コロナ禍で主流となりつつあるリモートワークは住空間とライフスタイルにも大きな影響を及ぼしている。ユニークな家具で自分なりのSOHOを実現してみたい。
20世紀を代表するモダニズム建築の巨匠、ル・コルビュジエ。総合共同住宅のユニテ・ダビタシオン、大規模な都市計画のチャンディーガルを手がけた彼が、唯一自分のために設計したのがカップ・マルタンの休暇小屋だった。コート・ダジュールの海を望むという抜群のロケーションとはいえ、小屋という名の通り、14㎡に満たない極小スペース。それでも彼独自のモデュロールという黄金比で設計された空間がたいそうお気に入りだったらしい。晩年の多くの時間を過ごし、目の前の入り江で遊泳中に亡くなったことで、終の棲家となった。
多くの建築で、しばしば「開放感」が美点として語られる。だが心地よさにはある程度の「閉塞感」が欠かせない。特に日常と地続きになる自宅でのリモートワークでは、集中できる空間づくりは必須といえるだろう。実際、リビングにパーテーションでワークスペースを設けた建売住宅も好調な売れ行きのようだ。だが、既存の住宅で新たにその場所を設けることは難しい。
その突破口として、建築家でビルススタジオ代表の塩田大成さんがユニークな家具「ペデモン」を考案した。ドーム型とデスク型の2種類があり、それぞれ自分で板を組み立てて完成させる。ドーム型は木目を生かした合板のパーツで鳥の巣を思わせるような形状、デスク型はスリットの入った原色のモダンなコンビネーション。「大きめの家具であり、小さな建築と考えました」と塩田さんはそのコンセプトを語る。
まったく異なる意匠とはいえ、ふたつのユニットに共通するのは手に届く範囲に必要なものがそろう機能性、そして開口部で周囲と緩やかにつながる構造。結果として個室が持つ孤立性を避けた、住空間での新たなワークスペースの提案となっている。言わばDIYで実現するユニークなゾーニングだ。
先のル・コルビュジエは「住宅は住むための機械」と定義した。これは過不足なく暮らしに役立つものという意味が込められている。豪奢なインテリア、スペックの追求を無意味とは言わないにせよ、絶対的な価値ではない。そしてそのあり方は時代と共に常に変容していく。
ウィズコロナの時代、建築と家具の存在感はさらに増していくに違いない。
文=酒向充英(KATANA)
(ENGINE2020年11月号)
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