー雑誌でイタリアやフランスを取材。1990年代からは時計に専念し、スイス時計見本市取材は25年以上、専門誌や一般誌に多数の記事を発表。ENGINE本誌にも創刊号から20年にわたり寄稿するベテラン。
右/前田清輝(まえだ・せいき)1972年生まれ。ENGINE編集部シニア・エディター。ライフスタイル誌や時計専門誌の編集長、『メンズクラブ』『エスクァイアBBB日本版』の時計・クルマ担当を経て、今年2月より現職に。趣味は温泉巡りとルアーフィッシング。現在の愛車はメルセデスGLCクーペ。
(ENGINE2020年5月号)
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