2019年のデビューと同時に、最も個性的な時計のひとつと目されるようになった「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」。2シーズン目を迎えた今年、ベーシックな3針オートマティックと、自動巻きクロノグラフに新たな5カラーが追加。CODE 11.59の色香はますます加速する。
2019年に発表された「CODE 11.59バイ オーデマ ピゲ」(以下CODE 11.59)。従来のオーデマ ピゲとは一線を画する若々しいスタイリングはすぐに時計愛好家たちの感性に馴染み、デビューから1年で同社を代表するアイコンへと成長した。これほど早く受け入れられた背景としては、デザインの成り立ちが大きな意味を持ってくる。創業当初から型破りなクリエーションを貫いてきた多様なアーカイブを有機的に結合させ、まったく新しいデザインを構築したのである。
例えばオクタゴナル形状のミドルケースを挟み込んだ、ラウンドシェイプのデザインは、ベゼル幅を極限まで細く絞り込むことで、ダイアル開口部を大きく取っている。オクタゴナルのミドルケースは、1972年のロイヤル オークが想起されるが、ルーツは古く1917年のドレスウォッチに遡る。細く絞ったベゼルは、1940年代のクロノグラフやミニッツリピーターに繋がりが求められる。
暗号のように隠されたディテールが、オーデマ ピゲらしさを醸し出しているのだ。一方、ベゼルと一体化された、側面スケルトナイズのラグや、内外の曲率を変えたカーブドサファイアクリスタル風防など、新しい手法も盛り込まれている。
これら時代を隔てた新旧ディテールの融合が、CODE 11.59のキモ。ケースとラグのバランスも素晴らしく、ストラップの取り付け位置をバック側に寄せてあるため、装着時のバランスも心地よい。ゴールドのどっしりとした重量感が、腕に巻いた瞬間にスッと消えるような感覚だ。
CODE 11.59の企画は意外にも、時計のエンジンであるムーブメント開発から始まっている。2012年12月頃から始まったという次世代基幹ムーブメントの開発。それは3針自動巻きのキャリバー4302と、一体型クロノグラフのキャリバー4401へと結実したが、その基礎開発には約7年もの時間を要している。
両機は基本輪列を共有することを念頭に同時開発されたバイプロダクト機であり、耐久性を高めるセラミックリバーサーの採用や約70時間のロングパワーリザーブを実現させるなど、現代的な標準スペックを備えた高級ベーシックとしての魅力を兼ね備える。デザインだけでなく、メカ好きの琴線にも触れるのだ。
セカンドシーズンを迎えたCODE 11.59は、その魅力を大きく広げるバリエーション展開が話題となっている。多層的なケース構造を活かしたバイカラーマテリアル(コンビケース)に加え、5色のニューカラーダイアルを投入したのだ。下地に施した細やかなサンバースト模様を、半透明のグラデーションラッカーを通してのぞかせる手法は、1枚のダイアルの中にさまざまな表情を生み出してくれる。
例えばドライビングウォッチとして身に着ける際、ケースサイドから覗くバイカラーのミドルケースや、光の効果で透け感が変わったダイアルが気分を盛り上げてくれるのだ。そして、なによりも同じ色でシーンやスタイリングに合わせて3針とクロノグラフを着け替えたり、異なる色の2本持ちも楽しい。自分はどの色を選ぶべきかという問題は、非常に贅沢な悩みだ。
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文=鈴木裕之 写真=近藤正一 スタイリング=仲唐英俊
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