ジャーナリスト39人とENGINE編集部員6名、計45人が、雑誌が創刊した2000年からの20年間で「一度は手に入れたい」クルマ20台を選び順位をつけた。選んだ20台についてと、「20年間のクルマをどう見てきて、この1台はどういう基準で選んだのか?」というテーマに答えてもらった。
自分にとっての2000年から2020年は、自動車専門誌編集者→フリーランス→自動車専門誌編集長→フリーランスと、なんだか行ったり来たりの20年間だった。でも自動車のほうは戻ったり振り返ったりすることなく、年を追う毎に新しいフェーズに入り、いまでは来年の予想すらままならなくなった。毎年のように何らかの衝撃を自分に与えてくれたクルマたち。これが今回の選考基準です。
電気自動車ってのはたぶんこんな感じなんだろうという自分の予想を、いい意味で大きく裏切ってくれたのがプラットフォームから専用にしつらえたi3であり、いまだこれを超える“健全な”電気自動車は登場していないと思っている。
日本からこういうクルマが出てくることは多分ないだろうと思っていたら彗星のごとく現れた。スタイリングはもちろん、FRの駆動形式や自然吸気のV8など、思わず前のめりになる魅力に溢れている。これが最初で最後にならないように。
スポーツカーには不利な駆動形式(RR)にもかかわらず、モデルチェンジの度によくなっていく。留まることを知らない進化は果たしていつまで続くのか。「さすがにこれ以上はもう無理でしょう」と、毎回信じて毎回裏切られる。
最新型のマクラーレンだってどれも素晴らしいのだけれど、MP4-12Cに初めて乗った時の衝撃ほどではない。スポーツカーの新境地を開拓した。
志が高いトヨタ車はどういうわけか売れない。プログレしかり、iQもまたしかり。レクサスで売ればよかったのにといまでもそう思う。
小粒でキレがよく痛快で至福でご機嫌な気分になるVWのモデルは、後にも先にもこれ以外にない。やっぱりup! GTIではないんだよな。
いわゆるミニバンがキライな自分でも、「これならいいかも」と思った。国産ミニバンの“運転手”感がない。ドライバーも楽しめる。
200万円以下の日本車の中で、もっともワクワクする1台。MTのシフトノブをせっせと動かしながら、ポテンシャルを存分に引き出せる。
すべての性能面において、先代からのジャンプアップ率がとにかく半端なかった。その上エンジンはBMW製。やっぱりエンジンは大事。
途中、「これがSクラス?」と首を傾げるモデルもあったものの、現行型は正真正銘“ベンツのS”である。新型はこれを超えるか楽しみ。
電子制御デバイスがないとまともに走れないクルマも少なくない昨今、ドライバーのスキルが全権を握る。運転が決まれば極上の快楽へ。
こんなに運転が楽しい商用車は他にない。これを使えるなら配送・運送業者になってもいいと思うくらい、どれだけ乗っても飽きない。
物理的/機械的/構造的欠点も、官能的快楽がすべてどこかへ吹っ飛ばしてくれる。これをスマートに乗りこなせる本物の大人になりたい。
日産の現行車種の中で唯一欲しいクルマ。特にこの数年は、毎年きちんとアップグレードが図られている。スポーツカーは進化と熟成が大切。
このクルマの原稿を書いた時「乗ってから笑え」というタイトルを付けた。我ながら秀逸。
個人的には現行のDBSスーパーレッジェーラがイチオシだがDB11も悪くない。V8のほうが好き。
操縦性やエンジンは切れ味鋭いナイフのようで、でも4WDがいざという時の安全装置となる。
初代の次に開発が大変だったと思われるND。よくぞ皆の期待に応えてくれました。
2シリーズがFF化されてしまったいま、いっそうの存在感と価値が今後評価されるだろう。
新型がミッドシップじゃなかったら、これは選ばなかったかもしれない。最後のFR“ベット”。
文=渡辺慎太郎(自動車ジャーナリスト)
(ENGINE2020年9・10月合併号)
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