4年ぶりにフェイスリフトを受けたアウディの主力モデル。今回の改変の目玉は、新しくなったクワトロ・システムとマイルドハイブリッドの導入だ。その走りはどうか?
フルモデルチェンジ並のデザイン変更を施した、と謳う新型A4だが、正直なところ、パッと見の印象はそんなに旧型と違わない。けれど、よく見れば横に拡がり平べったくなったグリルをはじめ、全幅を5mm拡大して設えられた前後のブリスターフェンダーや、より伸びやかな印象になったドア・パネル、デジタル時代に相応しいデザインを持った前後のライトなど、ディテールは大幅にアップデイトされているのがわかる。レボリューション(革命)よりエボリューション(発展)を好み、アンダーステイトメントであることを旨とする、いかにもアウディらしいモデルチェンジと言えるのではないか。
今回の改変の走り方面での目玉も、実は見えない部分にある。すなわち、ひとつはクワトロ・システムをこれまでのセルフロッキング・センターディファレンシャルを使ったものから、すでにA6やA7に導入されている、基本は前輪駆動で必要な時のみ後輪も駆動するクワトロ・ウルトラ・ドライブ(日本ではこの名称は使われていないが、欧州ではウルトラの名称が強調されている)に変更したこと。そしてもうひとつが、同じくA6やA7にも導入されているベルト駆動式のオルタネーターを備えたマイルドハイブリッド・システム(A6やA7のV6は48Vだが直4のA4は12V)を採用したことだ。
これまで通り入門モデルは前輪駆動で、150馬力の2L直4ターボを積む35TFSIで455万円から。一方、クワトロ・モデルは249馬力の2L直4ターボを搭載する45TFSIでアドバンストの580万円からとなる。今回の試乗会では、新型A4の真価を試すのに絶好の45TFSIクワトロSライン(627万円)に乗ることができた。
Sラインだけあって、アンダーステイトメントなアウディとはいえ、かなり派手な印象だ。バンパー左右の大型エア・イントレットのみならず、ボンネット先端にもかつてのアウディ・クワトロを彷彿とさせるスリットを備えている。
ドアを開けてスポーティな形状のシートに乗り込むと、目の前には水平基調のインパネが拡がる。フルデジタルのメーターをはじめ、基本は旧型と同じだが、インフォテイメント・システムが一新され、ダイヤル式から、大型化されたタッチスクリーンを使ったものに変更されている。
走り出して、まず感じさせられたのは、“軽やかさ”だ。ステアリングの操舵感も軽ければ、走り出しのクルマの動きも軽い。アウディはこのところ、モデルチェンジを重ねるごとに、かつての重厚さを払拭するかのように、軽さを強調した乗り味へと舵を切ってきたが、この新型では、その度合いがさらに一気に進んだ感じがする。まるで前輪駆動モデルに乗っているような軽やかさだ、と思って、ハッと気づいたのは、考えてみれば、新しいクワトロ・システムは基本的に前後40対60で駆動配分した従来のものと違い、クラッチでプロペラシャフト以降を切り離して通常時は完全に前輪駆動で走行しているということだった。しかし、常に先の状況を予測して、必要とあらば前輪の空転が起こる0・5秒前には4WDに切り換えているという。実際、運転していると引っ張られている感じと押されている感じが状況によって切り替わるのだが、まったく違和感を覚えることはない。直線を巡航している時は前輪駆動になっていると思うし、峠道のコーナーでは明らかに4WDになっていると思うが、前後のトルク配分を示すインジケーターはなく、まったくドライバーの知らないうちにクルマがすべてを見事に差配していることになる。
そしてもうひとつ、新型で大幅に度合いが進んだのはスムーズさだ。走り出しはもちろん、アクセレレーターを踏み込んだ時にも、まるでターボ・エンジンとは思えないスムーズな加速を見せる。マイルドハイブリッドのオルタネーターがうまくラグを埋めているのかどうか知らないが、このスムーズさは驚きだった。
新型A4は“軽やかさ”と“スムーズさ”において突き抜けた存在になった。これ見よがしな派手さはないが、長く乗れば乗るほどその真価がジワジワと迫ってくるような“大人のクルマ”だと思った。
文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=望月浩彦
アウディA4 45TFSIクワトロS ライン
駆動方式 エンジン・フロント縦置き4WD
全長×全幅×全高 4770×1845×1410mm
ホイールベース 2825mm
トレッド(前/後) 1560/1545mm
車両重量 1610kg(前軸910kg:後軸700kg)
エンジン形式 直噴直列4気筒DOHCターボ
総排気量 1984cc
最高出力 249ps/5000-6000rpm
最大トルク 370Nm/1600-4500rpm
トランスミッション デュアルクラッチ式7段自動MT
サスペンション(前) マルチリンク/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前後) 245/40R18( 試乗車は245/35R19)
車両本体価格(税込み) 627万円
(ENGINE2021年1月号)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
advertisement
2024.12.18
LIFESTYLE
Maserati GranCabrio × PRADA スタイリス…
PR | 2024.12.19
WATCHES
365日の相棒! シンプルなデザインに最新技術を詰め込んだ、ザ・シ…
PR | 2024.12.18
CARS
【プレゼント】公道を走れるレーシング・マシンからラグジュアリー・オ…
PR | 2024.12.13
WATCHES
機能美にあふれ身に着ける人を鼓舞する時計、IWC
PR | 2024.12.12
CARS
「我が家はみんなイギリス好き」初代から3台を乗り継ぐ大谷さんの家族…
PR | 2024.12.12
CARS
SUVに求められる要素をしっかり満たしている 新しくなったルノー・…
advertisement
2024.12.20
【リセール無視、胸が高鳴る400万円台新車】第1位は武田公実が「内燃機関の在庫車が入手できるのは最後のプレゼント」と欲しくてたまらないあのクルマ!
2024.12.18
【もうええでしょう、即注文! 600~800万円台新車】第1位は編集部シオザワが「還暦を過ぎて乗ったらカッコいいジジイになれます」と大プッシュするあのクルマ!
2024.12.15
2024年版【 来い! 俺の宝船! 1000万円台】第1位は齊藤 聡が「消えゆくのを待つばかりのNA水平対向6の鼓動を楽しめる」と喜びを噛みしめたあのクルマ!
2024.12.17
【俺の年収の壁も撤廃希望! 800~1000万円新車】第1位は日下部保雄が「その昔に憧れ、今その志を受け継いだミドシップに乗れるのは幸せだ」と尊むあのクルマ!
2024.12.17
新型メルセデス・ベンツEクラスにAMGモデルのE53が登場 3.0リッター直6ベースのPHEV