BMWの4ドア・セダンをベースにしたM社謹製モデルの最高峰に立つM5。“コンペティション”は卓越したM5の走行性能にさらなる磨きを掛けたモデルだ。そんな600psオーバーという強心臓を持つスーパー・セダンを箱根で試した。
5シリーズのマイナーチェンジに合わせて新しくなったM5は、ベース・モデル同様にあくまで小改良にとどまる。内外装は一見しただけでは気づきにくい程度の変更にとどまる。メカニズムもしかり。エンジンや駆動系の基本形式はもちろん、出力やトルクなどの性能数値も変わっていない。走り方面で変更がアナウンスされている点は唯一、電子制御可変ダンパーのセッティングだけだ。
……といった昔ながらのハードウェアより、今回はインフォテイメントと先進運転支援システムがアップデートされたことが、ベース車同様の最大トピックである。とくにBMWとしては遅ればせながらのハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能が搭載されたのも、M5としては初だ。



そんな新しいM5でも、より硬派なM5コンペティションが今回の試乗車である。標準M5比85万円高の価格で、エンジン出力が+25psの625psとなるほか、バネが10%硬く、車高が7mmロー・ダウンされる。そして、ボール・ジョイント化されたリア・トーリンクや、専用の強化エンジン・マウント、1本あたり3kg軽量という20インチの専用鍛造ホイールなどが専用品として装備される。



試乗車にはさらに最高速度を305km/h(本来は250km/hでリミッター作動)まで引き上げるMドライバーズ・パッケージというオプション(33.5万円)も追加されていた。それにしても、ベースがいかに高級セダンといっても最高速305km/hのモンスター・カーが、いっぽうで渋滞で手放し運転できるとは、すごい時代になったものだ。
私個人はM5コンペティション初体験だったが、経験者によると今回のマイナーチェンジで乗り心地は明確に改善されているという。可変ダンパーにはコンフォート、スポーツ、スポーツ・プラスという3つのモードがあるが、もっとも柔らかいコンフォートなら市街地でも適度に上下して凹凸を吸収するし、もっとも硬いスポーツ・プラスにしても、その乗り心地がけっして暴力的にならず、市街地でも許容範囲におさまるのは素直に大したものである。

そのいっぽうで、アタリはそれなりに柔らかいながらも、その奥底に骨太で硬質な突きあげが残る独特の緊張感は、クルマのハードウェア構成はほぼ同じはずの「M550i xDrive」では味わえない類の感覚である。このM5ならではの緊張感は、ペダルに触れた瞬間から首根っこをつかまれたかのように利く(しかし、けっしてカックンではない)ブレーキによるところも大きそうだ。やはり、M5は……とくにコンペティションは別格なのだ。

可変ダンパー以外でも、エンジン、変速スピード、パワー・ステアリング、4WD、ESC(横滑り防止装置)など、それぞれの項目で2~4種ほどモードが用意されていて、それらをすべて好みで組み合わせられるのがM5の売りだ。そのなかにはなんと「2WD」モードまで用意されるのも以前と同様だが、これは公道での命綱であるESCの完全カットが条件となる恐怖モードなので、公道で試そうなどとは思わないほうがいい。
その2WD以外のモードすべてを最硬派仕様にセットしても、ヤケドしそうなほどじゃじゃ馬ではないのが今のMのすごさだ。スポーツ・モードにした4WDはわずかにテールを振り出すような姿勢まで許容するが、地にアシが着いたコントロール性は失わないし、パワステはあくまで軽い。荒れた低ミュー路ではサスペンションもそれなりにズシズシ響くが、跳ねたり暴れたりはまったくしない。
ただひとつ「乗り手を選ぶ」と思わせるのが、エンジンのモードである。反応がもっともシャープなスポーツ・プラス・モードにすると、荒っぽいアクセル操作では全開と全閉の2段切り替えかと錯覚しそうになる。実際にはそんなことがあるはずもないが、Mエンジンのあまりの鋭さに、ただの好事家アマチュア・ドライバーはお手上げに近い。それより一段階マイルドなスポーツ・モードなら、私でも4.4リッターV8ツインターボの機微やエンジン回転の変化によるドラマがかろうじて味わえるようになるが、それでも油断すると目が回るほど速い。やっぱりMパフォーマンスではない本物のMは別格だ。
文=佐野弘宗 写真=郡 大二郎
■BMW M5コンペティション
駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4990×1905×1475mm
ホイールベース 2980mm
トレッド 前/後 1620/1595mm
車両重量(前後重量配分) 1940kg(前1060kg:後880kg)
エンジン形式 V型8気筒DOHC32V直噴ツインターボ
総排気量 4394cc
ボア×ストローク 84.0×89.6mm
エンジン最高出力 625ps/6000rpm
エンジン最大トルク 750Nm/1800-5860rpm
変速機 8段AT
サスペンション形式 前/後 ダブルウィッシュボーン式/マルチリンク式
ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 275/35ZR20 102Y/285/35ZR20 104Y
車両価格(税込) 1877万円
(ENGINE2021年2・3月合併号)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
advertisement
2026.01.18
LIFESTYLE
RENAULT CAPTUR × PRADA スタイリスト・祐真朋…
2026.01.17
CARS
趣味はマニュアル車の『Oggi』専属モデル・古畑星夏 M3に加えて…
2026.01.10
CARS
「スポーツカーは人生そのもの」藤島知子とポルシェ718ケイマンGT…
2025.12.24
CARS
フェラーリオーナーへの“最初の一歩”は、「フェラーリ・アプルーブド…
2026.01.22
CARS
7億円のパガーニ「ウアイラR Evoロードスター」に乗った! オー…
2026.01.10
CARS
式年遷宮の御開帳は必見だ!「GR GT」と「GR GT3」はメカニ…
advertisement
2026.01.18
スズキ・クロスビーはノーマークだった 国沢光宏(自動車評論家)が、小さくておしゃれな国産車3台に試乗 レクサスLBXはおしゃれな武闘派
2026.01.21
寒波で大雪になるかも!冬用タイヤの代わりにオールシーズンタイヤを装着している場合でも大丈夫なのか解説
2026.01.14
フェアレディZ(S30)の全身アルミ化が完成!!【東京オートサロン2026】スターロードと矢作産業渾身の一台
2026.01.14
今すぐ買わせてくれ! 5速MT+ターボのダイハツ「ミライース tuned by D-SPORT Racing」発売はいつ?【東京オートサロン2026】
2026.01.17
このオラオラ顔は意外とアリ…⁉︎ 高級ミニバン風の顔を纏ったダイハツ・タント「クロメキ」がカッコいい【東京オートサロン2026】