2021.01.24

CARS

マクラーレン720S&GTは、スーパースポーツカーの最先端!

スーパースポーツカーと言ったらマクラーレンを抜きにしては語れない。“スーパースポーツ”の720Sと“新カテゴリー”のGTにモータージャーナリストの山崎元裕、大谷達也両氏と編集部員で乗ってみた。


大谷 ええ、私はマクラーレン警察から派遣された捜査官である(笑)。


新井 いったい何事ですか(笑)。


大谷 今日はマクラーレンの代表作である720SとGTに試乗して、その本質がどこにあるかについて、マクラーレンを愛して止まない本官が取り調べを行なうことになった。


塩澤 大谷さん、ホントにマクラーレンが好きだからなぁ。それはやっぱり昔レースというレースを取材しまくっていた経験があるからなんでしょうか。


大谷 ま、確かにそれもあるかもしれないが、それはともかく、まずは山崎容疑者、2台に乗った感想を述べてみよ!


山崎 その尋問口調、なんか恐いなぁ。ええと、今日、乗って改めて感じたのは、GTがマクラーレンのベスト・モデルということです。なにしろスタイリングがきれい。しかも快適で、長距離を高速で移動するには最高の乗り心地とドライバビリティだと思った。


 

大谷 フムフム、なかなかよく理解できている。では、次、塩澤容疑者、感想を述べよ。


塩澤 え!?容疑者扱いなの? マクラーレン愛に溢れる大谷捜査官にこんなことを言うのはナンですが、今日一緒に取材したランボルギーニはドライバーを楽しませる要素がたくさん詰まっているけど、マクラーレンはとてもストイックに速さと快適性を追求していると思った。


大谷 それは、マクラーレンが楽しくないということか(怒)。



塩澤
 そうじゃなくて、上手く言えないけど楽しさの質が違う。例えば快適性については、スーパースポーツカー・ブランドのなかでいち早くその点に着目し、業界に一石を投じてそれをさらに極めようとしている。また今日改めて720Sに乗って、カタログなんかによく書かれている「速さと乗り心地を高次元でバランス」って、こういうことなんだと改めて痛感しましたね。


大谷 ん、もう少し詳しく説明してくれたまえ。


塩澤 厳しい取り調べだ(汗)。720Sの足回りって、本当は硬いはずなのに、乗っていて硬さを感じさせず、むしろ乗り心地がいいと思わせる。クルマ全体の統一感が取れているからだと思う。大きな段差を乗り越えたときのショックで、初めて「あ、硬かったんだ!」って驚く。そんなサスペンション。


大谷 なるほど。では最後に新井容疑者、述べてみたまえ。



新井 私が最初にしっかりと乗ったマクラーレンは650Sだったけど、とにかくクルマとの強烈な一体感に驚いた。バケットシートに身体がしっかり守られているという感覚もそうだし、ブレーキペダルを踏むと、まるで足とタイヤがつながっているんじゃないかと思うようなタッチも凄かった。その後、570Sが出たときは、そこに乗りやすさが加わっていてこれも凄いと思ったけど、720Sは正直、足回りがちょっと硬すぎて、やや過剰な感じ。個人的には650Sのほうが好みです。


大谷 それもまた率直な感想でよろしい。GTはどうだった?


新井 やっぱり山崎さんも言っていたとおり乗り心地もいいし、荷物も積めて実用性も申し分ない。しかも運転しているときの一体感は損なわれてなくて、私がマクラーレンに期待するものがすべて備わっていた。


塩澤 僕もそう。それはもう素晴らしい乗り心地。それでいてソリッドでスポーティな味わいもしっかりある。個人的には、高速道路をノーマル・モードで走っているとちょっと直進性が不足しているように感じたけど、これもスポーツに切り替えるとシャキッとして問題ナシ。


レース・ヒストリー

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大谷 取り調べ口調(笑)はこの辺までにするとして、みんながここまでGTを高く評価するとは驚きだった。あと、マクラーレン好きとしては、普段どんなイメージをマクラーレンに持っているかも気になるけどね。


山崎 スポーツカー・メーカーになにが必要かといえばヒストリー、それもモータースポーツでのヒストリーですよ。その点、マクラーレンはF1で数々の栄冠を勝ち取っているので文句なし。F1でカーボン・モノコックを最初に採用したという伝統をロードカーにも応用している点もレース好きにはグッとくる。



大谷 でも不満もあるんでしょ?


山崎 まあ、ないことはない。近年、マクラーレンは多様なモデルを少量ずつ生産する方針をとっているけど、あまりにモデル数が多くて、一般のファンは少し混乱していると思う。今回のGTにしても、スピードテールをGTシリーズの頂点において、その下にGTを位置づけるとよりモデル・ラインナップの構成がわかりやすくなったと思うけどね。


大谷 モデル数が多すぎるというのはよく耳にする話だけど、ブランドの本筋が見えにくくなっているとすれば由々しき問題だよね。



新井 私見だけど、ニューモデルを開発するきっかけがライバルメーカーへの対抗心にあるようにみえる。


大谷 その意見は初耳ですね。


新井 たとえばP1。フェラーリがプラグイン・ハイブリッドのラ・フェラーリを開発中との噂を聞きつけたマクラーレンが「作るぞー、オーッ!」って感じで作ったのがP1で、2台とも同じ2013年のジュネーブショーで発表されている。スピードテールにしても、たとえばブガッティ・シロンとか、かつてマクラーレン自身がリリースしたF1の影響がちらついているような気がする。P1もスピードテールも、短期間に完成度の高い製品を作り上げてしまう点は、いかにもコロコロとルールが変わるF1を戦い抜いてきたコンストラクターらしいと思うけど、そこにお客さんの意向が反映されているのかといえば、少し心配になる。



技術者集団

大谷 長く取材をしてきてつくづく思うのは、やっぱりマクラーレンは技術者の集団だということですよ。エンジニアが「技術による正解」という高い理想を掲げて製品づくりに取り組んでいるのは間違いない。そこに技術的な裏付けのない演出が入り込む余地はほとんどないんですよ。このエンジニアリングに対する純粋性こそ、マクラーレン・ブランドの本質だと確信している。


山崎 マクラーレンの製品には、メカニズムにしてもデザインにしても機能がないものはないからね。どんなに小さなものでも必ず役割があり、機能が備わっている。そこがいい。


大谷 まさにそのとおりなんだけど、「エンジニアリングの純粋性」という思想は、たとえばフェラーリの「F1を出発点にしたスーパースポーツカー」やランボルギーニの「自然吸気マルチシリンダー・エンジン」といったコンセプトに比べて、いささかわかりにくいのも事実。


山崎 F1を出発点としているところはフェラーリと同じだけど、マクラーレンの場合は「エンジニアリングの正義」というもう一段深い思想的な部分がブランドのコアバリューになっているからね。でも、あの純粋性こそがまさにレーシング・コンストラクターならではのものだと思うな。


新井 そう。しかもそれを求めている人たちが確実にいますからね。その辺は、マクラーレン警察の大谷捜査官がしっかり周知徹底をしてくれないと。


大谷 それは申し訳ない……じゃなくて、マクラーレン・ファンとしてしっかり伝えていきたいと思います。


塩澤 よろしくお願いしまーす。


大谷 これにて一件落着! !


新井 よ、大谷越前守~!


 


話す人=山崎元裕+大谷達也(まとめ)+塩澤則浩(ENGINE編集部)+新井一樹(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦


■マクラーレンGT
駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4683×2045×1213mm
ホイールベース 2675mmr
トレッド(前/後) 1671/1663mm
車両重量(前軸荷重:後軸荷重) 1530kg(640kg:890kg)
エンジン形式 水冷V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量 3994cc
最高出力 620ps/7500rpm
最大トルク 630Nm/5500-6500rpm
変速機 7段デュアルクラッチ式自動MT
サスペンション(前後) マクファーソンストラット/コイル
ブレーキ(前後)  通気冷却式スチール・ディスク
タイヤ(前) 225/35ZR20
タイヤ(後) 295/30ZR21
車両本体価格 2645万円



■マクラーレン720Sクーペ
駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4543×2059×1196mm
ホイールベース 2670mm
トレッド(前/後) 1674/1629mm
車両重量(前軸荷重:後軸荷重) 1430kg(590kg:840kg)
エンジン形式 水冷V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量 3994cc
最高出力 720ps/7250rpm
最大トルク 770Nm/5500rpm
変速機 7段デュアルクラッチ式自動MT
サスペンション(前後) マクファーソンストラット/コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式カーボンセラミック・ディスク
タイヤ(前) 245/35ZR19
タイヤ(後) 305/30ZR20
車両本体価格 3530万円


(ENGINE2020年12月号)

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話す人=山崎元裕+大谷達也(まとめ)+塩澤則浩(ENGINE編集部)+新井一樹(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦

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