2020年型が日本上陸を果たしたばかりのジュリアとステルヴィオ。最新のアルファロメオに富士スピードウェイで乗れると聞いて、喜び勇んで駆けつけた。4台のアルファにイッキ乗り!
ミドル・サイズの4ドア・セダンのジュリアと、その姉妹車であるSUVのステルヴィオ。フツウに考えたら、富士スピードウェイのような本格サーキットを走るのに相応しいクルマとは思えない。ところが、そこはイタリアの熱い走りの血統を持つアルファロメオのことである。いざ走り出してみれば、なんの違和感もなくサーキットの風景になじんでしまうのだから、つくづくブランドが長年かけて築き上げてきた伝統の力というのは侮れないものだと思う。
実際のところ、1台目のステルヴィオ2・2 Q 4 スプリントでコース・インする時には、こんなターボ・ディーゼルを搭載した背の高いSUVで富士の本コースなんか走って大丈夫かよ、といささか疑いを持ちながらステアリングを握っていたのだ。ところが、1、2コーナーを回って直線を駆け抜け、Aコーナーから100Rに入っていくあたりでは、「おお、このクルマなかなか良く走るじゃないの!」と思わず口元をほころばせながら、その一方で兜の緒を締め直す気持ちでステアリングを握り直していたのだから、もうアルファの走りの血に降参である。
決して速いわけではないし、ロールもそれなりに大きい。市販車の中にはこれよりもずっと速くて脚を固めたクルマが、他にたくさんあるだろう。でも、このステルヴィオには、他の多くのクルマでは感じられないワクワクするような楽しさがある。それはたとえば、スロットルやステアリングの操作に対するクルマの反応が実にリニアで、ドライバーの意思に忠実に動いてくれるといった点からもたらされるものなのだろう。
次に乗ったジュリアの2・0ターボ・スプリントも、ガソリン・エンジンの背の低いセダンとは言え、特別にステルヴィオより速くも、ロールが小さいわけでもなかった。でも、やっぱり楽しい。運転しながら、4年前にイタリアで開かれた国際試乗会で初めてジュリアに乗った時のことを思い出した。アルファロメオが久々に出したFRモデルということで大きな期待を抱いて乗ったのだが、走り始めてすぐに期待以上の基本的な走りの素性の良さに感激。これは「クルマ好きが好きになるクルマ」だなと思った。特別な先進技術が盛り込まれているわけではなく、むしろその逆に昔ながらの素朴な味の良さを大切に残したようなクルマで、電子制御より、あくまでプラットフォームの作り込みによってその乗り味を実現していることが良く分かった。今回乗った2020年モデルも基本はまったく変わっていない。素朴さ丸出しだった乗り味に、どうやら洗練が加わってきたかな、というような違いである。
その後、ジュリアの最強モデルのクアドリフォリオにも乗った。段違いに速く、ロールも小さくて、サーキットを走るのには一番適しているのは間違いない。いつまでも乗って、いろいろな走り方を試したいと思ったが、試乗は3周のみの約束だ。最後にステルヴィオの、今度はガソリンの2・0ターボQ4スポーツ・パッケージに乗り換えた。それで良く分かったのは、速くても遅くても、やっぱりアルファは楽しいということ。そんなアルファが私は好きだ。
文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬
(ENGINE2020年12月号)
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