ピアノは1709年にイタリアのバルトロメオ・クリストフォリによって発明され、徐々に音域・音量が拡大し、アクションなどの構造も改良されて現在のような形となった。150年余りの歳月を経て徐々に進化し、19世紀半ばに現在のグランドピアノとほぼ同じ楽器に到達したのである。
バッハやモーツァルトの時代にはチェンバロやクラヴィコード、オルガンなどが主体だったが、ベートーヴェンの時代になるとピアノが大きな変化を遂げ、ベートーヴェンは楽器に合わせて作曲技法を進化させていったといわれる。
現代のピアノも正式な名称はフォルテピアノであるが、現代のものと18世紀から19世紀前半以前のものを区別する際に、前者を“モダンピアノ”、後者を“フォルテピアノ”と呼ぶのが通例である。
フォルテピアノは革で覆われたハンマーを備え、チェンバロに近い細い弦が張られ、アクションは現代のピアノよりも軽いタッチで持ち上がる。それゆえ生まれ出る音は、実に優雅でかろやかで繊細。一度、このエレガントな音色にハマると、抜けられなくなる魔術的な魅力を備えている。
そのフォルテピアノとチェンバロの世界的な第一人者が、ドイツのアンドレアス・シュタイアーである。彼の演奏はこれまでずいぶん聴いていたが、常に率直で自然で、流れるような美しさをもつ響きに魅せられてきた。新譜はベートーヴェンの作品集。
主として1802年に書かれた作品で、ベートーヴェンが有名な「ハイリゲンシュタットの遺書」を書いた時期の曲である。
そんな時代に書かれた作品はいずれも新たな試みや創意工夫に満ちており、その斬新さをシュタイアーは優雅な低音域ときらめくような高音域で表現。自由闊達で雄弁な響きが際立つ。
一方、2018年の第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール第2位に輝いた川口成彦は、フォルテピアノでショパンを弾くことに大きな意義を見出している奏者。その演奏はまさにショパンその人が弾いているような自然な奏法が特徴で、ルバート(テンポを自由に加減する奏法)が格別。
今回はコンクールでも演奏した楽器、1842年製プレイエル(オランダの修復家エドウィン・ベウンクによる)で録音。音色の美しさと情感の豊かさが印象的で、けっして飽きることはない。
ショパンはプレイエルを愛し、この楽器を用いて名曲を次々に生み出した。とりわけ心に響くのは夜想曲嬰ハ短調(遺作)。胸が熱くなり、いつしか涙が頬を伝う。
文=伊熊よし子(音楽ジャーナリスト)
(ENGINE2020年7・8月合併号)
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