実用性もファッション性も高い、フランス生まれのルノー・カングー。仕事目線で「働くクルマ」としてみたときはいったいどうなのか? レジャーや日常生活で、使いやすさ&楽しさ満点のカングーで、山梨県甲州市にある注目のワイナリーを訪ねてみた。
日本ワイン発祥の地であり、最大の生産地でもある山梨県。名門が幅を利かせる一方で、新進気鋭のワイナリーも名乗りを上げている。甲州市にある98WINEsもそのひとつで、2017年に創業した。
オーナーの平山繁之さんは、その世界では知られた存在である。1981年にこの地の大手ワイナリーに入り、長年醸造責任者を務めた後、2007年からは小さなワイナリーの役員として経営に携わってきた。
しかも1990年からはフランスのブルゴーニュ地方に4年間留学。大学に通いながらぶどう畑で本場の仕事を体験した。このとき使っていたのが、ルノー・カングーのルーツに当たる 4 (キャトル)だった。
キャトルは1961年にデビューした世界初の前輪駆動ハッチバック量産車であり、背が高いボディがもたらす多用途性、ルノー伝統の快適性などが評価され、ファミリーカーから商用車まであらゆる用途に使われ、800万台以上が生産された。「ハサミや針金などの道具を積み、後ろに大勢の収穫人を乗せたバンを引き連れて、畑に通っていました。なので自分にとってのルノーのイメージはまずキャトルになります」
国内外で40年にわたりワインと付き合ってきた結果、平山さんが導き出した答えは、ワインを通して世界中のあらゆるジャンルの新しい友人とジョイントし、ワインの持つ力を創造していく場所を作ることだった。
場所は甲州市。といってもぶどう畑が一面に広がる勝沼ではなく、福生里(ふくおり)という山に囲まれた小さな集落。勝沼から北へ、細い県道にある目的がなければたどりつかない場所だ。
ぶどう棚には、平山さんの40年の経験が随所に投入されている。でもそれは、足し算的なこだわりとは、方向が異なる。「農薬は使いません。いにしえから授かった土地であり、そのまま未来にお返ししたいと考えているからです。棚仕立てを選んだのは、日本の気候や土壌に合っているから。下草を気にする人もいますが、地球を守る役目があるので、きれいにはしません。虫も同様です。生き物が集まるのはきれいな証拠ですから」
今回カングーでこの98WINEsを訪れたのは、本質を極めたミニマルなワイン作りと、それを楽しむ心地よい舞台装置がこのクルマに通じると感じたからなのだが、実は平山さん自身、カングーとの接点はあった。前にいた小さなワイナリーでレストランなどへの配達に使っていたそうだ。
1997年に生まれたカングーもキャトル同様、フランスでは郵便局をはじめとする仕事の現場で使われる例が多い。広いキャビン、スライドドアや観音開きのリアゲート、心地よいシートなど、実用車の基本である機能性と快適性を真摯に磨き上げた作りが、プロの人々にも評価されているのだろう。
カングーにしたのは見た目もあったという平山さんだが、ツールとしての使い心地が中途半端であったら選ばなかったはず。そのあたり、ご自身のワイン作りに対する考え方に通じるものがあったのではないかと、話を伺いながら思った。
『Renault KANGOO ZEN EDC』SPECS
全長×全幅×全高/4280×1830×1810㎜
エンジン/1.197リッター ターボチャージャー付筒内直接噴射
直列4気筒DOHC16バルブ
最高出力/115ps
最大トルク/190Nm
価格(税込)/264万7000円
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文=森口将之 写真=鈴木 勝
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