いま着けたいのは、“物語” のある時計--。その興味深いストーリーを知るほどに魅力は深まるばかり。ここに現代の名品たちを主役にした珠玉の短編集を編んでみた。
休暇で訪れたマレーシアの海岸で拾った巻貝が、ミシェル・パルミジャーニに啓示を与えた。1970年代半ばから時計とオートマタの修復で名を馳せ、「神の手を持つ」と称賛された彼は、自身のブランドのファーストモデルのケースに、この巻貝から着想を得たフォルムを与えた。
黄金比とフィボナッチ数列とに倣う貝の螺旋構造は、傾けると平らに見える。この錯覚を応用し、ケースを実際より薄く見せる形状を考察したのだ。そして巻貝と同じく黄金比に基づく古代ギリシャ建築の円柱に範をとり、ベゼルに段差を付け、凹凸模様のモルタージュ装飾を施した。
かくして1996年に誕生したのが、メゾンのファーストモデル「トリック」である。「時計師になる前は、建築家を志していた」という彼は、以降、数学的に裏付けられた黄金比とフィボナッチ数列とを駆使し、美を織りなしてきた。
2017年に登場した「トリック クロノメーター」にも、彼の美意識が注がれている。モルタージュ装飾のステップベゼルを初作トリックから継承しながら、ラグはフィボナッチ数列に基づき設え直した。そして3日分を示す日付窓の大きさは、黄金比から導き出されている。自然界からそして古代建築から学びとった数学的に正しい美は、まさに普遍だ。
文=髙木教雄
(ENGINE2020年9・10月合併号)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
文=髙木教雄
advertisement
PR | 2025.11.27
CARS
カングー乗りの人間国宝、林曉さん 漆工芸とカングーには、いったいど…
PR | 2025.11.26
CARS
人生初のテールスライドに大興奮!GRとエンジンがコラボした新・運転…
2025.11.22
CARS
26歳で最愛のクルマに出会い、そのまま維持し続けている 新車で手に…
2025.11.27
CARS
これが正真正銘、最後の“おかわり”だ! 現行アルピーヌA110の日…
2025.11.09
LIFESTYLE
この写真の芝生広場は何だと思いますか? これが住宅だと聞いてびっく…
2025.11.23
CARS
「プレリュードに乗っていなかったら、違う人生になっていた」 3代目…
advertisement
2025.11.22
26歳で最愛のクルマに出会い、そのまま維持し続けている 新車で手に入れた2代目マツダ・サバンナRX-7で今も毎日通勤
2025.11.21
もはや神!と藤島知子(自動車評論家)が絶賛!20台のランキング1位に選んだ今乗りたいクルマはこれ
2025.11.19
【もうすぐ納車】買っちゃいました!エンジン編集長の永野正雄が1位に選んだのは自ら購入したこのクルマだ
2025.11.23
「プレリュードに乗っていなかったら、違う人生になっていた」 3代目ホンダ・プレリュードを新車で購入し、30余年後の今も愛用し続ける
2025.11.17
これ1台あれば他に何もいらない!竹花寿実(自動車評論家)が1位に選んだ素晴らしいハンドリングのサルーンとは